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第28話 実

 あの『巨大スケルトン』、ミミ言う所の『大スケ』戦から6日後、俺達は王都へと帰ってきた。その間廻った町や村には、安楽は居なかった。

 転生者自体は12名見つかっており、ついに俺達の担任と副担任も見つかった。そして、その二人が結婚していたというサプライズ(?)まであった。まあ、正直、それはど~でも良い。

 この二人の担任は、二年になってからの担任なので、実質1ヶ月ちょっとしか係わっていないため、そこまでの思い入れも無かったりする。

 王都へ帰ってきた俺達は、まず自分たちの家へと向かう。東西大路から脇道へと入り、その家が見えてくると、帰ってきた、と言う実感が湧く。もう、完全に我が家として心が認識しているようだ。

 そして家の前には、家政婦三人娘の一人、クルムがいて玄関周りの掃除をしていた。どうやら、彼女たちも問題なかったようだ。初めての長期留守番だったため、いろいろと心配していた。

 前世同様、この世界にもいろいろな人間がいる。未成年者二人が留守番をする家へと、押し入るような者もいるかもしれない。一応、出かける前に、周囲の隣家の者に、それとなく見てもらえるようには話は付けている。伊達に日頃から、取ってきた肉類のお裾分けをしていた訳では無い。それ位の頼み事は可能だ。

 ただ、日中はともかく、夜間とも成れば、隣家の者の目も届きにくく、一応戸締まりを厳に言い聞かせておいたとは言え、心配だった。だから、彼女の元気そうな姿を見て、一安心出来た。

「帰ったよ」

 ティアがクルムに声を掛けると、俺達に気付いた彼女は大きな声で「お帰りなさい!」と答えてくれた。

「「「「ただいま!」」」」

 今日の留守番のもう一人は、サティーだったようで、俺達の声に気付いて玄関から飛びでしてきた。彼女の手には、お玉が握られたままだ。どうやら、料理中だったらしい。あっ、お玉に灰汁がこびりついてる。煮物か。

「皆、問題なかった?」

「「うん!!」」

「お金、熊々亭のおばちゃんから毎日もらえた?」

「うん、もらったよ」

 ティアが言ったお金とは、家政婦娘達の賃金の事だ。通常は毎日俺達が払うのだが、留守にする場合は当然そう言う訳にはいかない。留守の分の賃金を前もって払っても良いのだが、留守の期間が未定という事もあり問題があった。そして、孤児院の職員に預けると言うのは絶対に出来ない。なぜなら、預けたお金が院の食事代に化ける可能性が高いからだ。

 と言う訳で、もっとも信頼でき、院へと帰る道すがら寄れる『熊々亭』のおばちゃんへと預け、彼女たちに支払って貰う形を取る事になった。

 ティアとしては、毎日その労働の対価を貰う方が良いと考えている。実際、その方がモチベーションも維持されるだろう。

 俺達は、それぞれが彼女たちを慰労した上で、お金を渡して今晩の食事の準備を頼んだ。既に午後3時を過ぎている関係から、こった物では無く簡単な物で良いから、と言っておいた。

 ちなみに、彼女たちが留守番する間の費用(食費など)も、別途『熊々亭』のおばちゃんに預けており、そちらで貰うようにしてあった。おばちゃん様々だ。後で、帰りがけ狩った『ワイルドボア』を一匹持っていって、礼を言わねば。

 一旦自宅を出た俺達は、西ギルドへと向かう。時間帯が早いため、他の冒険者達はまだ帰ってきていない。

「ロミナスさん! ただいま~!」

 ティアの声に合わせて、俺達三人も「ただいま!」と言う。一般受付窓口で書類仕事をしていたロミナスさんは、少し驚いたようだが、直ぐに「お帰り」と返してくれる。

 普通ならその場で、今回の旅の報告という名の世間話を始めるところだが、今日はそういう訳にはいかない。

「ロミナスさん、別室、別室」

 ミミがそう言うと、ロミナスさんの眉間にしわが寄る。

「あんた達、また、何か…」

「ちゃうちゃう! …あ、一応、ソレもあっか。でも、本題はちゃうんよ!!」

 なんとも微妙なミミの返答に、ロミナスさんは溜息を吐く。

「分かったさね。入りなね」

 以前と同様に、カウンターの一部を跳ね上げ、通路を作り俺達を(いざな)う。そして、着いた所も以前と同じ応接室。

「で、どうしたんだい?」

 席へ着くと同時ぐらいにそう言ってきたロミナスさんに、スケルトン発生と討伐、そして『大スケ』の事を話した。

 まず、新たな『スケルトン』が発生したと言う報告に驚き、それを討伐完了したと聞いて更に驚く。そして、『大スケ』の話には終始硬い顔だった。

 この間ロミナスさんは、一度として俺達の話を疑うような事は言わなかったし、それらしいそぶりも無かった。それ位には、俺達は信頼されているという事だ。

「巨大な上に、他のスケルトンを取り込んで修復するのかい……」

「そそ。ほとんどの小スケを消した後だったから良かったんだけんど、普通に万単位の小スケが居る時だったら、メッサ危なかった! ま、広い場所があれば、話は別だけんどね~」

 そんなミミのお気楽な発言に苦笑するロミナスさんだが、その表情は硬いままだ。

「んで、こりが大スケの魔石。1ポイントじゃ無くって、27ポイントっちゅうイレギュラー品」

「確かに27ポイントさね…… 何から何まで変則的って事さね。この27がレベルだとすれば、他のアンデッド同様にレベル程の強さは無いようだね。その分、修復って言う、やっかいなものがあるけどね」

「確かに、修復の件を除けば、それ程までに強いとは言えません。攻撃魔法や攻撃スキルも使ってきませんでした。ティアのはんにゃしんぎょうで動きが鈍くなる前でも、レベル程の素早さは無いかと思えます」

 そんなシェーラの見解に、俺もそのまま同調しておく。ティアは、今ひとつピントは来ていないようだが、反対は無いようだ。

「だ~ね~。レベル20オーバーで攻撃とかのスキルが全く無しっつ~たら、めったにおらんのやない?」

 ミミも同意のようだ。

「その巨大スケルトンもだけど、不浄の泉自体の出現頻度が問題さね。前回の場合でも、早いって意見が多かったんだよ。だけど、誤差の範囲とも言えたのさ。だけど、今回の事を考えれば、やはり異常と考えるべきさね」

「原因の予測はありますか?」

 一応聞いてはみたのだが、やはり予想どおりの回答が来る。

「今までに無い事態だからね。全く不明さね」

「えっと、今回もたまたま早かったって事はありませんか?」

 ティアの声には、そうであって欲しい、と言う思いが入っているようだ。

「さすがに、早すぎるさね。……一応、隣国の状況も確認するべきだね」

 そう言って、ロミナスさんは考え込んでしまった。隣国からの情報入手方法や、こちらからの情報の発信方法等を考えているのだろう。

「やっぱ、魔王復活か!」

「復活も何も、魔王って居ないって言ってたよ!」

「ほんなら、竜王とか!」

「ミミちゃん! フラグ会話禁止!!」

 魔王はともかく、竜王は存在していてもおかしくは無い。ドラゴン自体は存在しているし、一定レベル以上のドラゴンは知能も高いと言われているので、王を称するドラゴンが現れたとしても不思議では無い。ただ……。

「ミミ、その竜王と『不浄の泉』に何の関係があるのだ?」

「うみゅ! えっと、……無いや~ね~」

 と、言う事だ。

 ゲームでも、魔王だの竜王だのという存在は、『何でそんな事をするんだ? そんな事して、利は無いだろ?』と言いたくなるケースが多かった。悪役、敵役として無理矢理設定された感バリバリの者が多かった気がする。

 現実となれば、ゲームのような悪役が存在できる価値は少ないだろう。少なくとも、そんな悪役に付く下っ端がいるはずは無い。地球が滅びるのに、嬉々としてそれを助ける悪役下っ端の存在って……あり得ないと何度思った事か。

 多分、竜王は無いと思う。あるとすれば『神』だ。

「例の神的存在が係わってるんじゃ無いか?」

 俺の言う『神的存在』とは、この世界で言うところの神そのものだ。『託宣』の発信元だな。

 俺もだが、ミミもこの世界の成り立ちに、前世のRPGやラノベが影響していると考えている。あまりにも(ことわり)がゲーム的すぎるからだ。

 ステータス、スキル、レベル、そして何より俺のスキルである『スティール』。余りにもゲーム的すぎる。モンスターが表面上持っていない物が盗めてしまう。しかも、4段階の品質で、だ。これを、ゲーム的と言わずに何というのか。

 この辺りは、シェーラにもミミが説明したのだが、理解してはくれなかった。シェーラがRPGゲームを知らない事もだが、それ以上に、これが、この世界の(システム)としてて当たり前となっているからだ。彼女達にとっては、これが当たり前の事なのだ。

「神による試練的なものだと?」

 だからシェーラは、そう聞いてくる。

「うんみゅ~? 例の神さんが係わっているとすると、イベントの可能性?」

「ミミちゃん、ゲームじゃないんだから、イベントは無いよ。イベントは」

 ティアはそう言って否定するが、『神による試練』などと言うものも、システム的に言えば間違いなく『イベント』である訳で、そう言った意味では間違いでは無い。

 だが、それをロミナスさんは否定する。

「特段の託宣が下ってないのさね。託宣が下れば、その日のうちに公示される決まりだからね。それが無いって事は、託宣は下ってないって事さね」

 そうか、『託宣』か、一方通行とは言え、この世界には神的存在とのチャンネルが存在していたんだった。そのチャンネルに、何も言ってきていないって事は、神的存在と今回の事は関係ないって事か。ゲーム的な(ことわり)を作った神的存在が、『試練』なんて物を実行するのであれば、間違いなく『託宣』は下すはず。

「託宣があったっけ~」

 ミミも、俺と同じ結論に達したようだ。

「うんみゅ~、神さん関係なさそうやね」

 その後、ロミナスさんも含めて5人で話し合ったのだが、結論どころか、それらしい予想すら浮かばなかったため、それでその話は終了とした。

 そして、もう一つの案件だ。

「木の実かい?」

 その『ステール』品を見て、ロミナスさんは首を傾げている。確かに、見ただけでは、ただのデッカくって柔らかめのドングリにしか見えない。

 だが、ミミの「超レア品!!」発言で表情が変わる。

 ロミナスさんの目が俺を向く。かなり強い眼力が込められている。

「……またかい?」

 その声には、若干の非難めいたニュアンスが感じられた。

「前回の袋は、レア品ですよ」

 一応、言い訳に無っいない言い訳をして見る。

「しかも、大スケからのスティール品やから、メッサ良い(もん)でも、何個も手に入んないけんどね~」

 ミミのヤツもフォローらしきものをしてくれた。

 ロミナスさんは、一度溜息を吐くと、「待っときなね」とだけ言って、応接室を出て行く。そして、帰ってきた時には、以前と同様に『主任鑑定士』を伴っていた。

 その主任鑑定士も二回目となれば慣れたものだ。席に着くやいなや、口を開いた。

「今度は、何を盗ってきたんだ?」

 彼も溜息交じりだ。どうやら、俺の『スティール』品は、ギルドの溜息案件らしい。

 その主任鑑定士の前に、あの『実』を差し出すと、彼は拍子抜けした顔をした後、『鑑定』を実行した。紫色の『鑑定光』が『実』を包む。

 そして、主任鑑定士が固まった。10秒が経過しても、結果を言わないどころか、身動きすらしない。

 そんな、主任鑑定士の様子を見ていたロミナスさんが、溜息をあらためて吐いた後、意を決したように確認する。

「で、主任。これは何だね?」

 ロミナスさんの声で、やっとフリーズ状態から解けた彼は、ロミナスさんの方を向くと、怒鳴るようにして言った。

「副ギルマス! これはマズイですよ! 袋どころじゃない!!」

「のようだね。で、これは、何なんだい?」

 激高する主任鑑定士と違って、ロミナスさんは冷静だった。俺達は、状況に付いて行けず、ただ唖然としているだけだった。

 ロミナスさんの冷静な声を聞いても、主任鑑定士の激高状態は収まらなかった。

「これは、スキルの実ですよ!!」

 それを聞いた俺は、なぜ彼がこれ程までに激高するのか分からなかった。

 『スキルの実』、名前からすると、当初思っていた『パラメーターを上げる実』ではなく、スキルのレベルかスキル経験値をプラスするアイテムって事のようだ。スキルレベルが上げられるのなら、ティアの『歌唱』を上げるのに使えるか。

「「「「スキルの実!?」」」」

 俺がそんな事を考えていると、俺以外の者の声が完全にハモっている。ロミナスさんも、だ。どうやら、ロミナスさんも『スキルの実』と言う物を知らないようだ。

 そして、疑問符に溢れた室内に、主任鑑定士の説明の言葉が響き渡る。

「食する事で、新たなスキルを手に入れる事が出来る、と書かれています! セカンドスキルですよ! セカンドスキルを手に入れられる実なんです!!」

「マジか────!!」

 鑑定士の話を聞いて、ミミのヤツがいつも以上の奇声を上げるが、誰もそれをとがめる者は居なかった。なぜなら、声の大小は別にして、全員が同様の声を上げていたのだから……。

 『セカンドスキル』それは、『託宣の儀』によって得たJOBに伴って得る以外のスキルの事を言う。

 通常、大半のJOBは三つのスキルを持つ。大多数の者は、生涯この三つのスキル以外のスキルを得る事はない。だが、まれに、新たなスキルを得る者がいる。大抵は、そのJOBに関連したスキルで、それ以前のスキルより強い力を持つものが多いらしい。その、新たに得たスキルが『セカンドスキル』と称されている。

 その、『セカンドスキル』を得られる条件はまだ分かっていない。最低限、所持スキルの全てがカンストしていて、JOBレベル自体が30を超えている必要はあると言われている。

 この『実』は、それらの条件を全て無視して、新たなスキル、つまり『セカンドスキル』を得られる『実』だという事だ。

 なるほど、主任鑑定士のおっさんが、あれほど騒ぐ訳だ。納得。

「ロウ!!」

 ミミのヤツが俺の方を向いて、デカい声を掛けてきた。

「次があったら、な」

「絶対盗れ!!」

 相も変わらず無茶を言う。これは『超レア品』だぞ。分かってるのか? ただでさえ『大スケ』の出現率が低いのに、それから再度『超レア品』を引く確率って、どれだけ天文学的数字分の一になるかって事だ。ほぼ不可能。実質ゼロと見なすべき確率だ。『バリアーシールド』の時言った事と同じだな。いや、それ以上か。

 頭を抱えて突っ伏すロミナスさんを余所に、他の面々は全員が興奮状態だった。かく言う俺も例外ではない。

 その後、その場で話し合いが行われ、この『実』は売却せずにティアが使用する(食べる)事に成った。

 ちなみに、売却額は全くの不明との事。オークションどころか、王家強制買い取り案件となる可能性も有るそうだ。それも有って、売却はしない事にした。なんせ、まかり間違ってクソロムンが使う事にでも成れば、業腹以外の何物でも無いからな。

 使用者がティアになったのは、彼女だけが一つしかスキルを持っていなかったからだ。そして、ティアが使う事に関して、ティア本人以外の全員が賛成していた。

「まず、ティアだ~ね~。んで、次、私!」

 ミミですら、そう言っている。まあ、次なんてものが有るかどうかは(はなは)だ疑問だが……。

「本当に、私で良いのかな……」

「い~から、早く、パクッと行ったって!!」

 遠慮するティアを、ミミが急かす。ティアは、申し訳なさげに『スキルの実』を口に入れた。

 俺は、鑑定の時のように、光か何かのエフェクトのようなものが発生すると思っていたんだが、何も変化が無い。

「失敗か?」

 俺と同様の事を思ったらしいシェーラが呟いていた。

「ステータス! ステータスの確認!!」

「あ、うん、分かった」

 ミミに促されたティアが、ステータスを開いてスキル欄を確認しているようだ。このステータス画面は、他者は見る事が出来ないので、俺達はティアからの発表を待つしかない。

 ステータス画面を確認していたティアが首を傾げた。そして、少しした辺りでその表情が驚きに変わった。

「……スピーカーだって。スキルの説明は、歌唱の力を一定方向限定で増幅する、だって」

「サウンドブースター来た────!!」

 ミミの叫びはともかく、どうやら無事に『セカンドスキル』を得る事が出来たようだ。やはり、全ての前提条件無しで『セカンドスキル』を得られるって事だな。

 何はともあれ、『失敗』でなくて良かった。もし、何らかの条件があって、『セカンドスキル』を得られなかった場合、ティアは自分の責任だと考えて、落ち込んでいただろう。そうならなかった事にホッとしている。

 そして、ミミに急かされる形で『スピーカー』スキルを実行すると、ミミの絶叫が室内に響き渡る。

「メッサ、サウンドブースターやんけ────!!」

 それは、ティアの両肩の上空に浮かぶ、二つの直径30センチ程の半球体状の物体だった。半球の平面部分がスピースーの振動板にあたる部分のようだが、完全に真っ平らで、光沢があり、俺の知るスピーカーとは全くの別物のようだ。

「浮いてるさね」

 ロミナスさんは、当然スピーカー自体知らないため、ティアの言った事の半分も理解できていないようだ。ただ、その姿を不思議がって見ている。

「ロウ、歌唱を増幅するのであれば、あの、はんにゃしんぎょうも増幅するのだな」

 シェーラはロミナスさんと同じ立場なはずだが、俺達と行動を共にしてるだけ、理解度は高かったようだ。

「多分、増幅率はスキルレベル依存なんじゃ無いか? 『精神』依存なら有り難いんだが。直接的な威力とは違って、増幅となると、やっぱりスキルレベル依存だと思う。となれば、スキルレベルが低いうちは今とそれ程は変わらないって事だと思うぞ。まあ、初期状態での増幅度しだいだけどな」

「だ~ね~。んでも、不浄の泉消滅は早くなるんでないかい?」

 確かに、元々遅かった『不浄の泉』の消滅作業だが、多少でも増幅されれば、結果として掛かる時間は大分短くなると思う。今回は、2時間半以上掛かったからな。30分早くなるだけでもかなり違う。

「検証する必要があるな」

 シェーラの言葉に全員が頷く。

 その後、ロミナスさんから、この件()秘密にするように念を押され、ギルドを後にした。

 

 翌日、『スピーカー』の検証を行う。

 草原で、『スピーカー』無しと有りで、『ラッキーソング』を唄い、『運』に入る付与値で確認した。その結果は、現在のスキルレベル1では、1.2倍の倍率だった。また、このスキルは、左右のスピーカーの前方30度ずつが有効範囲となっており、その射程は『スピーカー』無しと比較すると倍となっている。

 そして、有り難い事に、この『スピーカー』を使用していても、『歌唱』自体の効果はそのまま健在で、アンデッド戦における『般若心経バリアー』も併用できるという事だ。つまり、『般若心経バリアー』内から、『スピーカー』による増幅された『般若心経』でアンデッドをなぎ倒す事が出来るという事。

 このスキルは、『歌唱』を使用しなくても、スピーカーを出現させているだけでスキル経験値が入るようで、スキルレベルは上げやすそうだ。ティアは、基本、常時『スピーカー』を実行し続ける事になる。このスキルなら、街中や家でも周りに迷惑を掛けずに実行できる。

 そんな事も有り、ほぼ一日中使い続けた事もあって、三日目にはスキルレベル2に、七日目にはスキルレベル3へとなっていた。その後も、森での活動中も使い続け、一ヶ月後にはスキルレベル5にまで上げる事が出来た。この時点での増幅度は1.8倍で、射程は60㍍程となっている。

 森では山田君の『不運ソング』を長距離で放つ事で、狩りをかなり楽にした。

 この増幅度1.8倍と言う値は、一見低い値にも思えるが、『スピーカー』無しで20と言う付与値が、36に成ると言う事である。JOBレベルをどれだけ上げれば、その値の付与が可能か考えれば、この倍率の大きさが理解できる。

 ティア的には、『ヒールソング』の効果が『低級回復薬』に近い効果で、治癒速度も同じ位になった事が一番嬉しかったようだ。休日には、毎回のように孤児院へと行き、『スピーカー』付きの『ヒールソング』を唄っている。最近では、ティアの『ヒールソング』の効果を知った、スラムの者達まで(たか)って来ているらしい。なぜか、俺が一緒に行く時には来ないんだが……。俺は、ティアの用心棒だと思われているのか? まあ、良いけどな。


 この一ヶ月の間で、ついに俺の『気配察知』とシェーラの『強力(ごうりき)』がスキルレベル20になってカンストした。どうやら、カンストボーナス的なものが有るようで、スキルレベル19で察知範囲が100㍍だったのが一気に伸びて150㍍となった。シェーラの『強力(ごうりき)』もスキルレベル19でパッシブ効果が+9だったのが、+12に成っている。

 MP消費量も少なくなっているので、使い勝手はかなり良くなった。

 ミミは、森という環境の関係で、スキルレベルをなかなか上げられず苦労しているようだ。そのため、

「また、アンデッド、出てこんかな~」

 などと言って、ティアからしこたま怒られていたりする。

 シェーラの精神的な事については、別段の変化はない。まだ、進む道は定めていないようだ。一人の時、考え込んでいる所も見るが、俺は口出ししない。彼女から相談されない限りはノータッチだ。シェーラなら大丈夫だと思う。

 家についても順調だ。家政婦三人娘も大分料理が美味くなった。彼女たちは、各自が覚えた料理を互いに教え合っているようだ。彼女たちなりに、いろいろ努力しているという事だ。おかげで、俺達も毎日美味しい食事ができで、洗濯されたきれいな服を着る事が出切る。大満足だ。『熊々亭』のおばちゃんには、最大限の感謝を捧げよう。

 

    ロウ  16歳

  盗賊  Lv.24

  MP   201

  力    10

  スタミナ 10

  素早さ  50

  器用さ  50

  精神   7

  運    14

  SP   ─

   スキル

    スティール Lv.10

    気配察知  Lv.20(Max)

    隠密    Lv.14


  ティア  16歳

  歌姫   Lv.24

  MP   540

  力    9

  スタミナ 26

  素早さ  17

  器用さ  8

  精神   82

  運    ─

  SP   ─

   スキル

    歌唱    Lv.7

    スピーカー Lv.5


  ミミ   16歳

  炎魔術師 Lv.24

  MP   710

  力    10

  スタミナ 10

  素早さ  27

  器用さ  8

  精神   80

  運    ─

  SP   ─

   スキル

    ファイヤーボール  Lv.15

    ファイヤーアロー  Lv.18

    ファイヤーストーム Lv.16


  シェーラ 16歳

  大剣士  Lv.24

  MP   205

  力    52 +12

  スタミナ 50

  素早さ  16

  器用さ  15

  精神   7

  運    ─

  SP   ─

   スキル

    強力(ごうりき)   Lv.20(Max)

    加重   Lv.14

    地裂斬  Lv.19

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