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幽玄荘の枯れず桜  作者: 竹野 ぼん
始まり
23/23

夜桜の散る中転移者は妖に絡まれる

夜、周りが寝静まった頃。

俺と零は縁側で酒を飲んでいた。

零は既に酔っており、相変わらず気持ちよさそうに喉をゴロゴロと鳴らしていた。

耳や尻尾は出ていなかった。

俺はスルメイカを齧りながらため息をついた。

「零…周りは寝ている尻尾くらい出したらどうだ」

「ヤダ」

「はぁ…」

その時奥から足音が聞こえてきた。

懐中電灯の光と共に軽快な足音が近づいてくる。

「ブランくん。零くんの様子はどうだい?」

片手に懐中電灯、片手に緑色の缶、

猫の面に青みがかった黒髪の浴衣姿の男。

桜木だ。

「桜木さん…なぜ起きているのでしょうか?」

「二人のことが気になってさ。頑張って起きてみた」

「巴さんにはバレないんですか?」

「うん、隣でぐーぐー眠っていることを確認した上でこっそりと起こさないよう抜け出してきたさ」

「そのエナドリは…フランさんのものですよね?あとで怒られても知りませんよ?」

「まぁ、フランちゃん年中飲んでいるしたまには一本くらい貰ってもいいだろう?」

「後で買い足してくださいよ」

「わかったよ」

俺の隣に桜木が座り、缶を開けてを開けて中身を一口飲む

「うぇ、すごく甘い。それに変な味がする。よく飲めるね、フランちゃんは」

「そりゃぁ、慣れだろ。」

「うえー、そんなものかなぁ…」

「そんなもんですよ」

桜木さんがスルメの袋に手を伸ばしてスルメを齧る

「それにしても…零くん思った以上に重症だね。喉鳴らすくらい酔っ払っているのに尻尾すら出さない」

俺に頭を擦り付けて喉を鳴らしている零を見つめながら桜木さんは言った。

「それにしても、こんなにも喉を鳴らしてブランくんに甘えるなんて…これじゃぁ虎じゃなくて虎猫だね」

桜木さんが俺の脇に体を通し乗り上げ零の頭を撫でる

「あの…俺を挟んで撫でないでください、重いです」

「嗚呼、それは失礼。」

桜木さんがパッと手を離す。零は不服そうにこちらを見る。

今度は桜木さんは零の隣に移動し、零の頭を撫でる

零は気持ちよさそうに目を細める。

「それにしても、こんな風に人を撫でる日が来るなんてねぇ…」

「あぁ、ずっとお化けのような状態でしたしね」

「そうさ。俺はずっと幽霊のような身体だったからねぇ…触れはできても撫でたり抱きしめたりできなかったから」

「それにしては歩くのは早かったですね」

思い返せば、あの晩既に桜木さんは倒れそうな零の肩を支えて歩いていた。

「まぁ、それは君たちを見ていたからかな?

あとは…身体が覚えていたってやつかなぁ?」

桜木さんはケタケタと笑っているようだ。

お面のせいで表情が分からない。

仕草や声色でしか判断しようがない。

その時なでられていた零が起き上がり、嫌そうに桜木の手を払い除けた。

「どうやら、零くんはこれ以上撫でて欲しくはなさそうだね」

桜木は手をさすっていた。

零が伸びをした。まるで猫のように。

そのまま丸くなって眠ってしまった。

「仕草は完全に猫だねぇ」

「あぁ、そうだな…本当なら酔った勢いで耳や尻尾を出して欲しかったんだが」

「結果は耳や尻尾すら出さず、撫でたら満足して寝てしまった…と」

「そうだな。桜の木の下で戯れようとも思ったのが失敗ですよ」

「ははは、甘くはないね、これは甘いけど」桜木さんがエナジードリンクを飲みながら答えた

しばらく2人で桜を見ていた。

桜木さんがふと俺の手に持っている瓶を見る。

「ブランくん…それすこーし気になるんだけど少し飲ませてくれないかい?」

「嫌です。」

「一口でいいからさ」

「ダメです。」

「えー」

「えーと言ってもダメです。」

「そんなこと言って…隙あり!!」

桜木さんが俺に飛びつき瓶を取ろうとする

俺は腕を伸ばしビンを掲げる。

「桜木さんやめてください!なんで急に酒(これ)に興味持つんですか!?」

「いやさぁ、ブランくん酔っている気配がないからさぁ、俺でもイケるかなって!!」

桜木さんが俺にしがみついたまま、酒を奪おうとする。

「ダメです!本当にこれはダメなんですって」

「何がダメなんだいっ」

「度数が高いんですよコレ!」

「本当なのかい!?随分と君は平気そうだけど」

桜木さんがしがみついたまま瓶に手を伸ばす。

俺はなんとか腕を逸らして避ける。

そんな風に揉み合っている時、零が目を覚ました。

そのまま俺たちに近づき、桜木を引き剥がす

零の口から出る唸り声 桜木の頭を掴んで鋭い目つきで睨みつける

「こんばんは零くん…はい…ごめんなさい」

「ふんっ」零が座り込んでスルメを齧る

隣に座る桜木

俺はそれを見ながら瓶の中身を飲む。

灼けるような刺激が喉を通る。

「相変わらず、度数の高い酒を飲んでいるんだな」

「あぁ」

「え?本当に度数が高いのかい?」

「高いって言ってるじゃないですか」

「こいつは酒に強いんすよ」

喉を鳴らしながらまた俺に寄りかかりながら零が答える。まだ酔っているようだ。

「へぇ、だから平然としていたのかい?」

「まぁ…俺の体少し特殊らしいですからね」

「その目と満月に石が出る体質以外にもかい?」

桜木が俺の目を見る

俺の目はやや特殊だ 暗闇で目が金色から緑へと変わる。

石もそうだ満月の夜俺の身体からは石が出てくる。

苦痛を伴って。

「まぁ、酒にも異常な程強いですし」

今もそうだ。普通なら零のように酔っていないとおかしい、そんな度数と飲酒量だ。

「へぇ…あ、酒あった。」桜木がビニール袋を漁って

酒の缶を取り出す。

「あぁ、それなら飲んでしまっていいですよ」

「あーそれオレの酒!!」

桜木に手を伸ばす零をサッと避け桜木は酒の缶を開けた。

「ブランくんが飲んでいいって言ったんだ コレは俺の分さ」

そのまま酒を飲むそして俯いた。

「美味しくない…変な味のジュースみたいだ」

「ははは、まだ桜木さんには早かったみたいっすね」

「まだ、早かったな」俺は桜木の頭を撫でた

「子供扱いしないでほしいな、俺は君たちより歳上なんだから」桜木さんが顔を逸らす。そのまま缶の中身を一気に飲み干した。

面の脇から見える耳が赤くなる。

桜木が一息つく。

「嗚呼、もう知らない。」

そのまま桜木が立ち上がり庭へと降り立つ。

そのまま桜木は枯れず桜の上に登ってしまった。

零が酒の缶を袋から取り出し飲み始める。

「おまえ、飲み過ぎだぞ」

「おまえがオレのために買ってきたやつだろ?飲んでもいいじゃねえか」

「二日酔いになってもしらねぇぞ」

「おまえこそ」

俺は瓶の中身を一口飲んだ。

体が熱いふわふわした気分だどうやら酔いが回ってきたらしい。

零が赤い顔をしてまた俺に甘えている。

そのうちずり落ち太ももの上で眠り始めてしまった

顔が完全に赤く、酒臭い。

桜木が桜の木の上からこちらをみていた。

月明かりに反射して花をつけ、散る桜の花びらに混じりながら枯れず桜の上にに佇む姿は不気味に見えた。

「零くんまた眠っちゃったね。今日はお開きかな?」

「いや、零が起きるまでは飲みますよ」

「まだ飲むのかい?」

「えぇ、飲みますよ。」

「作戦失敗記念?」

俺は瓶の中身をゴクゴクと飲んだ。

思考が混濁する。今はコレでいい。

「…ハハハ…作戦失敗記念かぁ…なぁ、(故郷の暴言)野郎木から降りてこい。顔面かち割ってやる」

「おぉ、怖い…ただ困るなぁ、顔面かち割られたら大変なことになってしまうよ」

「人間じゃないんだろ?そのくらい平気だろ」

「それがそうもいかないんだなぁ…嗚呼、そうかブランくんはまだ知らなかったね」

桜の木の上に佇む妖怪が面を外す。

その時だった俺の視界は何かに塞がれた。

手のようだ。

「アレを見るな。直視するな。」

「離してくれ」

「離さない」

「離してくれ!フランさん!」

フランさんの手を退けようと腕を掴むがさらに強い力で目を押さえつけられる

「見るなって言ってんだろ!?」

「フランちゃんこんばんは」桜木の声がした。

「ハーイ桜木ィ?ナァニ面を外しているのかなぁ?

サッサと嵌めてクレないカシらぁ?」

「はーい。」

少し時間を置いてフランさんが手を離す。

俺の視界にまず入ったのはグースカ眠っている零の姿

次に目に入ったのは

口、縫い目、目、鼻から液体が溢れ出ているフランさんの姿だった。その姿を見て酔いが覚めてしまった。

「フランさん…顔が…」

「アぁ?別にカまわない。パーツ交換する時期だったからねぇ」羽織っている白衣で雑に顔を拭った後

彼女は枯れず桜に向かってズンズン歩いていった。

「おい、馬鹿降リテこい。巴ニ報告するぞ」

「はい。ごめんなさい。それだけは勘弁してください。」桜木が木から降りてくる。

「嫌な予感がシテ来てみれば…酔っ払い共ナニシテンノ?」

『酒盛りです。』

「ガキ一人泥酔させテカ?酔って騒ギ起こシかけてカ?」

『ハイ、すみません』

「ブラン、お前はキレんじゃないヨ。」

「はい…」

「桜木ィ ?アンタも面ヲ気軽に外スな。再封印サレたいのかい?」

「はい。申し訳ありません。」

「分かればヨロしい。それじゃ、アタシは帰る

アア、そうそうしばらくアタシの部屋にはハイルナヨ」フランさんはこちらを睨みつけた後ふらついた足で部屋へと戻っていった。

残されたのは、縮こまって座っている桜木、俺、

そして俺の太ももの上で眠っている零。

あの状況でよく起きないものだ。

「とりあえず…お開きにしよっか」

「はい。」

「零くんは…まだ眠ってるね。起こすと悪いから片付けはやっておくね」

「ありがとうございます。あの…桜木さんその…ひどいことを言ってすみません。」

「いいさ。お(・)互(・)い(・)酒(・)に(・)酔(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)それで済まそうじゃないか」桜木が手を振る。

そのまま、桜木は空き缶類やツマミの袋を片付け、俺は身動きが取れないまま朝日を迎えた。

徐々に足が痺れてきた。


朝僕が目を覚まし、何気なく開けた障子の先では

縁側に座って眠っている ブランさんの姿があった。

ブランさんには毛布が被せられていた。

台所へと向かうと今日は桜木さんではなく眉間に皺を寄せた巴さんがいた。巴さん曰く桜木さんはまだ眠っているらしい。

朝ご飯を食べた後、歯を磨き、身支度を整え玄関へと向かう途中、顔色が悪い零さんとすれ違った。

「おはようございます零さん。あの…顔色が悪そうですが大事ですか」

「おはよう…奏…オレはただの二日酔いだから大丈夫」

そう言い残し、零さんはフラフラとした足取りで出て行ってしまった。

昨日眠っている間に何かあったんだろうな。

そう考えながら僕も外へと出ていった。














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