4-2 遅すぎた外出
各話、行間を開けたりして読みやすくしてみました。
作品中にやたら出てくる"男"や"このあたりで起きている殺人事件"の表現はくどいかもしれませんが、当時実験的に試していた表現ですのでご了承ください。<(_ _)>
「じゃ、行ってくるわ」
「最近物騒だから気をつけるのよ」
男は近くの公園で友人と待ち合わせをしていた。玄関を開ける際、母親の言ったことが胸を打つ。
最近、このあたりで一丁の拳銃による殺人事件が起きている。それを危惧してのことだろう。たしかに夜中は世界中のどこに行っても昼間より物騒だ。
待ち合わせの時間は十時。場所までは自転車で五分。そして男が外に出たのは十時半過ぎ。
今日はいつもより遅く家を出てしまった。ただ、いつもそうではない。普段は待ち合わせをしても予定時刻より早く行くようにしているのだ。
今回は他から見ればどうでもいいような、家庭の事情というやつで不覚にも遅出となってしまった・・・・・・。
男は両親の車が止まってある車庫の横に肩身狭く置かれている自転車を出した。
「もう、こんな時間」
当然、待ち合わせ時間をとっくに過ぎているので急ぐ。友人に連絡を入れなかったのが悔やまれるが仕方ない。
男は気にしていないものの、数ヶ月前、何の連絡もなくきっちり一時間待ったされたこともあったが、その時とは立場が逆になっただけだ。
この時間帯、付近の人通りは割と多い。男の家から少し裏道に入るとマンション街になるからだ。
男は、遅れたお詫びに友人への飲み物を買おうとコンビニへ立ち寄る。
目的のものを購入し、コンビニを出、何人もの人とすれ違い大通りから一歩、道を入る。裏道に入った途端、ぱったりと人の往来がやむ。そのまま裏道を走り抜けると、見慣れたゴミ置き場。人の手が顔をのぞかせているその場所に男は、
どうせこれを見て本物と間違えるヤツがいる、あるいはいたはずだ。もしそいつが自分と同じように自転車に乗っていて、派手に転倒すると面白い。
などとのんきに考えている。
しかし、そこで彼の思考は中断される。なぜなら、数メートル前からいきなり現れた男に声をかけられたからだ。しかも、かなり敵意のこもった声で。
「止まれっ! おい! そこのオマエだよ」
無視することも考えたがもう自転車を止めてしまった。やれやれとうつむいていた顔を上げると、ニット帽を深くかぶっていた男が立っていた。男の右腕には、本物か偽者かわからない拳銃が握られている。
「ここを一番に通ったヤツを殺すことにしている。これからどこにいくのか知らないが、運が悪かったな」
言う台詞が芝居がかっていて、おそらくは何度も練習したであろうことが容易にわかる棒読み。銃を向けられてはいるが、偽者を突き出しての物取りということも十分に考えられる。
ニット帽の男は、そのまま発砲することもなくにじり寄ってくる。目深にかぶった帽子のせいで表情をうかがい知ることは出来ない。
とりあえずこのままでは不利だ。男は自転車から降り、後退ってみる。本物の拳銃ならそもそも勝てはしないが、偽者なら油断させて何とかできる。
パン
(本物・・・・・・かよ・・・・・・)
それはあまりにも突然やってきて、あまりにもあっけなく終わりを迎える。
ガシャン
弾は狙いたがわず男の頭を打ち抜いた−−−−即死。
支えをなくした自転車が持ち主とともに横倒しになる。ニット帽の男はそれを無感動に見つめていたが、周りに人がいないのを確認して、死んだ男が来た方へ歩き出した。
すぐそばでは月に照らされたゴミ置き場の片腕がゆるぎなく伸びていた。




