第二話
数時間前日本から女神トリビアの過失によって異世界に転生した少年サブローは一緒に転生してきたトリビアに街の案内をしてもらうことになった
「なあ女神様、徒歩だと街の中心までどれくらいかかるんだ?」
「そうねえ、さっきの公園から約3キロ離れてるから 1時間くらいかしら」
「遠いなぁ! 女神様 お金持ってないのかよ? バスとかタクシーとか乗って行けたらすぐに着きそうだけど」
「あのねぇ、私も急にこの世界に来ることになったの! だからこの世界の紙幣を用意している時間なんてなかったわ!」
確かに時間がなかったのは仕方ないのかもしれない
「お金ないのか~、…これって結構マズくね? 今後どうするの!?」
しかしこんな見知らぬ土地で一銭もなしに放り出すなんて偉い神様達には人の心というものはないのだろうか
「まあお金はバイトして手に入れられるか」
「そうね、私の分もよろしくね」
「あんたも一緒に働くんだよ! 住む場所も考えないとな…」
「落ち着くまでは橋の下とかでダンボールハウスかしらね」
「そうだよなぁ…元の世界に帰りたい…」
女神様がポンと俺の肩に手を置いた
「《汝今を生きなさい。》過ぎたことを悔やむより今この一瞬に自分には何ができるのか考え、実行する それの積み重ねがあなたを素晴らしい人生に導いてくれるはずです」
元をたどれば女神様、あなたがぶつかってこなければ私は転生してこんな遠方の土地で路頭に迷うことにはならなかったのに
ふと空を見上げると数時間前までいた地球と変わらない茜色の空が広がっていた もうすぐ日が落ちる
「さあ歩きましょう、目的地まではまだ遠いわよ」
女神様が手を招いた
「女神様 そういえば聞いてなかったんだけど、この街の名前はなんていうんだ?」
「そうね、そろそろこの世界の説明をしなけばならないわね! 歩きながら説明するわよ! 大切なことだから読者の皆様も心して読むといいわ!」
いやだから読者の皆様ってなんなの…
「時にサブロー! 日照権って言葉は知ってるかしら?」
公民の教科書に載ってたような…太陽の光《日光》を浴びることができる基本的な権利だったか
「ああ、知ってるよ」
「この世界には一か所地下に大きな空間がある場所があるわ、この空間は太陽光は当然届かないけれど特殊な発光する鉱石のおかげで地上の昼間と明るさも変わらず夜もしっかりあって水もあるため生態系もきっちりある所なの」
「浦安にある遊園地の火山の地下みたいな所か」
「そうセンターオ◯ジアースをイメージするといいわ」
「そこには人類とも意思疎通ができる灰色の肌の知的生命体がいるの」
「彼らは古来に人類の圧力によって地下空間へ追いやられた《亜人》の末裔で特にその灰色の肌を持つ彼らを人類は《地底人》もしくは《魔族》と読んでいるわ」
《亜人》、《魔族》この世界には様々な種族がいるらしい 根深そうだ
「彼ら《魔族》は人類に対して抗議、抵抗を続けているわ」
「そりゃそうだ追いやられたんだから」
「基本的に温厚な種族ではあるのだけど中には過激な思想を持つものもいるわ その過激な者たちは太陽光の独占そして世界征服を目標に人類に攻撃をしているの」
「それってまさか…異世界転生でお馴染みの…」
「そう! 攻撃を仕掛けている組織の名は《魔王軍》! そしてトップの名は《魔王》よ!!! アニメが好きなあなたたちにはたまらないわよね!!!」
「そしてサブローこの街は数ある人類の連合王国の一つ キト王国の首都ラクサ! そして今私たちが向かっているのは行政機関、一流企業の本社が建ち並ぶこの国の副都心よ!!!」
魔王がいる世界なんて… 俺は絶句して言葉が出なかった
「この世界の人類は強大な力を持つ《魔王軍》に常に対策を強いられているわ 軍が防衛したり、《ギルド》を設立して《勇者》を派遣したり、新しい魔法や兵器の開発をしたりね」
この世界があるのか
「勇者ねぇ、…この世界魔法があるの!?」
「俺も使えちゃったりするの?」
「練習すれば簡単な魔法は使えるかもね」
ビル群があって科学も発展してそうなこと以外はこんな異世界転生のお決まりみたいな世界に転生されるとは
まさか偉い神様達は俺が魔王を倒せると踏んで俺を転生させたのか?
「もしかして女神様! 俺がこの世界に転生させられた理由って…」
「わたしはね サブロー!」
女神様に遮られてしまった
「地獄の女神としてあなたにこの世界で私と共に達成してほしいことがあります」
「それはあなたがこの世界で自分が出来ること、やりたいことを実践して幸せに人生を歩み、人の道を踏み外すことなく過ごしあの世に行ってほしい」
「それがわたしがあなたに望むこと」
ノンデリだと思っていた女神の願いは意外なことだった
「…てっきり魔王を倒すようにお願いされるのかと思った」
「……あなたが?」
女神がにやけた
「ぷぷぷっ! あーーおっかしい! あなた魔法も使えないし、他のラノベ主人公みたいなチートスキルなんて持ってないじゃない!!!」
やはりノンデリ女神だった
俺は思わず赤面してしまった こんなに笑わなくてもいいのに
「大丈夫! 誰もあなたに魔王を討伐してほしいなんて思ってないわ!!」
「誰もあなたに対して期待もしてないし」
酷い言われようである
「それはそうと魔法は使ってみたいなぁ」
「あなたが望むなら女神であるこの私が魔法を教えてあげてもいいわ!」
「そんなことよりもサブロー! 建ってるビルも立派になってきたし、道を歩く人の数も増えてきたと感じない?」
確かに俺たちはさっきの公園から大きな幹線道路を歩いてきたがビルが進むにつれて立派になってきているし、歩道も広くなってすれ違う人数も増えた気がする。
女神様に連れられてもう少し歩くととても立派な道路に突き当たった
「見なさいサブロー! 感じなさい読者諸君! 今突き当たった目の前の道路! これは《王宮》とこの国で一番利用者人数が多い列車駅を一直線に結ぶ幹線道路《王宮通り》この道路を中心に国の行政機関や300メートルに達する一流企業のオフィスビルや貴族が住むタワーマンションが建ち並ぶこれが世界でも有数の経済力を持つ《キト王国》の副都心の全てよ!!!」
確かにすごく立派で綺麗だ 摩天楼が日が落ちたばかりのこの街を様々な色のネオンで照らしてギラギラしている
「王宮通り」に出てみる 左を見ると立派な時計を掲げている「ニューロッジステーション」そして右を見ると「王宮通り」の突き当たりに微かにとても大きく立派なビルが見えた
「あの遠くのビル 立派でしょう!あれがこの国の王宮よ!この町の隣街であるこの国の都心に高さ1000メートルでそびえ立つこの国で一番大きな建物よ!! 屋上を見てみなさい サブロー! 緑が見えるでしょう! あそこは森になっていてユニコーンやペガサスが放し飼いになっているのよ!!」
1000メートル! 圧巻だけどペガサスは逃げないのだろうか
「いい機会だから駅ビルに行ってみましょう お金が無いから何も買えないけど」
「この世界にも駅ビルがあるのか」
駅ビルに入ってみると中のお店やインテリアは俺が元居た日本とあまり大差がないように見えた。立派だけどね
そんなことよりも行きかう人々の中に変った人達がいるのが見えた
「なあ女神様 すれ違う人達に動物の耳のカチューシャを付けている人がいるんだけどこれは今流行りのファッションなの?」
「いいえあれはファッションではなく自前よ!」
・・・自前?
「さっき話した中に出てこなかったかしら《亜人》って」
「・・・・・・あの人たちが《亜人》!?」
「ええ 正確に言うと《獣耳族》よ 彼らとは共存関係が作られているようね」
「つまり《亜人》というのは《人類》以外でコミュニケーションが取れるこの星生まれの知的生命体の総称のこと! 他には《魔族》や《エルフ族》や《沼人族》などたくさんの種族がいるわ!!」
まるでファンタジーだ
「実はこの世界《宇宙人》なんかもいたりして彼らがこの星に科学を持ち込んだ歴史もあるんだけどこれ以上解説を続けると頭がパンクしちゃうかしら」
「…大丈夫もうパンクしてるよ」
俺は理解が追いついていなかった宇宙人てなんだよ元居た地球にもいたのだろうか
「今日の散策はこの辺にして寝床を探しましょうか」
「そして明日はどうするのサブロー?」
「どうするって言ってもなあー」
そういえばさっきの会話で《ギルド》の話が出てきたっけ
「じゃあ明日は《ギルド》に行こう 異世界転生したら最初に《ギルド》に行くのは鉄板だろ」
「そうね、わかったわ!」
異世界転生したその夜は公園のベンチで迎えた
数時間前まで日本にいてその日の夜はカレーを食べて自室で就寝するはずだったはずなのに・・・
全ては隣で爆睡している女神のせいである
先程女神が言っていた「汝今を生きなさい。」一見無責任に聞こえたが的を得ているのかもしれない 過ぎたことをくよくよしていても道は開けない
今俺の中で心配していることは
明日食べるものはあるのか
ギルドで何ができるのか
その二つだけである
ああ、お腹空いたなぁ




