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61.新たなる令嬢の名前

第3部完結です!

次回は10/22から第4章が始まりますのでお楽しみに!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 ついにリンジー・ロッドフォードは、ウェル・ベルクと共に冒険者ギルドへ向かう旅に出た。


 死を偽装し、ウェルがボディーガードであることで安全を確保する――これが今の最善策だ。


 「ラーニング三つ同時発動!

 【トリプルテレポート】!!」


 リンジーと共に、俺たちは空気を裂くようにして消えた。


 「行ってしまったな」


 リンジーの回し蹴りで大の字に倒れたイーニアスが、ポロリと漏らす。


 「言ってしまいましたね」


 同じく大の字に倒れたジョーディも、無言でうなずく。


 「イーニアス様。

 そろそろ起き上がってはいかが致しましょうか?」


 メイドのレッティが、柔らかくも少し厳格な口調で声をかける。

 公爵家当主と次期当主が屋敷の庭で、大の字に寝転がり、使用人全員の前で無様に見えるのは、さすがに沽券に関わるのだ。


 「…すまないが、もう少しだけこのままでいさせてくれないか?」


 「…かしこまりました」


 愛する娘の命が助かり、屋敷を出て行った。

 心の整理をする時間が必要なのだろう。


 その心情を察したレッティや使用人たちは、静かに屋敷に戻り、日常の仕事を始めた。


 「…私はロッドフォード家当主としてではなく、父として立派にやれただろうか…?」


 青空を仰ぎながら、イーニアスはジョーディに問いかける。


 「…やれてましたよ…」


 「…当主の仕事で、リンジーは母に任せっきりだったからなぁ…」


 「母上も素晴らしい方でした。

 私はこのロッドフォード家に生まれて幸せです」


 「はっはっは!

 そう言ってもらえると、父として嬉しいことこの上ない」


 「さて、そろそろ始めようか。

 リンジーの葬式の準備をして、死を偽装しなくてはな」


 「そうですね。では参りましょう。

 リンジーのために…ロッドフォード家のために」


 イーニアスとジョーディは、同時に起き上がり屋敷の中へ入っていった。

 娘を守るために。

 妹を守るために。

 その背中には、公爵家としての威厳ではなく、父と兄としての覚悟が刻まれていた。




 一方、ウェルとリンジーは――


 「これでラスト!!【トリプルテレポート】!!」


 シュン!


 俺の連続『トリプルテレポート』により、冒険者ギルド【ルミネスゲート】がある街、【シーサイドタウン】に到着した。


 街は朝の光を浴び、海風が港町特有の塩の匂いを運んでくる。波の音が心地よく、街路には行商や冒険者たちが忙しく動いていた。


 「ふぅ…! やはりまだまだ疲れるなぁ」


 トリプルテレポートを連続で50回使ったことで、俺の魔力は限界に近づいている。


 「【アイテムボックス】」


 黒い空間を開き、手を突っ込む。

 魔力回復用の【マジックポーション】を数本取り出し、一気に飲み干す。


 「ぷはぁー! これがないと実用できそうにないな!」


 長距離移動には【マジックポーション】必須。『トリプルテレポート』とセットでなければ、到着した時点でヘトヘトになってしまうのだ。


 「お疲れ様ですわ、ウェル」


 リンジーが心配そうに声をかける。


 あれ、女の子に優しくされたのって初めてでは!?


 36歳童貞男性の脳裏に、思わず心臓が跳ねる。

 エリスお嬢様は俺をペット扱い、テンちゃんは対等の仲間、ココさんには剣でしごかれ、【ルミネスゲート】の受付嬢ミリアには子ども扱いだ。

 だから、自然に優しくされたのは本当に初めてだった。


 「俺…モテ期が来たのか…」


 思わず涙がほろりとこぼれる。


 「ウェル? モテ期とはなんですの?」


 リンジーは首をかしげ、不思議そうに聞いてくる。


 「へ!? いや! こっちの話!!」


 危ない危ない。変な妄想でリンジーを巻き込むところだった。心の奥にそっとしまっておこう。


 「そ、それはそうと、冒険者になるなら偽名を使った方がいいよ! ロッドフォード家の名前だとすぐにバレるし! あと、髪色も変えよう!」


 話題をそらすように切り替える。

 公爵家の名前を使っては生きていることがすぐにバレ、また狙われてしまうのだ。


 エリスは家名を使わず、孤児院出身という設定で登録している。

 本人曰く「ここまで姿が変わっておったら偽名はいらんじゃろう」とのこと。


 「そうですわね。どんな名前に致しましょうか?」


 男の俺が女の子の名前をつけていいものか迷ったが、迷ったときはこれだ――


 固有魔法【ランダムネーム】。

 術者の頭にランダムで名前が浮かぶ魔法だ。


 「固有魔法【ランダムネーム】」


 俺の頭に世界中の言葉が渦巻き、地球の単語まで混ざって名前が形作られる。


 「…リーズ・アクィルスってのはどうかな?」


 「リーズ・アクィルス…気に入りましたわ!」


 髪色も固有魔法【メタモルフォーゼ】で茶髪から緑髪に変更し、リンジーは満足げに笑う。


 「素敵ですわ!」

 「お父様とお兄様以外の殿方から初めての贈り物、大切に致しますわ!」


 リンジーの血縁以外の初めての贈り物――彼女は本当に嬉しそうだ。


 「よかった…気に入ってくれて…」


 リーズは小走りで前に出て、振り向き自己紹介する。


 「改めて自己紹介致しますわ! わたくしの名はリーズ・アクィルス。冒険者として多くを学び、立派な聖女を目指しておりますわ!」


 こうして、犬族で一流冒険者のウェル・ベルクと、人族で聖女のリーズ・アクィルスは、冒険者ギルド【ルミネスゲート】に向けて歩き出す。


 そして、俺はまだ知らない。

 この先、思わぬ修羅場が待ち受けていることを――。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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