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神々の愛し子  作者: chima
歩み始める一歩
19/32

難しい話


微かに残る祖母の記憶。両親も祖母も私の手元には写真ひとつ残らなかった。顔だって忘れてしまった。どんな声だったか、ぬくもりも遠い記憶として微かに燻る程度のもの。だけど家も土地もお金も、何より知識と宝物の沢山のノート……生きていくために欠かせないものを遺してくれた。


祖母の遺したノートには、植物のことから料理のこと、怪我や病気の対処とかとにかく色々な事が書かれていた。祖母が若い頃から何冊も何冊も日記のように書き留めてきた物。図書室のように沢山の資料とノートがひと部屋を埋め尽くすほどの量で、それらが私が生きていく支えになってくれた。



いまさら血の関係とかDNAとか関係ない。世の中には血の繋がりのない家族なんて大勢いるお祖母ちゃんから貰った知識は学校とかで修得するものとは違って、うまく言えないけど……家族としての愛情が詰まった、家族だから譲り受けることの出来た宝物だから、つまりは家族だもん。



もう何を聞いても取り乱したりなんかしない。


落ち着いていこう



――――


トントン

『ルナ様、おはようございます』


「おはようございます。ごめんなさい、踏み台を頂けますか?」



初日に困ったベッドの高さは子供用の踏み台を利用することで解決した。昨晩は美形さんに抱き上げられて床へ入った為、下に収納されてしまっているので身動きが取れなかった。



『はい、只今ご用意致しますね』


「そういえば、皆さんいらっしゃらなかったのですね」


『はい。ですが、朝食は共にできると言付かっておりますので時期にいらっしゃると思いますよ』



エリーさんや侍女さん達にせっせと身だしなみを整えられ花のテラスと呼ばれる部屋で今日は朝食となった。遅れてやってきた美形さん御一行も一緒に朝食らしく野菜豊富のメニューで大変美味しくいただいた。




『ルナ? そろそろ時間だから神殿に行こうか?』


「はい」


『今日は顔色も大丈夫そうですが、無理はなさらなくてもいいですからね? 辛くなったら言ってください』


「ヴァルトさん、いつも気にかけてくださりありがとうございます。大丈夫そです! 心の準備はできました!」


心配そうにしている美形さんとヴァルトさん、それからお留守番にはなるがエリーさんにニッコリ笑顔を見せて大丈夫と伝えると柔らかい顔を返してもらえ、どうやら安心してもらえた様子。



―――――


『よく詣られた。気分は如何かな? ルナ』


「もう大丈夫です。あの……昨日はお時間を戴いたのに……申し訳ありませんでした……」


『いや、我らも配慮が足らなんだ。すまなかった』


「と、とんでもない! もう大丈夫ですので、また話の続きを聞いても良いですか?」


『落ち着いたようだね。よかった。……では天照殿お願いできますか?』


『はい。では、日本の事なので我々が話しますね』


『よろしくお願いします』




話は思ったほど大したことはなかった。いや、あったのかもしれないが……ここのところのビックリ事件に心臓が強くなったのかもしれない。



『ルナを人として誕生させるために月神の血をひく一族の娘のもとへルナを送る儀式により無事生まれたのが優月。優月は神の子だから人の血は流れていないが、生気……その言葉の通り、生きるために必要な気、優月は神の生気と胎児過程で両親からもらい受けた人としての生気をつくる。つまり二通りの生気を持ち合わせているのがそなた』



「生気……」



『もともと他界に生を受けた神の子、その魂を他界どころか地上へ降ろし誕生を待つなど前代未聞のこと。例をみないこと故に何が起こるか想像もつかなかった。我々も加護をかけ貴女をみつめてきた。草花の神や土、水や農業神といった自然に纏わる神々は特に気にかけていたよ』



『日本では神は信仰心が無いわけではけしてないけれど空想的な立ち位置でもある。こちらのルナンクトゥスとは異なり、人と神とでは直接的な繋がりは薄く、姿をみることができる者も少ない。そして必要以上に干渉しないのが暗黙の了解となっている』



「はい。何となくわかります」



『うむ。そなたは幼い頃より聡い子であった。神の血によるのも要因かもしれないが両親亡きあと、月の娘……祖母に養育された。まだ立つことすら出来ない幼子のうちに田畑にでて作物と触れ、大地の尊さを学んできただろう? 月の神は食草や薬草に秀でていて祖母もその流れを汲んでいたのだろう。そして、優月にも繋いだ。とはいえ、優月は月神の血ではないから少々違うけれど』



む、難しい……



『ふふ、混乱していますか?』


「あ、いえ、大丈夫です! 少し難しいだけなので!」



『もう少しだけ頑張っておくれ?


優月は神力を直感的に使いこなしていた。もちろん加護の力もあるけれど、それ以上に神の力を無意識に使っていたのだろう。


そもそも、こちらの世界にはある魔力が地球には存在していない。大気そのものも異なっているから、魔力持ち、神力持ちの子神が地球で人の器で生きるのは限界があったのだろう。徐々に成長していく優月の力に耐えきれずに、あのタイミング(トイレ)で世界が帰還へと働いたのだろう』



「世界が帰還へと……? ん?」



『説明とは難儀なものであるな。


はっきり言うと、そうだな……日本人としての優月は亡くなった。こちらへ転移したときに受けたでしょう衝撃は繋ぎとめていた糸のようなもの。それがプツリと切れ、あるべき場所へと戻ったということ』



「わ、私は、死んだですか?!」


『そうですが、そうではありません』


???


難しい話(前半)

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