ミアとスキロス
『お待ちしておりました。殿下、皆様、こちらへどうぞ』
前回に引き続き案内人としてアゲット、そして今回は少年がふたり。
『今日は真面目に仕事をしているのだな、スキロス? 今日はイタズラしないでくれよ? って、ミア! ルナにへばりつくなー! アゲット!!』
『えー、だってちいさくて俺に収まる大きさですよ、可愛いじゃないですかぁ。ルナちゃん、お兄ちゃんが抱っこしてあげるよー、っ!痛ったぁああ』
『こらー! みぃぃぃあぁぁぁあ!!!』
『いてーよ! 大人げねーぞ殿下もアゲットもおー! スキロスたすけろ』
『おっ! 諦めろミア! ナッハッハ!』
少年といっても180㎝程ある身長なのだが、顔立ちがまだ少年らしく可愛らしさを滲ませた顔立ちをしている。
ただ、私の記憶が正しければミアとスキロスって・・・・・・昨日は仔狐と仔犬ではなかっただろうか。同じ名前なのか、いや、アゲットの姿をみるに昨日の姿その物だろう。ということは……
周囲を見渡し暇そうなヴァルトの服を引き耳打ちする
「あの、ミアとスキロスって昨日の子達と同じ名前ですよね」
首を傾げながら問いかけると釣られてコテンッと首を傾げる所が意外と可愛い。
『んー? あぁ、そういえば紹介してなかったですね。 殿下、おーい、おい! ……おいこらロリコン殿下!』
『なんだこら!!』
気のせいだったかもしれない。次期皇帝と決まっている皇子に対する対話の仕方がおかしい。初対面時の印象が皆一様に変わり過ぎていると思うのだが。余所者に素は見せられないにしてもせめて態度は一貫して頂きたい所だ。
『今しがた、ルナさんにご質問いただきましたよ。昨日出会った動物のミアとスキロス、現在そちらに居るミアとスキロス、同姓同名でしょうか? 紹介しておりませんでしたね』
『おお、そうだったな。すまぬ、ルナ
ヴァルト……あとで仕事を頼もうな?』
『はて、残念ながら本日は忙しいもので』ニッコリ
ついていけませーん。足元にすり寄るフィーを抱き上げ痛い頭を体にグリグリ擦り付ける。ぐるぐる喉を鳴らして、そうかい、気持ち良いのかい。
「いえ、お気になさらづ」
『ルナちゃんオレらのこと分かってなかったか! それは抱きついてごめんなぁ? 吃驚したろ、ん?』
『ミア、それ以上すり寄ったらアゲットのアホにリードで繋がれるぞ~。
ははっ、オレらは昨日会ったミアとスキロスで間違いないぞ~』
「ええっ、仔狐仔犬のミアとスキロス? 変化の魔法?」
ぽわんっと浮かぶのは幼い頃にテレビで観た忍者のアニメ。変化の術で動物となるファンタジー。
『間違いではないか? うーん、うん!変化の魔法だな! ただし、こちらもあちらも本来の姿』
『ちがうだろ、ミア~。オレらは獣人だから、ふたつの姿を持つ』
『あー、そっか! まあ、魔法も得意だからルナちゃんのいう変化の魔法でパチッと姿も人と仔狐にもなれるのさ』
『本来の獣態は、これね!』
ぱちんっ
一瞬ふわっと光なのかモヤなのか白いものに彼らのからだが包まれたと思った次には、モフモフとした大型犬程の大きさの美しい魔石を額に宿す白狐と白犬。お利口にお座りしている。
「!!」
ぱかーん。目を丸くするどころか口を閉じることすら忘れる事が目の前で起こった。事態を理解する(ここはファンタジーだもの)ものの、続いてやってくる衝動はモフモフを前に抑えられなかった。
ウズウズ
『『?』』
じりじりとにじり寄るルナに対する反応はバラバラ。狐のミアはかかってこいと魅惑的な尻尾をゆらゆら振ってルナを誘い込む。対するスキロスは、少し首を傾げ何か考えるそぶりをみせると唐突に立ちあがりゆっくりと移動していく。その様子に残念さを感じながらも今は目の前で待ち構える尻尾を捕まえたい。
「いいこね、ミア。そのままよ」
近所に現れる野良猫に接するときの声かけ。
ミアは変わらず口端をあげ待機。もう、手を伸ばせば届く距離。
そこでルナは勢いよく且つ潰さないようにミアに抱きついた
「ひゃー!! モフモフふわふわ! すんばらしい毛並です!」
ぶんぶんぶん
尻尾を高速回転させるミアも自慢の毛並みを撫でられ褒められ満更でもない様子。そこに音もなくにじり寄るのは……
何かを察して移動したはずのスキロス。音も無しにルナの背後からぶんぶんとイタズラの成功を想像し緩く尻尾を振る。そして勢いよく普段遊ぶ要領でルナへ飛び掛かる。
『キャンッ』
「え! 美形さん?! スキロス?! な、なにしてるですか……」
飛び掛かる直前、美形さんによって首根っこを掴まれイタズラを阻止されてしまったのだ。不完全燃焼の彼はぶーたれ、魔法の力も使われ首根っこ掴まれてブラーンとしていても痛くはない。が! 不機嫌に尻尾でバシバシ攻撃しておく。(痛くはない)
『ルナ、狐は女好きだから置いておくが……この犬には気を付けること。舐められてはいけない。甘えられても駄目なことは駄目と叱って良いからな。
さて、まだ幼犬だからと何でも許しては危険だったか、他者同様に遊び相手というか遊び道具にされると幼いルナは身体も小さいしな』
美形さんはスキロスと向かい合わせになりムッと子どもを叱るような表情で睨み付ける。スキロスはベシベシとしていた尻尾が届かなくなり『クーン』と高い甘え声で鳴き小型化して更に甘える素振り。
「え、え、え? え?」
取り残される少女ひとり。周囲に助けを求め視線を移すが、何と我関せずというか、何とも思ってないのか、アゲットの肩にフィー、そしてヴァルトで三人は何やら会話中。抱きつくミアに視線を移すと『どうした?』といった表情。
〈こ、この反応は、もしや日常茶飯事ということか……?〉
「ふぅ」
なんだか疲れたなと溜息ひとつ。すると、唐突に視界が高くなる。
『どうした? 溜め息など、疲れたか?』
美形さんはお説教は終了だとスキロスを解放し、後ろへ視線を移すと人へ戻ったスキロス、そして同じくミアが肩を回しながら、しれっと立つ。
なんなんだまったく。
「ちょっと疲れました……」
『そうか、すまなかったな。もう少し我慢してくれるか』
「はい。大丈夫です」
『皆、そろそろ神々が御待ちであろう。行くぞ』
『『『『御意『なーん』』』』』




