異世界との接続
「ラノベにある異世界転移とか、異世界転生とかは、その並行世界への接続という文脈上にあるわ」
トマトちゃんは言う。
「ごめん。文脈上って、ちょっと意味がわからないわ」
僕は尋ねる。
「うーんとそうね。並行世界への接続と、異世界転移、異世界転生は同じようなものって意味」
トマトちゃんは言う。
「ちょっと待って、じゃあ。バミューダトライアングル、魔の三角地帯とか、ムー大陸、アトランティスとかも、並行世界ってこと?」
カエデちゃんは身を乗り出す。
「うん。そういう解釈もできるかも。UFO、UMA、心霊現象ですら、並行世界とこの世との接続で説明がつくかもしれない」
トマトちゃんは神妙な面持ちで語る。
「いずれにせよ、このやり取りでなにかわかるかもしれないね」
僕は言った。
二人とも頷く。
僕はトマトちゃんを見る。
思い出したように、急に考えだす。
「正直、誰かのイタズラではないかと少し疑ってはいますが、もしあなたの言っていることが真実なのであれば、なんらかの現象で、異世界同士がつながったものと思われます」
一呼吸を置く。
トマトちゃんはベッドに横たわり、天井を見ている。
そして続ける。
「実はこちらの世界には、その当時では考えられない文明技術のものが、遺跡などから出土されたケースなどもあります」
トマトちゃんは頷いた。
僕は送信ボタンを押す。
次の返信を僕たちは待つ。
五分経っても返信が来ない。
やはりイタズラだったのか。
(ぴろん)
スマホの通知音が鳴った。
僕はスマホを見る。
メッセージはない。
(ぴろん)
再び、スマホの通知音が鳴った。
「ごめん。家からだ。私、帰るわ」
トマトちゃん。
カエデちゃんもスマホの画面を見せ、
「私のところも。じゃあまたね」
そう言い、帰っていった。
時計を見ると18:00。
僕はリビングに行き、ご飯とおかずをレンジに入れる。
インスタントのシジミの味噌汁を、お椀に入れ、ポットのお湯を入れる。
3LDKのマンションに僕は一人っきりで食事をしている。
両親は22:00頃まで帰ってこない。
小さい頃は寂しく思ったが、もう慣れた。
両親とは、ほとんど会話はなく、
連絡はメッセージアプリ。
主にする連絡は、
冷凍食品の美味い、マズいの評価だけ。
星3つで表現している。
今日のささみフライは星3つ。
タルタルソースで食べるのが美味しかった。
そういえば、このささみフライ。
父さんはウスターソース。
母さんはマヨネーズで食べるのが最高って言ってた。
ほとんど顔を見ぬまま、
食べ物の好みだけが、記憶として残っていく。
時折感じる。
家族としてはどうなのだろうかと。
僕は食器を食器洗浄機に入れ、歯を磨く。
そして勉強。
学習用アプリで勉強を始める。
僕は今高校一年生。
将来なりたいものもない。
将来生きているという感覚もない。
ただ……、
ながされて、クラゲのようにプカプカ浮かんでいる。
僕は小学三年生の頃、
一瞬ぐれた。
父さんに、
「勉強なんて意味がない」
と言った。
父さんは一言、
「父さんと母さんは、同じ大学で出会った。それなりに偏差値の高い大学だ。
父さんと母さんが、勉強は不要だと思っていたら、ジュン、お前はこの世に存在しない」
僕は、自分が生まれた理由が、勉強にあると思って、勉強だけはやろうと思った。
そして、それは今も続けている。
でも……、
両親ともに22時までの仕事。
苦労をするために、勉強をしているのかと思うと、
勉強に対して、また否定的に捉えてしまう。
勉強に対して、否定的な感情と肯定的な感情。
この二つが行き来して、ずっと生きてきた。
21時を回った。
(ぴろん)
スマホの通知音が鳴った。
僕はスマホを見る。
メアリー・アムステルダムからだった。
「少々怖くなってしまい、時間ばかりが過ぎました。
私のほうはイタズラではありません。
それを信用してもらうのも難しいことだと思いますが」
僕は返信するかどうか、戸惑った。
でもいい。
僕のスマホだ。
僕が考えよう。
「実は僕も少し怖くなっていたところです。本当に異世界の方であれば、どう交流を取ればいいかと」
「私も同じ気持ちです」
そう来て、
少し安心した。
「こうしませんか?
半分ウソかもしれないと思いつつ、でもできる限り誠実に答える。
そうすれば、お互いに傷つくことは少ないかもしれない」
僕は送信する。
「そうですね」
返信が返ってくる。
僕は一つ気になることを確認する。
「そちらは画像を送る機能とかありますか?」
「いえ。そんな機能はありません」
返信が来る。
そうか……。
でも、
もしかして送れるかもしれない。
僕はひよこのぬいぐるみの写真を撮り、
送信してみた。
返信が来る。
「黄色いふさふさしたものの絵が届きました」
「それはひよこのぬいぐるみです」
送信する。
「ひよこのぬいぐるみとは何ですか?」
返信が来て、困る。
ひよこがわからないのか。
ぬいぐるみがわからないのか。
「ひよこというのは、鶏の子どものことです。ぬいぐるみとは、布に詰め物をしたものです」
送信する。
「あの……、これは布なのですか?毛がふさふさとはえているのですが、毛皮ではないのですか?」
返信が来る。
これ本当に、異世界の人なんじゃ……。
しかし、この布のことをどう説明しよう。
僕はトマトちゃんにメッセージのスクショを送る。
5分後、トマトちゃんから返信が来た。
「詳しい技術はわからないが、特殊な加工を施した布だと答えたら」
僕はトマトちゃんのメッセージを参考に、
送る。
「こちらの世界と比べ、文化レベルが数段上ということがわかりました」
とメッセージが来た。
僕はそうなのか……
と思い、どう答えたらいいかわからなくなった。
そして数分後。
「ご相談したいことがあります」
そうメッセージが来た。
僕は、
「どうぞ。力になれることがあるなら、お助けします」
と気付けばメッセージを返信していた。
なぜ。
そんなメッセージを送ったのかわからない。
ただ気が付けば、返信していたのだった。




