第37話 再会と復讐
俺とレニとメズィは、ファルクエンの城にやってきた。
玉座の間へと続く大扉の前で、俺は息を呑む。
(この先にハンニグがいる……)
村での虐殺が脳裏を過ぎり、強烈な殺意が沸き上がる。
それを見たレニが俺に声をかけてきた。
「アルフ君、あたし達は戦果報告に来たんだけど」
「……わかってます」
「どう見ても別の用件があるようにしか感じられないね」
レニは何もかも見透かしたような顔で述べる。
すると、メズィが俺の代わりに反論した。
「別に構わねえだろ。下剋上なんざ日常だろ」
「このタイミングで実行されると、あたしも巻き込まれるんだけど……」
「さっさとハンニグをぶっ殺せば大出世じゃねぇか! 巻き込まれどころか感謝してほしいくらいだがね。なあ、アルフ!」
メズィはすっかり乗り気だった。
俺はレニの目をまっすぐと見つめて告げる。
「もし本当に迷惑なら、ここですぐ引き返してください。お願いします」
「…………」
レニは感情の読めない顔で沈黙する。
やがて彼女は嘆息してから言った。
「……グイルとキサラは別動隊だ。二人には機を見て暴れるよう命じてある。あたし達はハンニグ抹殺に集中しよう」
「俺の目的を察した上で、事前に作戦を組んでたんですか」
「まあね。君が怖気づくようなら中断するつもりだったけど」
「すみません、ありがとうございます」
「気にしないで。あたしもそういう時期だとは思ってたし」
レニはあっさりと語る。
メズィは俺と肩を組みながら述べた。
「あとはこの戦力でファルクエンの王に勝てるかどうかだな」
「勝算は高いよ。アルフ君がいるからね」
レニは少し微笑んでから、玉座の間の扉を開ける。
そこには国の重鎮である者達と、ファルクエンの王ハンニグがいた。
玉座に腰かけるハンニグは眼帯を着けている。
隻眼になったのは、俺の幼馴染みカエナの祝福で負った傷が原因だろう。
ハンニグはすべて悟ったような表情で口を開く。
「作戦会議は済んだか。待ちくたびれたぞ、小僧」
「俺を憶えているのか」
「無論だ」
ハンニグは眼帯を指で掻く。
俺は深呼吸を挟んでから、ゆっくりと言う。
「復讐したければ這い上がってこい……お前はそう言った。だからここまでやってきた」
「そうか。では我を殺すか」
「――ああ、ここで死ね」
俺はハンニグに飛びかかった。
◆
翌日の朝。
俺は崩壊した城で倒れていた。
そばにはハンニグの死体が転がっている。
四肢が引き裂かれ、胴体には無数の穴が開き、頭部は捩じ切れていた。
ハンニグとの戦いは熾烈なものだった。
奴の配下から祝福を奪いつつ対抗しなければ、とても敵わなかったと思う。
こうして勝利できたのは奇跡に近かった。
瓦礫の隙間から現れたメズィが喝采を上げる。
「やったな! 下剋上成功だ!」
遠くから歩いてくるのは血だらけのレニだ。
彼女も俺を褒めたたえてくれる。
「おめでとう、君がファルクエンの新たな王だよ」
「レニさんはやらないんですか?」
「祝福持ちが王になるべきだよ。他国への示しも付くからね」
「そうだそうだ! 遠慮せず王を名乗っていけよ!」
メズィが俺の背中を叩いて勧めてくる。
一方、レニは静かに問いかけてきた。
「これから君は何をしたい? あたし達は臣下として支えるよ」
「……この大陸を制覇して、国を一つにまとめ上げます」
「国家統一か! 最高の目標だな!」
「良いね。応援するよ」
二度と俺みたいな悲劇を味わう者を出さないため。
この最低な戦争を終わらせるため、俺は新たな目標を掲げてファルクエンの王になったのであった。




