第36話 戦果報告
数日後、アーデ領から帰還した俺達は団長のレニに報告を行った。
それを聞いたレニはきょとんとした顔で固まる。
彼女は静かにため息を吐くと、天井を眺めてからこっちを見た。
「……えっと、ちょっと待ってね。情報が多すぎて驚いちゃった。改めて説明してくれるかな」
促されたグイルとキサラが順番に述べる。
「アーデ領の侵略は成功し、占領に十分な損害を与えた」
「でも将軍バヌゥカは死にましたっ!」
「そして俺は鈍色の獅子の団員となった」
なぜか自慢げな様子のメズィが前に進み出る。
レニはゆっくりと目を細めた。
「あなたがアーデの王……」
「そっちこそ噂は聞いてるぜ、団長さんよ」
「"黒煙"のメズィに知ってもらえていたとは光栄だね」
「謙遜すんなって。"祝福殺し"のレニと言えば、どこの国でも通用する大英雄だろうが。魔術だけで祝福持ちを殺しまくる傭兵なんざ、あんたくらいしかいねえよ」
初対面のようだが、どうやらお互いのことは認知していたらしい。
やり取りを聞いていた俺は、隣のグイルにこっそりと訊く。
「レニさんって有名なんですか?」
「ああ、かなりな」
グイルは当然のように頷いた。
一方、メズィが髪を撫でつけて整えながらレニに確認する。
「それで、俺は鈍色の傭兵団に入れてもらえるのか?」
「もちろん歓迎するよ」
「よし! こんな面白い奴と出会えたんだ。一緒に戦いたかったんだよな!」
メズィは嬉しそうに俺の肩に腕を回してきた。
予想外の行動に俺は驚く。
「えっ、俺ですか!?」
「当然だろうが! 何個も祝福持ってる人間なんて聞いたことねえよ! こいつは間違いなく王の器だ!」
「王の器……」
冗談で言っているような雰囲気ではない。
まさかそんな評価をされているとは。
少し前までただの村人だったというのに、随分と出世したものである。
俺が照れていると、レニがグイルに尋ねた。
「メズィがここにいるけど、アーデの現状はどうなっているのかな」
「領内は大混乱だ。俺が解き放った数万体の死体も暴れ続けている。当分は指揮系統が麻痺した状態だろう」
「うん、いいね。ファルクエン側も将軍が戦死したけど、向こうの被害に比べれば軽微だね」
レニが俺の前まで歩み寄ってきた。
彼女は微笑を浮かべて言う。
「今回の戦果をハンニグに報告するよ。アルフ君、同行してくれるかな」




