第22話 新たな仕事
「さて、アルフ君。大量の祝福を奪ったことで、君はかなり強くなった。そこらの兵士なら力押しで圧倒できるだろうし、祝福持ちだろうとたぶん蹴散らせる。だけど不十分だ」
「はい、分かってます。俺はまだあまりにも未熟です。祝福を使いこなせないといけない」
「その通り。幅広い戦闘手段は唯一無二の強みだけど、それに振り回されたら意味がないからね」
レニは何度か頷きつつ、俺の全身を観察する。
彼女の眼差しには若干の憐憫が込められていた。
「君の場合……うん、まあそうだね。とにかく祝福の扱いに慣れるのが最優先かな。一般的な鍛錬はやらなくていいよ。その辺りの才能はなさそうだし、君」
「す、すみません……」
「謝ることじゃないよ。方針がはっきりしているのは良いことさ。苦手なことは諦めて、得意分野を伸ばしていこう。そんなわけでさっそく任務だよ」
レニが真新しい手書きの地図を渡してくる。
ファルクエンとアーデの国境付近に大きな丸印が付けられていた。
「アルフ君にはファルクエン軍の兵士として、アーデ侵略作戦に加わってほしい」
「またアーデですか……」
「嫌だった?」
「いえ、大丈夫です。元から愛着なんてないですし、砦で何人も殺しました。今回もやり切ってみせますよ」
俺は自信満々に応じる。
強がりなどではなく、本当に躊躇いはなかった。
それを察したらしきレニは、俺の肩を叩いて忠告する。
「今回、君は鈍色の獅子の団員として参戦する。あたしの顔に泥を塗るような真似はやめてね」
「任せてください。たくさんの戦果を土産にしますよ」
「うん、楽しみにしてる」
微笑んだレニは机の上に積み上がった書類を動かし始めた。
作業を再開するようだ。
億劫そうに羽ペンを回しつつ、レニは俺に手を振る。
「現場までは他の団員が連れて行ってくれるから、細かいことは彼らに聞いて」
「わかりました。集合の日時と場所はどうなってますか?」
「明日の正午、傭兵酒場だね。それまでしっかり寝てもいいよ」
「ありがとうございます、了解です」
俺は一礼してから執務室を出ると、そのまま私室へと向かった。
ベッドに寝転がり、天井を眺めながら考える。
(アーデ侵略作戦……ハンニグのために戦うのか。複雑だな)
もちろん必要な行動であるのは理解している。
鈍色の獅子はいつか国盗りを決行する。
傭兵団として名を挙げれば、そのための戦力や物資、地位や権力が手に入る。
国盗りの準備を進めるため、俺は忠実に任務をこなす。
巡ってくるであろう復讐の機会のためにも、目の前の利害にこだわるべきではないだろう。




