第21話 加速する成長
レニは酒場の二階の執務室で書類の山に囲まれていた。
壮絶な光景に俺は戸惑う。
「えっと、大丈夫ですか」
「大丈夫じゃないね。それより君の方はどうだったかな」
「五つの祝福が手に入りました」
「いいじゃん。人間が祝福を持っている確率を考えたら、かなりの収穫だねぇ。兵士の死体が多かったからかな」
祝福を授かるのはおよそ千人に一人とされている。
今回なら新しい祝福が一つ増えれば十分だろう。
それなのに五つも取得できたのだから、かなり運が良かったと言える。
「簒奪の祝福について、細かい発動条件は分かったの?」
「古い死体からも祝福は得られましたし、小さな骨片からも取得できました。とにかく祝福が宿る死体に触ればいいみたいです」
「気付いていないだけで取得に失敗している可能性もあるけどね。まあ、そこは確認できないし、取得数を考えるとなさそうかなぁ」
レニは顎を撫でつつ考察する。
祝福の効果や条件は人によって様々だ。
明確な法則があるわけでもないため、使い込まないと仕様が分からなかったりする。
簒奪の祝福は特殊な部類なので、正確な内容を知るにはもっと検証が必要だった。
書類を置いたレニは立ち上がって微笑む。
「よし、新しい祝福を見せてよ」
「了解です。ちなみに手に入れた祝福は毒、無音、悪食、遠視、不休です」
「ふーん。もう使ってみたの?」
「はい。名称もグイルさんに付けてもらいました」
「なるほどね」
俺はレニの前で順番に祝福を披露していく。
毒の祝福は、体液を毒にする。
血や唾液が紫色になり、少しべとべとしたものに変化する。
毒の効力はまだしっかり調べていないが、レニの見立てによると人間を麻痺させるくらいはできそうだという。
無音の祝福は、俺の発するあらゆる音を消すことができる。
戦場では大して役に立たないものの、隠密行動には最適だろう。
レニは「優秀な暗殺者になれるねぇ」と褒めてくれた。
悪食の祝福は、どれだけ不味い食べ物でも美味しく食べることができる。
腐った物も問題ない。
どんな時でも美味い物が食べられるのは、生存率にも直結する。
粗末な食事になりがちな傭兵にとって非常に価値の高い祝福だった。
遠視は目が良くなる祝福だ。
遠くの小さなものでも詳細に視認できる。
弓術で役立つが、俺は弓矢の扱いが下手である。
まずは狙い通りに撃つ練習から始めないといけない。
「不休の祝福は疲れが消えました」
「長期戦に向いているね。再生の祝福と合わせたら無限に戦えるんじゃない?」
「そ、そこまでやれるか分かりませんけど、相性は良さそうですね」
というわけで以上が新しい祝福である。
いずれも俺自身の強さが劇的に変わる代物ではない。
しかし、これまでの祝福と組み合わせることで性能が大きく上がるだろう。




