第11話 祝福の確証
二日後、遠くに石造りの砦が見えてきた。
茂みに隠れた俺達は、レニから最終説明を受ける。
「とりあえず適当に暴れてきて。いい感じのところであたしが参戦して砦を奪還するから。質問はある?」
「敵の数は?」
手を挙げた傭兵の一人が質問する。
レニは面倒くさそうに応じた。
「えっ、わかんない。いっぱいいるんじゃない?」
「祝福持ちは何人いるんだ?」
「知らなーい。この砦の戦略的な価値を考えたら……たぶん三人くらい?」
「いい加減すぎるだろうが……! ふざけんじゃねえよ!」
質問していた傭兵が怒鳴るも、レニは平然と肩をすくめている。
最初から真面目に答えるつもりがないようだった。
(やっぱり俺達って捨て駒なんだ)
砦の奪還を命じられているが、実際の動きは囮そのものだ。
敵兵の注意を引くのが役目であり、肝心の仕事はレニが請け負っているのだろう。
つまり俺達がどうなろうと知ったことじゃないってわけである。
少しでも敵に損害を与えられたらそれでいいのだと思う。
「あっ、そうそう。アーデ軍の隊長は不死身のセイクだからね。あいつ、再生の祝福持ちだからさ。どれだけ負傷しても全力で棍棒を振り回してくるよ。厄介だよねぇ」
「セイク!? セイクがいるのか!」
「くそ、終わった……」
「ちくしょう、死刑宣告じゃねえかよ」
セイクという人間は知らないが、傭兵達の間では有名らしい。
ほぼ全員が渋い顔で落ち込んでいる。
不死身の異名、そして再生の祝福持ちという情報だけで、どれほど難敵なのかは理解できた。
絶望に染まった空気を見かねてか、レニは思い出したように付け加える。
「セイクを殺したら特別報酬もあげちゃうよ。それじゃ、頑張ってね」
手を振るレニはさっさと離れていった。
どこかに潜伏し、頃合いを見て奪還に動くのだろう。
(特別報酬は……たぶん嘘だな。俺達のやる気を上げるためだけの方便に違いない)
期待されていないという事実にため息が出る。
その間に他の傭兵達が顔を見合わせて、いきなり雄叫びを上げて走り出した。
彼らは一直線に砦を目指す。
異様な加速で飛び出した数人は、身体強化の刻印を彫っているのだろう。
俺は慌てて彼らの後を追いかけつつ、この状況に不安を感じていた。
(こんな堂々としてていいのかな……いや、開けた場所だし隠密行動も難しいか)
案の定、砦から無数の矢が放たれた。
数十本の矢は、加速していた先頭集団に直撃する。
断末魔の叫びを上げる傭兵達を見て、俺は思わず言った。
「やっぱ駄目じゃねえかっ!」
そうこうしている間に第二陣の矢が飛んでくる。
俺は全身に力を込めた。
皮膚がパキパキと音を立てて結晶のような質感へと変わり、降り注ぐ矢を弾いてみせた。




