第10話 使い捨ての命
仕事を聞いた俺は、聞き慣れた言葉を復唱する。
「アーデ軍か……」
「何か言いたそうだね。アーデに友達でもいるの?」
「故郷なんです。まあ、ハンニグに滅ぼされましたけど」
「よくあることだね。弱肉強食の世界だもん」
憎悪を滲ませた俺の過去を、レニは興味なさげに流す。
確かに彼女の言う通りだ。
戦争だらけのこの世界では珍しくもない悲劇である。
力を持つ者が支配し、持たざる者は虐げられる。
不条理に潰されたくなければ強くなるしかないのだった。
レニが俺の目を凝視しながら問いかけてくる。
「故郷の軍を攻撃するのは気が引ける?」
「でも断ったら殺すんですよね」
「うん。そりゃね」
「じゃあやりますよ。別に愛国心とかはないですし」
俺はアーデの出身だが、村の外で暮らした経験がない。
故郷の村が人生のすべてだった。
これから敵対すると言われても、別に躊躇いは感じない。
自分が死なないために殺すくらいの心構えは既にできていた。
俺の気持ちを察したのかレニは満足そうに頷く。
彼女は他の傭兵達を見回して言った。
「というわけで砦の奪還をやってもらうよ。君達は借金やら犯罪やらの問題行動でここにいるから拒否権はない。いいね?」
誰も返事をしないが、反抗する者もいない。
レニの恐ろしさを知っているのだ。
無駄な抵抗は意味がないと知っているのだろう。
「君達の首輪だけど、三日以内に解除しないと呪い殺されるから注意してね。鍵はあたしだけが持ってるから、逃げたら大変なことになるよ。そんな馬鹿なことをする人はいないと思うけどさ、一応の警告ね」
思わぬ情報に何人かが息を呑んだ。
俺も反射的に首輪に触れる。
怪力の祝福があれば無理やり外せるかもしれないが、呪いが発動するかもしれない。
下手なことはすべきではないだろう。
大多数の傭兵は、首輪の呪いを知っても反応が薄かった。
俺が気絶している間に説明があったのか、ここまで来た時点で覚悟を決めているのだろう。
(分かっていたけど、酷い扱いだよなぁ……)
基本的に傭兵の命は使い捨てである。
そこらの盗賊と区別もつかないような扱いで、実際に兼任している者も多いと聞く。
身分だって最底辺だから、安い金で命がけの仕事を押し付けられるのだ。
正規の兵士や騎士に志願する者が後を絶たないのも納得であった。




