第百九十七話 はじめての冒険②
私とゴーレムちゃん(仮)たちは走る。
声が……する。魂が呼んでいる? 1つだけではない。たくさんの。
王立騎士団の人たちばかりでない。たくさんの魂がダンジョンのボスに捕らわれているのだ。
大きな部屋の前に私たちはたどり着いた。
扉には鍵がかかっている。ベキッ。ゴーレムちゃん(仮)が扉を破る。
見上げるほど大きな機械が部屋の真ん中に置いてあった。
ダンジョンのボスが出したゴーレムよりも大きい。いくつものボタンや画面がくっついている。
なんの機械なんだろう。私ではさっぱり理解できない。
でも、感じる。
この中に魂がある。
それもたくさん。数えきれないくらい。離れていて感じるほどに。
魂の存在を感じられるなんて、自分でもはじめて知った。
スキルを使おうとするたびに新しい自分を発見する気がする。
「ゴーレムちゃん(仮)たち! あの機械を壊してみて!」
あの大きな機械が魂を捕まえているに違いない。
だったら壊せば魂が解放されるかも。
ガンッ!! ガンッ!!
ゴーレムちゃん(仮)たちが大きな機械を殴るが、壊れる気配はぜんぜんない。
その辺にあった道具を使っても同じ。
なんて頑丈な機械なんだろう。
他の機械とはまるで違う。ご主人様のスキルで簡単に壊れていた機械とは。
ガンッ!! ガンッ!!
結構な音がするのに。
これ以上はやめさせる。大きな音を立て続けたら敵のゴーレムが寄ってくるかもしれない。
簡単にダンジョンのボスが私たちを行かせた理由を理解する。
物理的に硬いから、壊せない。頑丈さに絶対の自信を持っているのだ。
たぶん他のスキルにも耐性がある。誰にもこの機械を壊せないから、私たちを無視して行かせたのだ。
……どうしようか。
私には打つ手が残っているだろうか。
この機械の中に魂がある。
でも取り出せない。私たちの持つ武力はゴーレムちゃん(仮)しかいない。
機械を破壊することなどできそうにない。
普通の金属ならば、魂は通れるはず。何か特別な金属でこの機械はできているのかもしれない。
こんな状況、ご主人様も予想していなかったに違いない。
私たちは魂をあつかえても、機械は壊せない。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
今さらご主人様の元には戻れない。
何もせずに戻ったら、ご主人様は私に失望するだろう。絶対に嫌だ。失望されたくはない。
こうしている間にもご主人様は苦戦しているかもしれない。早く戻らくちゃ。
気ばかりあせるけど動けない。ご主人様のように良い考えが思い浮かばない。
ここが。
私の限界なのかな。
……いや、待って。
なにも私のスキルはゴーレムだけに使えるものじゃない。
人形だけでもない。魂のない物質全てにスキルは使える。
もしかしたら。
この機械自体にも魂を入れることができるかもしれない。
私は一番傷ついているゴーレムちゃん(仮)に語りかける。
「あなたの魂をこの機械に移したいのだけど、いい?」
コクリとゴーレムちゃん(仮)はうなずく。
今まで一度たりとも私の提案を拒否することはなく、今回も受け入れてくれる。
ゴーレムちゃん(仮)は私自身。考えを読んでくれているのだ。
ゴーレムちゃん(仮)だけはずっと私の味方だ。
死ぬ瞬間まで一緒にいると確信できる。
触った手にゴーレムちゃん(仮)の魂が流れ込む。
手が燃えるような感覚。スキルが発動する時の感覚だ。
どうやって魂を移動するのか。はじめから知っていた。本能のようなもの。
魂の離れたゴーレムの体は崩れ落ちる。
大きな機械に触り、受け取った魂を機械に移す。
本当にうまくいったのかな。はじめてやることなので自信がない。
「ねぇ、うまくいった? 動ける?」
私が聞くと、機械の表面に光が灯る。
よかった。反応してくれる。確かに機械の中にゴーレムちゃん(仮)の魂が存在している。
「じゃあ、中にある魂を解放してくれる?」
私の声に応えて、大きく機械が動き出す。
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