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第21話 セフェク ⑩

 —— KuRuRi(クルリ)


 セフェクの前に現れた無花果いちじくの実は、クルリと回ると、不思議なことに目や鼻や口があり、顔の()()と同じものを形どっている。


「トト …… か? お前何やったんだ? この状況で笑いとってる場合じゃねぇだろ …… 」


「えっと …… 笑い取りに来たわけじゃないです …… 元の世界でセフェク様とベゼブを繋いだ際に、私はモードもタナトスを限界値まで術式に組み込み、まさに絶命寸前でした。その生き絶える、事切れる瞬間に、以前セフェク様が無花果いちじくの実を()()()()()事を思い出しました」


「ああ、ベゼブの目の前で潰してやったな。あの時のヤツの絶望に満ちた顔はなかなか楽しめただろ?」


「はい、潰された後、すぐに元に戻されましたよね?」


「ああ、ヤツと戦力は拮抗すると読んでいたからな。いずれ瀕死になれば、そいつで一発逆転。再び絶望に満ち歪んだベゼブの顔を拝んでやろうとな」


「はい、ですが私は絶命の瞬間に、あの際限のない豊かな濃縮された気(ジャム)であれば、もしかすると暫くはエネルギーは供給され続け、()()()()()()()()を維持可能ではないかと推測しました」


「はーっは! お前に『くたばる前にやれる事やり切れ』とは言ったが、まさかな!」


「はい、自分でもセフェク様とベゼブとを繋いだ所で私の役目は"やり切った"と思い、死も受け入れておりました。ですが、更に()()()にはまだやれる事がありました。その瞬間まではそんな事は考えた事すらありませんでしたが、どうせ間も無く果てるのであれば、その考えに賭けてみようと」


「万策尽きても、やれる事ってぇのは尽きねぇもんだな」


「楽しめるまで進めと教わりましたからね」


「はっはー! で、お前、オレが瀕死になったらどうするつもりだった?」


「そのまま何も言わずに私を食べて頂くつもりでしたよ」


「はーっ! 最高に面白ぇ! 生き長らえてなお死ぬ覚悟かよ!」


「セフェク様をお守りするのが私の役目ですから」


天晴あっぱれだな! で、今瀕死じゃねぇか? オレはよ」


「この体? というんですかね? この実? に入って感じているのですが、もの凄いんですよ、エネルギーが。分かります? やれる事あるんじゃないですか?」


「契約も生きてんのか?!」


「思ったら"やれ"ですよね?」


「はっ! そうだな! |Modeモード Secondセカンド!」


 —— VuN(ヴン)


 三層に重なる美しい術式が目の前に浮かび上がる。


「うおぉぉぉ! 湧き出てきやがる! すげぇぞ!」


「分かります! まだまだ際限ないですよこの体(実)は!」


 術式から溢れる光がかたど()()は、銃と呼ぶには大き過ぎ、大砲と呼ぶには長過ぎる。背中には両翼が出現し、光背こうはいのようなものが浮かび上がっている。神々《こうごう》しさにも似た美しいフォルムを、セフェクは全身にまとっていた。


「この空間上に過去存在していたものが縦軸で意識に流れ込んでくる! これなら見つけられるぞ! このまま出口を見つけやがれぇーっ!」


 セフェクの思考の中では、空間が縦に何層にも輪切りにされたようにイメージされ、いつ、どこに、何が、存在したか、複雑なイメージが不思議と瞬時に把握出来る。


 —— Pi(ピッ)


「見つけたっ! 戻せぇぇぇーっ!」


 セフェクの全身を纏う()()から、超光速な光の筋が発射された。それは少し先の所で弾け、光の中から扉が現れた。同時にセフェクが纏う()()も光と消えた。


「あそこだ! トト、行くぞ!」


 —— MuGyu(ムギュ)


 セフェクはトトを鷲掴みにすると、扉の方へ手を伸ばし、空間を進むイメージを意識する。周りが超高速で動いている為、体が進んでいる実感はないが、扉はセフェクへと近づいてきた。


 目前まで近づくと扉は開き、中は()()()()()()()で溢れている。


「行くしかねぇぇー!!!」


「ちょ、セフェク様、その …… 体? え?」

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