日常
ここは高知県の高知市の端っこにある高等学園都市。いや、都市というか市というか村というか集落というか――。
呪学部がここにしかないという理由もあるが、中には厭々通っている生徒もいる。
「治癒への偏見と優遇されない逆境について」
ホワイトボードにキュッキュッと書かれた場所は、運動場の端っこにある、小さな掘っ立て小屋のような場所であった。
電気も通って織らず、昼なお暗い。
「みんなぁ、どお思う? なんか、治癒って偏見受けてない?」
ブレザーを着た女学生が振り返って問いかける。
「誰に話しゆがぁや、光子。俺とお前以外、部員、居らんやないか」
学ランを着た男が、パイプ椅子にふて腐れたように座っている。
光子は、「等々力センパイこそ頑張って下さいよぉ! このままじゃ廃部じゃないですかぁ!」
「落ち着け、光子。こんな巫山戯た名前の学校に居ること自体、おかしいがやないか」
この学校の名前は『私立よさこい龍馬よっちょれ高等学園都市~魔法もあるぜよ~』といったものだった。地元民は面倒くさいのか『龍馬よっちょれ』と呼んでいる。
部長――等々力降魔二年生は、部員である吉本光子一年生に、淡々と喋り続けた。
「考えてみぃ。今は遠隔からも手術が出来るし、治癒魔法となったら、こっちも大ダメージを喰らう。リスクから考えてみたら、西洋医術に任せて置いたほうがよっぽどえい」
「しかしですね、等々力部長。だからといって、この常夏高知、エアコンの一台も設置されず、唯一の利点は日陰というのみ。しかし、その利点も今や、蚊の巣窟と化しております」
等々力は自分の頬をぴしゃりとはたき、蚊を一匹潰した。もう夏か。
「だが、自分の言ったことを考えてみろ、光子。お前は治癒について考えてもない」
ぐっ、と光子の言葉が詰まる。言い返せない模様だ。
「まあ、えいやないか、蚊に噛まれても、うちには治癒魔法がある。治したらえいだけや」
「そんなことだから、治癒の地位が墜ちるんですよ!」
光子も自分の太股をぴしゃりと叩いた。
そんなとき、部室の扉がいきなり開いた。
「ど、どちら様で――」
光子が困惑している中、セーラー服を来た女生徒が等々力を見ている。
「呪術部の等々力さんは貴方ですか?」
「そやけど……」
「貴方を生徒会長候補に立候補させます!」
名乗りもしない女生徒は、いきなり大胆なことを言い放った。




