① 出逢い
「セーラー服と雪女」シリーズの第2部の⑦です。
この物語はフィクションです。
そしてSFラブストーリーです。
本作品に登場するいかなる人物も場所も
現実のソレとは一切関わりございません。
池内はその日、朝から校長に呼ばれ、応接室に行った。そこには、他に教頭と教務主任、学年主任、そして一人の少女が待っていた。
その少女はまるで、教会の修道服のような、グレーの制服を着ていた。フードの陰から、チラリと金髪が見える。帰国子女か?
「まあ、座りたまえ」と、校長に座席を勧められ、応接セットの5つ在る椅子のうち、学年主任の隣、つまり彼女の正面に座った。
丁度そのタイミングで、部屋のドアがノックされ、黄色いワンピースを着た、若い女性が入って来た。薄化粧に、髪はボブカット。この少女の保護者にしては、若すぎるな。池内は疑問に思った。
「仕事の都合で、到着が遅れてしまって、申し訳ありません。はじめまして。私がこの子の後見人……保護者の、村田京子です」
彼女は開口一番に、そんな挨拶をした。
始業式が終わってから、はや一週間。こんなタイミングでの転入生は、異例の事だった。それに池内は、二回目の教員採用試験に受かってから、やっと一年目の、ほぼ新米の数学教師だった。
それまで二年間の常勤講師の経験が有るとは言え、いきなり、たった一人で三年生の担任を持たされた上に、変なタイミングで帰国子女を任されるのは、気が重かった。
「……ほら、貴女もご挨拶なさい」
保護者の女性に催促された形で、その少女は、グレーのフードを下げて顔を見せた。青い眼に金髪、そして、むしろピンク色に近い程の、透き通るような白い肌。やはり思った通り帰国子女だ。異文化交流で苦労しそうな気配がした。
「はじめまして。私はジャンヌ真田と申します。母は日本人、父はフランス人です。日本語は話せますが、書くのはまだ苦手です。どうぞよろしくお願い致します」
彼女はそう言うと、その場で立ち上がり、ペコリとお辞儀をした。
今の挨拶の様子だけで、家庭環境が、薄っすら見える。
どうやら、育ちは良さそうだった。
まずはひと安心か。
池内の勤務する中学校は、名護屋市港区の西の端に立地しており、川向うはもう、蟹江市だ。そのせいで、保護者の多くは工場に務めるブルーカラー。正直に言って、裕福な家庭は少ない。日中家に保護者が不在の、団地住まいの子どもが多く、校風は荒れ勝ちであった。
だから池内は、逆に心配になった。
こんな上品そうな女の子、我が校でやっていけるのだろうか?
そんな彼の気持ちを他所に、転入手続きは粛々と進められ、やがて彼女を連れて、3年B組の教室まで案内する事になったのである。




