初めて戦った時のお話
「さーて、とりあえず喧嘩ふっかけて街から離れたのはいいんだけど」
誠がいるのは林の中だ。あのまま戦えば周りに被害が出ると思い、一旦逃げ出したのだ。
「エビルさんやーい、あんた何が出来んの?」
「我が扱うのは火と高熱だ。それと今は大技を使うことは出来ぬ」
「組み立て直したばかりだから?」
「それもある」
ゴッ! と木々が薙ぎ払われた。危険を感じたので一旦そこから離れる。
「我らは本来自身の形を持っていなかった。しかしある時何があったのか突然我らに形が宿った」
「そういうのは後でいい! チュートリアル中に時が止まることはないから、要点だけを言え!」
「大技を振るうだけの力を取り戻せていない。人で言うと足を怪我してるのに走ろうとしているのに近いだろう」
「なるほど分かりやすい絶望ありがとう!」
フッと影が差した。上を見ると巨大な木が落ちてきていた
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
横に思いっきり跳ぶ。ギリギリのタイミングで避け、さっきまで誠がいた場所に巨木がめり込んだ。
「じゃあ今何が出来る!? 爆発とかは出来るぽいっけど!」
「あの程度なら後数回。炎を生み出すことも出来るが千度程度の炎しか無理だな」
「千度とかガスバーナーでも出せるからな!?」
「数秒程度なら三千度の熱を発せられるが」
「変わらねえよ!? くそ、まじでどうす……」
そこで突然誠は足を止め、辺りを見渡す。
「どうした?」
「エルシさんは? あの人……人? はかなりの規模の竜巻を扱ってた。あいつならなんとか……」
「無理だ。それは足を怪我した者が無理に全力疾走した結果の物だ。何度もやるのは無理だ」
「ちくしょうめ。どうすりゃいいのかね……」
悩む時間は余りない。脅威はもうそこまで迫っているのだ。
「……ん?」
そこで誠は、ある物を見つけた。
武士、守近猛は林の中を走り抜けていた。
(依代は何処かに隠れたか。罠を仕掛けるつもりか)
自身の唯一の武器である刀を、いつでも引き抜けるように構えながら走る。
(何が仕掛けられるかなど分からぬが、なんにせよ油断は出来ん)
「……む」
そこで猛は視界に違和感を感じた。
捻じ曲がっているのだ。木々が妙に長細かったり太かったりと。
同時に、暑さを感じた。さっきまでとは全然違う、砂漠のような暑さだ。
「蜃気楼か」
猛は刀を構え、少しだけ刀身を抜き出す。
「一刃百刀、乱花」
一振り、それだけで百回刀を振ったかのような現象が起こり、木々が切り倒される。
それと同時に百の刀によって空気がかき乱され、熱が均等になり、正常な景色へと戻っていく。
「…………ふむ」
猛は若干温度が高い方へと走り出す。
「やべ!」
遠く人に依代の少年が見えた。こちらを見つけたのか全力で逃げ出している。
「一刃飛刀」
「もう名前で把握しました!」
「空刄」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
居合いでなぞった空間に白い刃に似た物が現れ、依代へと飛んでいきその身体を半分にしようとする。
が、依代は途中でしゃがみ、斬撃を回避した。猛は足を止めず、そのまましゃがんでいる依代の背中を蹴飛ばす。
立ち上がる前に依代の足を踏みつけ、刀に手をかける。
「言い残すことは? 家族がいるのであれば伝えてやろう」
「うわーお、紳士紳士。言い残すことねえ……」
依代は少し考え、
「だったらさ、エビル……そこらに転がってる剣に伝えてくれない?」
「家族ではなく、か。何と伝えればよい?」
「うーんとだね」
依代の顔は見えない。ただなんとなく、笑っているような気がした。
「鴨がかかった。燃やせ」
轟ッ!! と突如背後から爆炎が生じ、猛を吹き飛ばした。
「がっ!?」
吹き飛ばされる中見えたのは、依代が炎の中平然と立ち上がる所だった。耐熱の加護でも受けているのかもしれない。
それよりも問題なのはこっちだ。燃えているのだ。服だけでなく、全身が。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああ!!」
ゴロゴロと地面を転がり回る。しかしその程度では火は消えない。
と、そこである物が見えた。湖だ。
猛は迷わず湖に飛び込む。火傷した傷に激痛が走るが焼死するよりはマシだ。
「なあ、科学がどうとか言ってた侍さんよぉ」
依代の声が聞こえてきた。水中にいるのに、妙にはっきりと。
湖の上で何かが光り、光りが落ちてきた。
「水蒸気爆発、わざわざ説明する必要ないよな?」
音が消え、視界が白く染まる。
猛が何かを感じ取れたのは、そこまでだった。




