胸の大きさのお話
朝である。窓からの光が顔面に当たって目が覚めた。
「…………ふんっ!」
眠いのを振り払うように誠は勢いよく起き上がる。ベッドから這い出て軽く身体を動かすが、若干眠気が残っている。
「……顔洗いに行こ」
ベッドとクローゼットやタンスくらいしかない部屋から出る。
誠達が泊まった所はファニーが幾つか持ってる中の一つのホテルらしい。見た目は誠と同じくらいの歳のはずなのだがどうしてホテルのオーナーやってるんだ? と誠は疑問に思うが、気にしたら負けな気がするので聞かないでおく。
因みに部屋が豪華じゃないのは誠が全力で遠慮したからだったりする。豪華な部屋をちらっと見たのだが、あの中では落ち着いて寝れないと判断した結果だ。
顔を冷たい水で洗って頭を覚醒させる。その時に鏡に写った自分の顔、正確には左眼が見えた。
「あれ?」
なんだか若干色が変わっていた。赤に黄色が混ぜられ、オレンジ色に変わっている、気がする。
「…………気のせい、かなぁ?」
眼帯を付け直す。何気に剣で開けたような穴が出来てるが、この程度なら気にするほどではないだろう。
「あ、そうだ朝飯」
朝食をどうすればいいのかを聞いてなかった誠は、ファニー達のいる最上階に向かう。
因みにこのホテルは二十階まであり、エレベーターなんて便利な物はない。
「づ、づいだ……」
誠はガクガクに震える脚を押さえつける。二十階はVIP用だからなのかは知らないが階段のすぐそこに部屋へ入る扉があった。
「えーと、インターフォンはどれだ?」
もちろんそんな物はない。だがノックだとホテルの大きさを考えると端にいたら絶対届かない。
「どうすっかなー?」
大声で呼ぶのも他の人の迷惑だしなーと考えていると、声が聞こえた。
「?」
声は扉の向こうから聞こえてくる。扉に耳を当ててみると、
「誰か来てー!」
「っ!?」
扉を蹴破り声のする方向へ走る。ホテル一階分の部屋なので走ってもすぐに辿り着けない。
(やっばい! 忍者放置してた!)
高そうな家具が配置された部屋を走りながらどうするか考える。
(剣、エビルは……まだ駄目だったな。また体当たりでもするしかねえじゃん!)
「誰かー!」
そうこうしてると、声が出てる部屋の前に来た。
(こうなりゃ臨機応変! 要するに何も考えてないけどとりあえず突撃!!)
「どおおおおおおおお!!」
叫び声と共に、誠は扉を勢い良く開ける。
そこにはエルシの胸を後ろから鷲掴みにするマーチェの姿があった。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
呆然とする誠を見つけたマーチェは目を輝かせてこんなことを言う。
「あ、マコトさん! エルシさんの胸! 手でちょうど掴み取れるくらいの大きさですよ! 高得点ですよ!!」
「すまん、出直していいか?」
なんかもう色々なものが一気に冷めた誠を見て、マーチェは不思議そうな顔をする(鷲掴みにしたまま)。
「ふむ? 男ならもう少し反応してもいいと思うんですが」
「心の底からどうでもいいです。後いい加減その手を放したらどうですかね?」
「…………」
ようやく解放されたエルシは何故かそのまま誠の後ろに隠れるようにしてマーチェから距離を取った。
「いやエルシさんやい? 俺に頼まれてもどうにもなりまいだだだだ!? 服と一緒に肉掴んであだぁ!?」
「…………」
エルシに服を掴み直してもらう。服を掴む手からは、万物を握り潰しそうな握力を感じ取れた。
「で、何をしてたんです?」
「えーとですね。ファニーの可愛さを堪能しようとしたんですが何処かに行っててしまっていまして、この気分をどう発散するかと考えているとちょうどエルシさんが来たので疑問を解消することにしたんですよ」
「疑問? エビルは剣なのになんでエルシは人型なのかとか?」
「いえ、胸の大きさです」
「よしだいたいわかった下へ行こうかエルシさん」
誠はエルシの手を掴んでさっさと出ようとするが、空いた手をマーチェが掴んで引き止める。
「まあ待ってくださいマコトさん。ここからが重要です」
「一部の業界でのね」
「大き過ぎず、小さ過ぎない、手の中に綺麗に収まるおっぱいって最高だと思いませんか!? 男の子なら分かりますよね!?」
「とりあえずマーチェさんが中身おっさんだということが分かりました」
マーチェごと引っ張って歩く。その間も良く分からないことを語っていたが誠は完全無視した。
「…………」
エルシは相変わらず無表情だったが、実はこっそり聞いてたりしていた。




