第6話 大久保さん
私の対戦相手は大久保さんという人だった。
大久保さんも初めての試合なのか緊張をしている。
試合開始の合図が出た。
コインを投げ先攻・後攻を決める。
私が先攻になった。
まず1投目。
ここが大事だ。
私の第一歩目だ。
少し息を吐く。
心臓が高鳴る。
集中、集中。
穴を見つめ、やや腰を落とし投げる。
決まった。
エアメールショットだ。
大久保さんと審判の人が驚く。
なにより私が驚いた。
私の1投目に動揺したのか大久保さんが1投目を外す。
2投目は穴の少し右手前で止まった。
入らない。
大久保さんが投げたのも穴の手前で止まった。
3投目の私は迷った。
ボードに当てて滑らして穴に入れるのが一般的なのだろう。
しかしそれをやると、大久保さんのビーンバッグに当たり、最悪大久保さんのを穴に入れ、私のが入らないことになるかもしれない。
となると狙うはもう1度……
私は集中して投げた。
しかし穴の左側に当たり思いっきり弾いて、ビーンバッグはボードを超えてしまった。
大久保さんの口角が上がる。
大久保さんが3投目を投げる。
先ほど投げた自分のビーンバッグに当たり、押し出すようにされたビーンバッグは穴に落ちた。
そして3投目はまたもや穴の手前で止まっている。
まずい。
少し考える。
選択肢は2つだ。
またエアメールショットを狙うか、大久保さんのビーンバッグを弾くか……
ここは攻めよう。
弾くのはまだまだ自分には確実性がない。
深呼吸をして投げる。
決まった。
2回目のエアメールショットだ。
大久保さんが少し焦ったように見える。
大久保さんの3投目はまたも自分のビーンバッグに当てたが、勢いがあり穴の上を通過し、ボードの外へ落ちてしまった。
4投目はまたもエアメールショットを狙ったが手前で落ち、ボードの左側に止まった。
大久保さんはまたしても自分のビーンバッグを狙ったが、今度は弱く穴に入らない。
こうして最初のラウンドが終わった。
私は7点。大久保さんは5点。
7-5で2点私がポイントを貰った。
あと19点だ。
この後も試合は拮抗する。
しかし途中経過では15-6で私がリードをしていた。
するとギャラリーが増えた気がした。
どうやら他の3人は試合が終わったみたいだ。
ちらりと見ると、理恵も、さおりも、姫星も笑っていなかった。
相手選手は笑顔だ。
3人は負けたのだとわかった。
こうなったら私だけでも勝たなければ。
全敗したら、みんなのやる気が一気に落ちるだろう。
私は穴の手前に落とし滑らして穴に入れる堅実な作戦を選んだ。
これなら失敗してもボードに残る確率が高い。
そして大久保さんも同じ作戦。
ならばコントロールの差が勝敗を分ける。
3投目の時点で私が2つ穴に入れ、1つボードに残している。
大久保さんは1つ穴に入れ、2つボードに残している。
ボードには現在3つのビーンバッグが。
渋滞だ。
勝負。
再び深呼吸。
額から汗が1粒落ちる。
穴を見据えて投げる。
決まった。
エアメールショットだ。
次は大久保さんの4投目。
ちらりと見ると、大久保さんは迷っているようだ。
そして一呼吸後に投げる。
しかしボードの手前に落ちた。
これでこのゲームは私が10点。
大久保さんが4点。
差し引いて6点。
今までの15点に足して21点。
21-6で私が勝った。
嬉しい。
ガッツポーズをしたい。
しかし大久保さんに敬意を表して我慢した。
お互い握手をして試合は終わった。




