表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/45

33 激戦、対ヴァルクス

夜空は不吉な雲に覆われ、稲光が闇を引き裂いていた。ローランドたちはついに勇戦国の本陣へと迫り、その軍勢を前に立ち塞がっていた。荒涼とした平原には、勇戦国の黒い旗がはためき、無数の兵士たちが整然と戦列を組んでいる。


「これが……勇戦国の本陣……!」


フローレンス=ペレチアは炎を宿した剣を構え、険しい表情で戦場を見渡した。その隣には聖女サンクトシリア=フレンスが聖光を纏い、兵たちに加護を与えている。そして、ブライアント公爵令嬢クローネ=フロストは蒼白い聖剣を握り、騎士団を率いていた。


だが、彼らの背後にはさらに異形の軍勢が控えていた。


「百鬼夜行、全員集え!これより主命により戦う!」


隠神刑部が凛とした声で叫び、その白銀の毛並みが輝きを増す。その背後には無数の妖――百鬼夜行が蠢き、地を揺るがしながら姿を現していた。鬼、霊、妖獣、怪鳥……その姿は異形だが、全てはローランドの力に従っている。


「主よ、どうぞお命じください」


「お前たちの力を借りるぞ!俺たちはあの本陣を打ち破る!」


「承知!」


隠神刑部は鋭い目で前線を見据え、百鬼夜行が咆哮を上げた。そして――


「風神、頼んだぞ!」


「はい、主人様!嵐を呼びます!」


風神が赤団扇を振るうと、激しい突風が戦場を駆け抜けた。旋風が勇戦国の陣をかき乱し、弓兵たちの矢が散り、槍兵たちは視界を奪われた。


「な、なんだこの風は!?」


「前が見えん!」


勇戦国の兵たちは動揺し、次第に陣形が乱れていく。だが、その中で冷酷な声が響いた。


「怯むな!これしきの嵐に負けるな!我らは勇戦国の軍だ!」


その声の主――漆黒の鎧を纏った男が前線へと歩み出た。王ヴォルクス=ヴァルハルト。その瞳は冷たく光り、その手には黒い魔剣が握られていた。


「……貴様が勇戦国の王か」


ローランドは聖炎刀を構え、蒼炎が刃に宿った。だがヴォルクスは一歩も引かず、冷笑を浮かべた。



漆黒の翼を広げたヴォルクス=ヴァルハルト。その姿はもはや人のものではなく、魔そのものだった。彼は黒い雷を纏い、空を駆けながらペレチア軍に無慈悲な攻撃を繰り出していた。


「愚か者どもよ!これが力だ!絶対の力だ!」


彼の声は戦場全体に響き渡り、そのたびに黒炎が大地を焼き尽くし、ペレチアの兵たちは次々と倒れていく。


「こんな……これが勇戦国の王の力……!」


フローレンスは紅蓮の炎を繰り出し続けたが、その炎はヴォルクスの黒炎に飲み込まれてしまう。


「私の炎が……効かない!?」


「効かないわけじゃない。ただ、奴の力が強すぎるんだ!」


ローランドは聖炎刀を構え直し、蒼炎を纏わせた。その炎は黄金に輝き、ヴォルクスへと真っ直ぐに放たれる。


「《業火の聖焔・終焉剣》!」


黄金の炎が空を切り裂き、ヴォルクスに直撃する。しかし――


「無駄だ!」


ヴォルクスは黒い翼を振り、その炎を吹き飛ばした。彼は冷笑を浮かべ、再び黒い剣を振りかざす。


「ローランド様、下がってください!」


クローネが馬を駆け、聖剣を構えた。その刃は聖光を放ち、蒼白い光の壁がローランドの前に展開された。


「《聖光障壁・守護の壁》!」


黒炎がその壁に衝突し、凄まじい衝撃が戦場を揺るがす。しかし、クローネはその壁を維持し、ヴォルクスの猛攻を防ぎ続けた。


「クローネ、ありがとう!」


「無理はしないでください、ローランド様!」


しかし、ヴォルクスはその光景を嘲笑しながら、さらに力を解放した。彼の背後には巨大な黒い竜の幻影が現れ、その咆哮が戦場を揺るがした。


「貴様らの聖光など、我が力の前では塵に過ぎん!」


黒い竜が咆哮を上げ、その口から放たれた黒炎がクローネの障壁を飲み込んだ。


「きゃあっ……!」


「クローネ!」


ローランドが駆け寄り、崩れ落ちるクローネを抱きかかえた。彼女の顔は疲労で蒼白になり、聖光の輝きも次第に薄れていた。


「くっ……皆……!」


「まだですわ!私はまだ……戦えます!」


クローネは必死に立ち上がろうとするが、その足元がふらつく。ヴォルクスの圧倒的な力に、彼女も限界を感じ始めていた。


「主よ、私がもう一度……!」


隠神刑部が九本の尾を振り、冷気の竜を放つ。その竜は空を駆け、黒い竜の幻影に噛みついた。


「白銀の狐……だが貴様もまた無力!」


ヴォルクスは黒い剣を振り下ろし、冷気の竜を両断した。隠神刑部はその力の前に後退を余儀なくされ、九本の尾も傷ついていた。


「主よ、申し訳ありません……」


「無理するな、隠神刑部!」


「くそ……強すぎる……でも、諦めるな!」


ローランドは再び聖炎刀を構え、蒼炎を纏わせた。だが、その炎もヴォルクスの黒炎に次第に飲み込まれていく。


「無駄だと言ったはずだ……力なき者に未来は無い!」


「それでも……諦めない!」


その時――


「皆さん……光を……届けます……!」


サンクトシリアが祈りの声を上げ、その光がペレチア軍全体を包み込んだ。その聖光は傷を癒し、士気を回復させ、再び兵たちは奮い立った。


「《聖光の癒し・神聖なる加護》!」


その光はローランドたちにも届き、彼らの疲労が癒されていく。クローネもその光を浴び、再び立ち上がった。


「サンクトシリア……!」


「私はここで皆さんを支えます!どうか、負けないで!」


その祈りの力は、戦場に希望を灯した。ローランドは再び聖炎刀を構え、隠神刑部もその傷を癒し、白銀の毛並みが輝きを取り戻した。


「今度こそ……!」


「ならば、私も風を!」


風神が赤団扇を振り、今度は竜巻を巻き起こした。その風は黒炎を押し返し、ヴォルクスの視界を遮った。


「この風……まだ抵抗するか!」


「抵抗じゃねえ……ここで倒す!」


ローランドは竜巻の中を駆け、聖炎刀に全ての炎を込めた。蒼炎は黄金に輝き、その光が夜空を照らす。


「《神焰・聖滅の烈光》!」


その光が竜巻に溶け込み、黄金の炎の嵐となってヴォルクスを包み込んだ。黒い炎と黄金の炎が激しくぶつかり合い、戦場は閃光に包まれた。


「貴様らごときが……この力を……!」


ヴォルクスは黒い翼を広げ、黄金の炎を弾き飛ばそうとする。しかし、その光は衰えず、彼の黒い鎧を焼き始めた。


「これで……終わりだ……!」


だが――


「終わらん……終わらせはせん!」


ヴォルクスは咆哮し、黒い竜の幻影が実体を帯びた。その巨大な竜は空を飛び、再び黒炎を吐き出してきた。


「まだ……まだ倒れない……!」


「皆さん、退避を!彼の力はまだ……!」


サンクトシリアが叫ぶが、ヴォルクスの黒炎は次々と百鬼夜行の妖たちを焼き尽くし、ペレチア兵たちも次第に押し返されていく。


「まだ……まだ終わらない!」


ローランドは再び聖炎刀を構え、炎を強める。しかし、その炎も徐々に黒炎に飲み込まれていく。


「強い……強すぎる……でも……!」


「ローランド様!ここで諦めてはなりません!」


クローネが聖剣を掲げ、その光が再び聖域の加護を呼び覚ました。


「フローレンス、サンクトシリア!もう一度力を合わせて!」


「はい!紅蓮の炎を!」


「聖光の加護を!」


三人の力が重なり、光と炎が戦場を駆け巡った。しかし、その先には黒い竜が咆哮を上げ、彼らに圧倒的な力で襲いかかろうとしていた。


「まだだ……まだ……!」


ローランドは立ち上がり、黄金の炎を纏った。その目には諦めの色は無く、再びヴォルクスに立ち向かう覚悟が宿っていた。

ブクマと⭐︎5評価何卒お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ