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22 戦力強化の旅②八岐大蛇編

ローランドは八岐大蛇へと猛然と肉薄した。


その姿は聖炎刀を握りしめ、煌々と輝く炎の刃が彼の動きを描き出していた。妖気が渦巻く陰世界の中で、彼の存在はまさに一筋の光明。八岐大蛇の八つの首が一斉に唸り声を上げ、彼に向かって蛇のように襲いかかる。


「やれるもんならやってみろ!」


ローランドはその巨体から繰り出される牙を寸前で躱し、逆に一閃。聖炎刀が鮮やかに空を裂き、一つの首を炎で貫いた。


「ぐおおおおおおお!」


八岐大蛇は絶叫を上げるが、その首は瞬く間に再生し始める。炎の痕は消え、再び牙が迫り来る。


「再生力ってのは確かに厄介だが……」


ローランドは微笑みを浮かべ、再び身を低くして突進した。


「だが、炎の浸食はお前にとって毒だ!」


彼の聖炎刀がまたもや八岐大蛇の首を切り裂き、再び燃え広がる。だが今回は違う――炎が焼き付くように首の断面に残り、再生を阻んでいた。


「ほう……聖なる炎は、お前の毒か」


風神が目を細めながら後方から見守っていた。その手には赤団扇が握られており、軽く煽るたびに炎がさらに強まる。


「さぁ、俺の力をもっと感じろよ、八岐大蛇!」


ローランドは全身を炎に包み込み、その光で陰世界の暗闇すらも払うように輝いた。足元が軽やかに跳ね、八つの首を次々と捉えては焼き尽くしていく。


「無駄だ無駄だ無駄だ!お前は何度でも再生する!」


八岐大蛇は吠えるが、その叫びは焦燥を帯びていた。炎の痕が首だけでなく、胴体や尾にも広がり始めていたからだ。


「いや、お前の再生はもう間に合わないんだよ!」


ローランドはその一瞬を見逃さない。彼の足が地を蹴り、渦巻く炎を引き連れて跳躍。八岐大蛇の頭上で聖炎刀を高々と掲げる。


「――業火の聖焔・終焉剣インフェルノ・エンド!」


その一撃は巨大な火柱となり、八岐大蛇を飲み込んだ。灼熱の中で蛇の絶叫が響き、ついにその再生が追いつかなくなった。八つの首が焼き尽くされ、体は崩れ落ち、無残にも燃え尽きる。


──静寂。


焦げた土と立ち昇る煙の中、ローランドは息を切らせながら立っていた。


「……やったか?」


「お見事です、主人様!」


風神が駆け寄り、歓喜の表情を浮かべている。


「いや、最後はお前の風のおかげだよ」


「おやおや、私を褒めるなんて珍しいですね」


「ま、こういう時くらいはな」


ローランドは微笑んで聖炎刀を収めた。だがその刹那、何かが風に乗って彼の耳元に囁いた。


『終わったと思ったか?』


その声と共に、焦げた地面から黒い影がうごめき始める。


「冗談だろ……」


「主人様、後ろです!」


黒い霧が渦巻き、そこから八つの眼が彼らを睨みつけた。焼き尽くされたはずの八岐大蛇が、怨霊のように蘇ろうとしていたのだ。


「不死の呪い……か」


ローランドは再び聖炎刀を構えたが、その手が微かに震えている。


「面倒だな、マジで……」


「ですが、ご安心ください!」


風神が赤団扇を再び構えた。


「これはあなたと私の力を試す絶好の機会です! 八岐大蛇の怨霊をも完全に浄化しましょう!」


「……だな!」


炎が再び燃え上がり、八岐大蛇との第二ラウンドが幕を開けた。





八岐大蛇との戦いは、陰世界の暗黒に包まれた大地で繰り広げられていた。重い空気が全身を押しつけるように感じられ、妖気が霧のように漂う中、ローランドは聖炎刀を握りしめ、風神がその背後に控えていた。


「――始めるぞ!」


ローランドの声が響き渡り、その瞬間、聖炎刀が灼熱の光を放つ。赤く燃え上がる刃が陰世界の闇を切り裂き、八岐大蛇の巨大な姿を照らし出した。その八つの首はそれぞれ獰猛な牙をむき出しにし、凶暴な眼光でローランドを睨みつけている。


『グオオオオオオオッ!』


八岐大蛇は吠え、その咆哮が空気を震わせた。同時に、巨大な口から猛毒の霧が放たれる。地を這うように広がり、全てを溶かさんばかりの腐食性を持つその毒霧が迫り来る。


「風神!」


「承知しました!」


風神は赤団扇を一閃。強烈な烈風が毒霧を吹き飛ばし、毒の霧は一瞬で消し飛ぶ。だがそれにひるむことなく、八つの首が同時にローランドへ襲いかかってきた。


「ふんっ!」


ローランドは聖炎刀を横薙ぎに振り抜く。その炎の刃は瞬時に三つの首を焼き払い、灼熱の光が八岐大蛇の巨体を貫いた。だがその首はすぐさま再生し、さらに巨大化して襲いかかる。


「やっぱり再生が早いな……!」


「ですが、聖炎の痕は確実に奴を蝕んでいます! 削り続ければ、いずれ限界が来るはず!」


「なら、力を全開にするしかねぇ!」


ローランドは聖炎刀を両手で構え、全身から炎が立ち上がる。それはまるで彼自身が火の化身となったかのようだ。燃え上がる炎のオーラは八岐大蛇の攻撃を焼き払い、逆にその巨体を焦がし始める。


『ぐおおおおお!』


八岐大蛇は苦しげに身をよじるが、再びその八つの首が炎の中から突き出てくる。そのうちの一つがローランドを捉え、牙が彼を噛み砕こうと迫る。


「甘いんだよ!」


ローランドはその牙を聖炎刀で真っ二つに切り裂いた。だがその背後から二つ目の首が迫り、強大な尾が彼を地面へ叩きつける。


「ぐはっ!」


ローランドの視界が一瞬暗転する。だがその直後、風神の烈風が彼を包み、再び空中へと押し上げた。


「ご無事ですか、主人様!」


「ありがとよ、風神!まだやれる!」


彼は空中で体勢を整え、聖炎刀を再び構えた。その炎はますます輝きを増し、八岐大蛇を囲むように渦を巻き始める。


「この炎、逃れられると思うなよ!」


「《業火の聖焔・終焉剣》!」


ローランドの叫びと共に、炎は旋風となり八岐大蛇を包み込んだ。灼熱の火柱が天へと伸び、八岐大蛇はその中でのたうち回る。だがその巨体はなおも抵抗を続け、八つの首が炎の中から突き出てはローランドを狙う。


「お前はしつこいな……なら、これを食らえ!」


ローランドは左手を掲げ、詠唱を始めた。


「――我が力を超えし者、炎の王よ、その力を我が刃に宿せ!」


その言葉と共に、聖炎刀の輝きが一層増し、灼熱を超えた蒼炎が刀身に纏わりつく。その刃はまるで蒼い彗星のように輝き、彼はその力をもって八岐大蛇に突進する。


「喰らえ!《神焰・アズールブレイズ》!」


蒼い炎が轟音と共に八岐大蛇を貫き、その巨体は瞬く間に焼き尽くされていく。再生する間もなく、その炎は八つの首を次々と消し去り、焼け焦げた痕跡すらも残さなかった。


『ぐ、ぐおおおおおお……』


八岐大蛇の断末魔が響き、ついにその巨体は消滅する。だがその霧散した場所に、黒い影が漂い始めた。


「これで終わりだと思ったか?」


ローランドはすぐさま構え直し、風神もまた赤団扇を翳している。


「不死の呪い……それが八岐大蛇の本質か」


「主人様、今度はその怨霊そのものを焼き尽くさねばなりません!」


「わかってる!」


怨霊のような八岐大蛇の残滓が渦を巻き、その中から無数の影の触手が襲いかかってくる。ローランドは炎を纏いながらその触手を斬り払い、風神がそれをさらに吹き飛ばしていく。


「ご主人様の炎だけが奴を浄化できます!今こそその力を!」


「なら、全力だ!」


ローランドは目を閉じ、炎の力を集中する。その炎は蒼から黄金へと変わり、さらに神聖なる白光を纏う。


「――《終焉の聖焔・カルマフレア》!」


その光は全てを覆い尽くし、怨霊の八岐大蛇をも焼き尽くしていく。影は消滅し、怨念の声も次第に消えていく。


そして静寂が訪れた。


「……終わった、か?」


「はい、見事なものでした、主人様!」


風神は笑みを浮かべながらローランドに近寄る。だがローランドは肩で息をしながらも、わずかに笑った。


「ははっ……やっぱり俺、強くなったかな?」


「ええ、間違いありませんとも!」


彼らの視線の先には、焼け焦げた大地に僅かに輝く蒼い宝玉が転がっていた。それは八岐大蛇の本質、怨霊の残滓が浄化され、力を失った証だった。


「さて……この宝玉、何かに使えるかもな」


「さすが主人様、貪欲ですね!」


「ははは、欲張りなのは悪い癖だ」


二人はその場を後にし、陰世界の闇を背にして光の中へと戻っていく。その背中には、確かな勝利とさらなる冒険への期待が漂っていた。


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