まるチビ
――シンデレラの頭の数字は『27』となっていた。
「まるチビ?」
「んあ”ーーーーーーーーーーーー?」
オレの言葉に、まるちカッターは思い切り眉根を寄せた。険呑なイラつきを見せながら近づいて来る。
「今言ったのはおまえか?」
「うん、そう」
オレはトールマンにしてはチビのまるちカッターを見上げる。結界越しに。
まるちカッターは思案するように首をかしげたが、不意に「ああ」と声をもらした。
「おまえ、もしかして”迷子”か?」
「うん。そう」
どうやらそうらしい。あまり記憶が無いけれど、今ふと髪が長い頃のまるちカッターの顔が浮かんだ。そして”まるチビ”という呼び名も。
「オレを”まるチビ”と呼ぶのは”迷子”だけだ。ずいぶんと久しぶりだな、おい」
「ああ」
オレは話を合わせる。
「髪は――」
「うん?」
「髪はどーした? おまえいつも自慢の美容師にキレキレに切ってもらってたじゃん」
断片的な記憶の中のまるちカッターの姿は、銀色の(なんていうんだろう? 流行を追いすぎて迷走しているような)とがった髪をしていた。そして、ヤツも自分の髪型を周囲に自慢していたような気がする。
「チッ」
まるちカッターが舌打ちをした。
「切られたんだよ。魔執事長のオッサンに」
「それは罰として……?」
「ああ、おまえが消えてから悪いことばかりだ。俺は髪を切られるし、サリーはスライム化されるし」
まるちカッターが視線を奥に向ける。
――シンデレラの頭の数字は『20』となっていた。
「この結界の中にスライムを大量に押し込んだのはたぶん緩衝材だ。鳥娘が爆発したとき、まわりのヤツや建物に被害が及ばないようにスライムを利用しようとしているんだ」
「だろうな」
「俺らトールマンや共和国に加盟しているクリーチャーはスライムたちも大事な命の一つと考えてて、こんな乱暴な扱いはしない」
だから――と言葉を継ぐ。
「ボマーは化け物なんだと思う」
「ああ」
――シンデレラの頭の数字は『14』となっていた。
「はあああ」
まるちカッターはため息をついた。
「被害を防げないならばその被害を最小限に――」
まるちカッターは近くにいたゴーレムを呼び寄せ、その背から自らの刀を抜いた。まずはそれを一閃して、結界に切れ目を作る。その切れ目からスライムたちが結界の外へと逃げて行く。
それとは逆にまるちカッターとゴーレムは結界の中へ足を踏み入れる。
床に座り込むシンデレラとその近くで膝をついている吉田さんに歩み寄る。
「羽を返す」
「え?」
泣き顔のシンデレラは顔を上げた。その背に有無を言わせず羽をつける。
半信半疑のシンデレラが自身の背に顔を向けると、それはゆっくりと動いた。シンデレラが笑顔を見せる。
「俺ら魔法課の合言葉は『被害を防げないならばその被害を最小限に』だ。その意味はわかるか?」
――シンデレラの頭の数字が『10』となった。
まるちカッターの指が窓を指さした。
「飛べ」
まるちカッターの言葉に吉田さんが青ざめる。
――シンデレラの頭の数字が『9』となった。
シンデレラは頷くと、窓に向かって走り出した。その途中から彼女の体が宙に浮き始める。次第に飛ぶスピードが加速する。周囲の者はシンデレラから逃げるように道を開けた。
頭上の『5』という数字と一緒にシンデレラが窓から飛び出した。




