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【Web版】威圧感◎  作者: 日之浦 拓
本編(完結済)

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ようこそスライム遺跡へ

「ほほぅ。ここが件のスライム遺跡か」


 その後は特に何事も無く、僕たちは無事にスライム遺跡に辿り着いた。まあ僕がいるだけで魔物は襲ってこないし、もし万が一襲われてもジェイクさんと一緒にいる今ならどうとでもなるだろうけどね。おっと、勿論えっちゃん達だって忘れてない。今の僕はこの世界に来て一番戦力の高い状況だ。唯一の懸念は僕自身がその強さにほぼ影響を与えていないことだけど、細かいことは気にしない。今の僕は最強パーティの一員・・であることが重要なのだ!


「ジェイクさんはこの遺跡に来たことは無かったんですか?」


「ん? まぁな。この遺跡が攻略されたのは大分前だから俺との関わりは全く無いし、そうなればスライムしかいない遺跡に行く奴なんていないだろ。お前さんだってもっと町の近くでゴブリンを狩れる根性があったなら、ここには来なかったんじゃないか?」


「うっ、それは確かに……」


 無抵抗な人型の魔物を殺すことに忌諱感を感じなかったら、僕は今頃ゴブリンを狩りに狩って強くなっていたんじゃないかと思う。その感情を乗り越える、たったそれだけのことで僕の進む道は大きく変わっていたはずだ。

 でも、それが乗り越えられなかったからこそ今の関係があるんだから、悲観することなんてない。今の自分は幸せだって、僕は胸を張って言える。


「人間相手の殺人ならまだしも、人型の魔物すら殺せないなら正直冒険者なんて今すぐ辞めた方が身のためだと思うが……まあそういう弱さを自覚して、自分に可能な範囲で冒険ごっこをやるってことなら自己責任だからな」


「はは。肝に銘じておきます」


 曖昧に笑って答える僕に、ジェイクさんは肩をすくめて遺跡の中に入っていく。本気で冒険者をやってる彼にとって、ごっこ遊びとしか言えないような活動しかしてない僕はあまり良い気分のする存在じゃないのかも知れない。とはいえ、僕は僕の出来る範囲で頑張ることしかできない。いつか成長してごっこ遊びから本物の冒険の出来る男になるまで、日々精進するしかないのだ。


 ジェイクさんに続いて遺跡に入り階段を降りれば、そこはもう見慣れた通路だ。そしてすぐ目の前に、見慣れたプルプルの姿もある。


「お、早速だな。なら……そうだな。テイムを見せて貰うのは最後でいいから、このまま複数のスライムと対話してみてもらうってことでいいか?」


「いいですよ。あ、そういうことならこの子に遺跡の中のスライムを集めて貰いましょうか?」


 いつものスライムバトルをするなら広さの確保が必要だけど、話すだけなら問題無い。遺跡の中を歩き回る手間が省けるし、目的が個別面談じゃなく雑談なんだったら、複数のスライムが一緒にいた方が話しやすいこともあるだろう。


「そんなことできるのか? ならそれで頼む」


「わかりました。えっと、じゃあお願いできる?」


 ぷぅるる~ん!


 分割されてないパーフェクトメイズスライムだけあって、貫禄たっぷりの震え方をしたスライムがその場を去って行き、程なくして仲間を引き連れて戻ってきた。その数……およそ30匹。


「……多くないか?」


「……多いですね。いや、でも細かい指定をしなかったのは僕の落ち度なので……」


 狭い通路に大きなスライムがぎゅうぎゅう気味に身を寄せ合い、たっぷんたっぷん揺れている。僕がお願いしたであろう子は「どうよ俺の人脈?」みたいなドヤ震えをしているので、とりあえず表面をそっと撫でてお礼を言っておいた。「もっと頼ってくれても……いいんだぜ?」という震え方をしていたので、きっと頼られるのが好きな子なんだろう。折を見て何かお願いをしてあげて、その上でタップリ褒めてあげたい。こういう細かい気配りこそが、人間関係を円滑に進める最良の手段なのだ。


「それで、どうしましょう? 話すと言っても、何を話せば?」


「そうだな……と、その前に。お前さんはこいつらの言ってることがわかるんだな?」


「ええ、わかりますね」


「そうか。俺にはさっぱりわからん。ただプルプル震えてるようにしか見えないんだが……それを言うならえっちゃんだって同じはずなのに、そっちはきちんと意思が伝わってくる。つまり『スライムが人間に意思を伝える力』はお前さんのテイムの結果として身につく能力ってことはこれではっきりしたな。


 だが……それなら、何で『まだテイムしていない』スライムの言葉が、お前さんには理解できるんだ?」


「あ、そう言われれば」


 えっちゃんに関しては長期間威圧し続けたからってことで一応納得はできた。でも彼らはそうじゃない。そもそも戦ってすらいないし、『威圧感』にしても自然に漏れる分を今浴びているだけに過ぎない。『威圧の絆』の発動条件である「完全に威圧しきった場合」というのをこんな簡単に満たせるとは思えないんだけど……


 とそんなことを考えていたら、えっちゃんが頭の上で「ここの奴らは既に相棒のことを心から認めてるからじゃね?」とプルり。ああ、なるほど。最初から眷属ともだちになりたいと思ってくれるくらいの間柄で、なおかつ自分から『威圧感』の影響を取り込んでいくなら、あっという間なのか。そりゃ抵抗する相手を押しつぶすのと、ウェルカム状態の相手に流し込むのじゃ効率が違って当然だよね。うん、実にわかりやすい。


「どうやら僕にテイムされたがっている様な相手だと、言葉がわかるみたいですね」


「ほぅ。つまりスライムに限らず、お前さんが言葉を理解出来る相手ならどんな魔物であってもテイムできる可能性があると?」


「それは……どうでしょう? 可能性としてはあるかも知れませんけど、そもそもここまで意思疎通ができるのは、誰も知らなかっただけで元からメイズスライム達の頭が良かったからですしね。

 あっ!? ちなみに僕がテイム出来るのはあくまで『僕と同程度の強さの相手』だけなんで、例えばジェイクさんに手伝って貰ったりすると、多分駄目だと思います」


 お助け天使のワンポイントメモに書いてあった注意事項を思い出して、僕は慌ててそう付け加える。危なかった。これを思い出さなかったら、実力に見合わない強敵をジェイクさんがボコボコにした挙げ句に僕が威圧してテイムする、みたいな実験をすることになったと思う。可能性があるなら否とは言わないけど、完全な無駄足になるのがわかってるならそういう危ない橋は出来れば渡りたくない。


「そうか。強力な魔物には知能が高いのも多いから、うまくやれれば一気に戦力の増強ができそうだったが、そこまで万能ではないってことだな。お前さんと同程度となると……実質スライムだけ、か」


「何かすいません」


 別に悪いわけじゃないのに、何となく謝ってしまう。まあ確かに色んな魔物を眷属ともだちにできるなら、僕としても出来ることの幅が広がりそうだけど……重要なのは、正しくこの「友達」というところだ。天使のメモにあった「絶対服従」の方だったら問題無いだろうけど、友達だと僕の意思を尊重する程度で、逆らったりすることもあるかも知れない。えっちゃん達みたいに根が善良で、かつ本質的に他者を傷つける力を持ってない魔物だからこそ問題になってないけど、例えばゴブリンを眷属にしたとして、彼らが人間を傷つけては駄目だという約束を守ってくれるかはわからない。そもそもその「約束」という概念を理解できる知性と、本能を抑えられる理性が育っているかがわからないからだ。


 うーん。そう考えると、これ思ったより危ない能力なのかも。ああでも、だからこそ「僕と同程度の強さの相手」って縛りがあるのか。僕より強かったら何かあったとき抑えられないもんね。流石『威圧感』だ。僕の気づかなかったところまで細かくフォローしてくれてる辺り、神様の思いやりが垣間見える。今度また天に祈っておこう。それで神様が喜んでくれるのかはわからないけどね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ペラペラ自分の力よく喋るな
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