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彩色の魔女  作者: 唄海
2章 英国の闘い
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祈り、願い、髪留め。

 目を閉じてすぐに、真は眠りについた。隠してはいたが、相当消耗していたのだろう。聖人二人に対して、魔法使い一人。今思えば、この上ない程の悪条件。あれだけ時間を稼ぐのは、相当な腕か、余程強力な魔法を持っている証拠だ。もし違うとすれば、彼が人並み外れた精神力の持ち主だという事だ。

 起こしてしまわないようにそっと顔を覗き込む。左目の上の傷は、もう跡形もなく治っていた。


「よかった⋯⋯」


 ほっと胸を撫で下ろす。ライヴに連れられて戻ってきた直後の彼の体は、もう酷くて目も当てられない有様だった。だから小夜は必死になって治療した。絶対に治してみせる。その一心で、彼女は真に寄り添い続けた。

 同時にそれが、無性に嬉しくもあった。彼のそばに居られることが、嬉しかった。黒峯真と言う人の役に立てる事が、とても嬉しかった。


「真⋯⋯」


 これは彼女の罪。彼を引き込んだ罰で、呪い。どれほど彼から恨まれても、どれだけ罵声を浴びせられても許されない。だと言うのに、彼は決してそんな事はしなかった。

 小夜の為に戦う。自分の命など投げ捨てても、彼女の為に奔走すると心から誓った。それが嬉しく、そしてそれ以上に罪悪感を彼女に与えた。


「ごめんなさい⋯⋯いえ、ありがとう。アナタはそれすら赦してくれた。謝る事は、アナタは赦してくれないから」


 どんな事があっても味方だ。彼はあの夜、確かに彼女にそう言った。どんな状況になっても、どんな事があっても守ると誓った。彼女が思うよりずっと前に、彼はとっくに覚悟も決意もしていたのだ。


「私はずっとアナタのそばに居るわ。償いなんかじゃなくて、アナタの一番そばに居たいから。例えアナタが傷ついたなら、真っ先に私が治すから」

 

 もう迷わない。もう振り向かない。彼の覚悟に真正面から答える。彼と共に戦う。それが、彼女の決めた祈り。

 この胸に湧き上がる想いは、きっと彼だけに向けられた特別な物だ。何故だろう、あの時助けてくれたからだろうか?


「──違うわ。きっと、時間なんて関係ないのよ。一緒に居たいと想うなら、私は自分の心に従うだけ」


 キュッと髪を結ぶリボンに触れた。これを貰った時の事が、まるで昨日の事にさえ思える。あの時の照れ顔を思い出すだけで、彼女は胸が満たされる。あぁ⋯⋯彼からは貰ってばかりだ。


「⋯⋯おやすみなさい、真。明日もまた、会いましょう」


 音を立てないようにこっそりと部屋を出る。明日、また彼は戦うだろう。ならば彼女は、それを見守らなけらばならない。


「大丈夫だ」


 彼の言葉を思い出す。その一言が、本当に全てを変えてくれそうな気がする。

 少しだけ不安だけど、大丈夫。そう自分に言い聞かせて、彼女はひっそりと髪を解いた。


 

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