不自由落下
「うぉわあああああ!」
圧倒的浮遊感に、思わず満足に動かないはずの体をじたばたさせる。激痛が走るが、その痛みのおかげで冷静になれた。
俺とライヴは今、空中に転移して落ちてる最中だ。遥か下方には、屋敷のある浜辺が見える。
「ミスった⋯⋯」
ライヴが忌々しげに呟く。
「おいライヴ、顔色が悪いぞ。大丈夫か」
「無理して二人も転移したからかな⋯⋯場所の計算も間違っちゃったし、ちょっとまずい状況ね」
「あー⋯⋯」
一難去ってまた一難、どうやら今度は墜落しそうになってるらしい。
「しょうがねぇ、ちょっと失礼しますよ」
隣で一緒に落ちるライヴを守るように抱きしめると、そのまま地面の方へと体を向ける。
「何すんのよ!」
「しょーがねーだろ。ほらそれに、俺なら魔法のお陰で落ちても何とかなりそうじゃん?」
「馬鹿じゃないの! てか、変な所触らないで!」
「別に下心は無いんだけどなぁ⋯⋯」
ワチャワチャと暴れるライヴをなだめ、落下の衝撃に耐えようと体を丸める。
「こんなんで死んだら殺すわよ」
「おい」
そろそろ地面が近づいてきた。死ぬつもりは毛頭ないが、多分何とかなるだろう。ぐっと目をつぶり、歯を食いしばった。
「真!」
突如風が巻き起こり、落下の勢いが殺される。風はどんどん強くなると、あろう事か体が風だけで浮き始める。
「これは⋯⋯」
閉じた目を開け、周囲を見渡す。ガルと、それからベルが魔法によって風を起こしていた。
「苦労させやがって⋯⋯」
安堵の表情を浮かべるガルの前に、ゆっくりと着地する俺とライヴ。
「えぇい離せ!」
「おうふ」
ジタバタと俺の腕を振りほどくと、ライヴはバツが悪そうに離れる。本当に下心も何も無いんだけどなぁ⋯⋯
「真!」
「ご主人様!」
遠くから聞き覚えのある声が二つ。声の方向からは、小夜とサリィが全速力で走ってくるのが見えた。
「あ────」
その瞬間。抑えていた物が一気に噴き出し、意識を塗りつぶす。急激に落ちていく意識と、朦朧して歪む視界。
安心したせいで最後の支えが消え去ったのか、俺はその場で皆の前で倒れ込んだ。
「眠い⋯⋯」
瞼を閉じて、ゆっくりと眠りにつく。暗闇にどっぷりと浸かった意識は、抵抗すること無く無意識の奥底へと沈んでいった。




