地底図書館
──中は巨大な図書館だった。
部屋の端から端本棚がびっしりと並んで、その列の数は見ただけでも三十は超えている。
「天井高いな……」
上を見上げると、空があると錯覚してしまう程高い天井があった。
それだけでも大きいのに、そこまで本棚が昇っているのもまた驚きだった。
「本棚の城壁かよ……」
「面白い例えをするのね、真」
「凄いでしょ、ここ」
「あぁ、人間ってこんなに本を作ってたんだな」
ここにある本の数は一体どれ程になるのだろうか。世界中の本を全て集めてもこんなに本は無いんじゃないかと思う。
「さて、行きましょ。研究室はもう少し先よ」
小夜はスタスタと本棚の間を歩き出す。
本棚は碁盤目になっていて、一マス一マスに本棚が並んでいる。間を歩いていると、まるで谷底を歩いてる感覚がする。
ふと、歩きながら横の本棚に目をやる。
「んん? 物理学……?」
そこには魔法とは最もかけ離れた存在であろう物の本が収まっていた。
俺は逆の本棚を見る。目に入ってきた本は医学書のような物だった。
「何これ聞いてねぇぞ」
「別にテメェ、異世界転生しなくても異世界転生の本読むだろ。それと同じだ」
「医者にならなくても医学書読む変態なんているのか……」
どうやらここの本、別に魔法に関係がある訳でも無いようだ。
ていうかガル、なんで異世界転生なんて単語知ってるんだ。
「やっぱ魔道書とかあるのか?」
「一応あるにはあるのだけれど……見ても魔法が強くなったりとかはしないわ」
「……とことん魔法の固定概念をぶち壊されるな」
「まぁ、先人達の歴史を知る分にはうってつけだろうけど」
「いや、知らなくていい。あまり知りたくもないし」
正直、血生臭い感じしかしないと思う。
しばらく歩くと、机があった。
これもまた巨大な机で、百人単位が座れそうな程だ。
ちらほらと人が座っている。
「あら、見ない顔だね。新しい同盟の魔法使い?」
「カレト。珍しいわね、ここにいるなんて」
カレト、そう呼ばれる女性は俺を物珍しそうに見てきた。
「ちょっとヤボ用でね。んで、そこの黒い人は?」
「真だ。色々あって小夜達と同盟を組んだ、よろしく」
「うん、よろしく。ウチはカレト・ルーフスだ」
「あぁ、よろしくカレト」
握手を交わす。
赤毛赤目の少女は、近くにいるだけで彼女の活力を感じられる。
「そう言えば蒼夜さん、爺さん見ませんでした?」
「ロキ爺の事? 見てないわね。見かけたらカレトちゃんが探してたって言っておくわ」
「あー、お願いします。ウチはウチでまた探すんで」
そう言ってカレトは去っていた。
ていうか──
「蒼夜って言うんだな。小夜のお母さん」
ここに来て初めて小夜のお母さんの名前を聞いた。
まぁ、似合ってる名前だなと思う。
そんな事を考えながら歩くと、ようやく研究室と呼ばれる所へたどり着いた。




