螺旋
石造りの薄暗い部屋の中、二人の男性が話している。
「ベル、あの黒色についてどう思う」
「なんですか青原さん。 急に」
「いや、特にな。 ただ、本当に黒色なのかとな」
「あぁ……なるほど」
「黒色……未だ不明な属性。 かつて存在したただ一人は全く素性がわからず、いつの間にか消えていた。 その後、黒色は一人として出てこなかったが……」
「それがなぜ、極東のあのような平凡な青年が持っていたのでしょうかね」
「わからん」
「……まぁ、とりあえずは三日後の決闘について考えますよ。 彼が本当に黒色なら、黒色の力を見せてもらうまでです」
「……そうか。 まぁ、君が負ける事は無かろう。 緑色の魔法使い、その系統の中でも最有力とされる、ウィリディス家の跡継ぎなのだから」
「……えぇ、そうでしょうね」
そう言って深緑色の髪の男性は不敵に笑った。
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あの話し合いの後、俺達四人は部屋で今後の予定について話し合っていた。だが……
「さて、とりあえず何から教えたものかしらね」
「なぁ小夜、とりあえず魔法の基礎について教えて貰いたいんだが。 戦うも何も、それがなきゃまともに相手すらならない気がする」
「それに、兄貴の魔法についての対策も取らなきゃな。 今のテメェじゃ持って2秒だ」
「マジ?! そんな強いの?!」
「冗談だ……いや、うん。 冗談だ」
「待ってなんで迷ってんだガル!」
「知らねぇよ!」
どうやらやる事が多すぎて何から始めたらいいか分からない状態だった。
「……そうねぇ。 とりあえずは真君をあそこに案内してあげたらどう?」
「あそこに? お母さん、あそこは真にはまだ……いえ、確かにあそこは魔法の練習についてもうってつけだし……でも……」
小夜はぶつぶつとつぶやきながら何か迷っていた。
あそこってどこだ?
「なぁガル、あそこってどそこ?」
「は?」
「いや、あそこってどこ?」
「……多分研究室だろ」
「研究室ぅ? またなんか現代っぽい所だな」
研究室と言うからには魔法についての研究室だろう。
途端、様々な生き物の臓物が吊るされてる部屋が思い浮かんだ。
「……いやまさかそれは無いだろう、てかあったら場所変えてもらう」
そんなもの見たら今日は本当に胃が死んでしまう。
先程の件で既に胃に来てるというのに。
「……そうね、真。 地下に降りてそこで基礎について学びましょう。 今日はそれでいいわ」
「あ、あぁ……一つ聞きたいんだけど、まさかその研究室っておぞましい物とか無いよな?」
「……? 無いけど?」
「そうか、ならいい。 そこに行こう」
「そういえば……他の人達にはまだ真の事言ってなかったわね」
「他の人? あぁ、ここは色んな魔法使いがいるんだっけな」
「そう、多分大体は研究室にいるから紹介するわ」
「わーい」
そうして俺達は屋敷の地下へと降りていった。
地下の入口は一応隠してあるらしく、何でもない廊下の下に入口があり、下に降りるハシゴが続いていた。
「うおぉ……秘密基地みてぇ……」
「ここの他にも研究室はあるけど、今日はここを使うわ」
「いいか、ガル! 押すなよ! 絶対に押すなよ!」
「何言ってんだテメェ」
俺はハシゴのある穴の前で立ち止まりながら言う。
「えーい!」
「ちょっ」
何故か小夜のお母さんがニコニコしながら押してきた。
待って、まだ準備が整ってない。
「ギャアアアアア!!」
俺はそのまま穴の中へ落ちる。
本来なら着地の体制を整えて落ちるハズだった。
が、その準備が整う前に押されたので崩れた体制のまま落ちていった。
「ってぇ!」
そのまま空中で回転し、背中から床に叩きつけられる。
呼吸が止まり、一瞬意識がトぶ。
「……んにゃろぉ、フリを理解して貰えるのはありがたいんだが、せめてもう少し時間をくれ」
「真?! 大丈夫?! 今行くから待ってて!」
小夜が慌てて降りてくる。
この体制だとスカートの中が見えてしまうが、残念な事に痛みでそれどころでは無かった。
「おう小夜……」
「大丈夫?!」
「あぁ……大丈夫だ」
小夜は床に寝転んでる俺は見て驚く。
俺は大丈夫だとアピールしながら体を起こす。
と───
「すげぇ……なんだここ……」
周りを見渡す。
そこには幻想的な空間が広がっていた。
大きな丸い穴が空いてあり、その穴の外形に沿って螺旋状に階段が続いていた。
穴の中心には滝があり、底へと水が落ちている。
底は深く、上から覗いても暗くて見えなかった。
上を見ると巨大なステンドグラスが何枚も張り合わされ、その中心から水が流れていた。
「…………」
俺はその光景にぽかんと口を開けて驚く。
この上は床のはずなのに何故か光が降り注ぎ、ステンドグラスが幻想的な雰囲気を醸し出して、見る者を魅力していた。
「どうなってんだここ……」
「ここは空間をいじってあるから、何故か太陽の光が通るのよ」
「へぇ……すげぇな……魔法使いって」
俺はしばらくその光景を眺めていた。
「おいテメェ、いつまでボケっとしてんだ」
「あぁ、悪い。行く行く」
そのまま小夜達の後を追って階段を降りていく。
階段の横には等間隔で明かりが灯っていて、光の螺旋を描いていた。
「なぁ、ここは何なんだよ?」
「ここは元々大きな縦穴だったの。そこを利用して魔法の研究をしているのよ。どう? 気に入った?」
「正直現実離れしてて信じられねぇ」
「そう。 まぁ、真君がそれ程驚いて無くて少しがっかりだわ」
「いや、十分驚いてるんですがね……」
最近は現実離れした事が多発していて、いちいち驚くのも大変になってきたのだ。
「それにしても深いな。どこまで降りるんだ?」
もう日の光が届かないくらい深く降りてきている。
明かりは階段の横のランプだけだ。
「もうすぐよ。真、暗いけど離れないでね」
「え、離れる要素あるの?!」
「一番下はね」
そんな恐ろしい事を言いながら小夜は黙々と降りていく。
俺ははぐれないように付いていく。
ふと、どこからか視線を感じる。
「……? 気のせいかな?」
俺は周りを見渡す。
周りには相変わらずランプの光だけが爛々と輝いていた。
「なぁ小夜……そろそろ……あれ?」
小夜がいない。
それどころか小夜のお母さんやガルもいなくなっていた。
「……………………え?」
いつの間にか周りには俺しかいなくなっていた。




