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第27話 魔力の視える青年

  空中に浮かぶ魔法陣。

  円形の巨大な魔法陣は白い光を放っている。

  その真下に片腕のもげた騎士型のロボット、狼型のロボットの操縦士、そして楕円形の小型ロボットが立っていた。

  騎士型のロボットと狼型のロボットの操縦士はナガトの紐の拘束から逃れたらしい。

  見回すと焼け焦げ、バラバラになった紐状のものが辺りに散らばっている。

  おそらく楕円形の小型ロボットが焼き切ったのだろう。

  楕円形というよりも卵型といったほうが分かりやすい。深緑色と茶色の斑ら模様をした卵型の二足歩行ロボットだ。

  人間の腕を模造したと思われる鉛色の腕が左右につけられており、腰部分には太いベルトが巻かれ、その両脇にホルスターに入った銃が二丁、装備されている。腕と同じ素材で作られていると思われる鉛色の脚がひょろっと伸びている。

  そしてなによりも目を引くのは中央に備えられた主砲だ。

  今までの中距離攻撃はおそらくこの主砲からの砲弾だろう。

  ちなみに騎士型のロボットの片腕と狼型のロボットの四肢は回収するつもりが無かったのか、はたまた回収する時間が無かったのか、周囲に散らばったままだ。

  白い光のベールが色濃くなり、星屑を撒いたようにチカチカと瞬く。

  ーー迷っている暇は無い。

  ナガトが矢の如く駆ける。

  背中から紐状のものを引き抜き、剣を形成する。両手で柄をしっかりと握りしめ、構え

 剣先を定めた。

  ーー目標は魔法陣の真下にいる三人。

  地面を強く蹴り、一本の矢、否、一本の槍の如く、敵に猛進する。

  白い光のベールに剣先が触れたその時だった。

  まばゆい光があたりを包む。

  トーヤは思わず顔を背け、眼をつぶる。

  ナガトの剣先が虚空を貫く。

  ーートーヤが目を開けると、そこには既に敵の姿は無かった。


  「逃げられたか」


  操縦桿を握りしめる手に力がこもる。失敗だった。トーヤは捕虜を全員、生け捕りにする事ばかりに気が取られ、油断した己れの愚かさを恥じた。

 

  「申し訳ございません。トーヤ様」


  ナガトが沈んだ声で言った。


  「ナガトの所為じゃない。俺の判断が間違っていただけだ。お前は良くやってくれたさ」


  悪いのはロボットの操作など碌に出来ない自分だ。

  ナガトの相棒なのに碌なフォローも出来なかったのだ。これからもナガトの主をやってゆくのであれば、自在にナガトを乗りこなす操縦士にならなければ。と、トーヤは己れに誓う。

 

  「キュ~ゥ」


  上着の中で縮こまっていたグリーンフォックスリスがひょっこり、顔を出す。

  トーヤがグリーンフォックスリスの喉元を人差し指と中指の爪先で撫でる。

  グリーンフォックスが目を細め、気持ち良さそうに喉をゴロゴロと鳴らす。

 

  「トーヤ様。兵士らしき小隊と人型ロボットが二体、それからトーヤ様のお知り合いのドワーフ達がこちらに向かっております」


  ナガトが一点を見つめ、言った。

  形成していた剣が花びらが散るようにハラハラと崩れ、帯状に形を変えた。空中をふわりふわりと浮遊し、ナガトの背中へゆっくりと吸い込まれてゆく。

  全て背中に収まると再び、ナガトの背中から帯状の束が幾重にも伸びてゆき、空中に浮かぶ。まるでナガト背中から巨大な両翼がついているように見える。

 

  「トーヤ様。ショッキングピンク色の人型ロボットが隊を抜け、こちらに向かって来ます。それを追うようにインディゴブルー色の人型ロボットもこちらに向かっているようです。どうなされますか?」


  淡々とした声音だ。ナガトが随分と落ち着きを取り戻したようでトーヤもホッと胸を撫で下ろした。


  「そう警戒しなくていいぞ。おそらく俺の妹と弟の機体だ」


  トーヤがナガトに伝えた。

  その声はどこか誇らしげで、ほんの少し寂しげだった。

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