第26話 魔力の視える青年
ーー沈黙。
投降を呼びかけたが狼型のロボットは動かない。四肢を失ったのだから当然といえば、当然かもしれない。意気消沈、戦意喪失ーー。そういった様子だ。とはいえ、油断はならない。
魔力は殆ど残っていないようだが、追い詰められた敵というのは何をしでかすかは分からない。
それでもトーヤはナガトに狼型のロボットに近くよう命じた。
狼型のロボットの鼻先まで行くと、背中が割れ、二枚の扉が左右、翼を広げたように開いた。
すると後頭部に両手を組んだ若い男がゆっくりに出て来た。
オレンジ色の明るい髪色をした短髪。白いシャツにこげ茶色のズボン、黒いブーツといった格好だ。
常に笑っているかのような細い三角眼に、スッと通った鼻筋、薄い唇といった一見、どこにでもいそうな活発そうな顔つきの若い男だ。
(ーー人間なのか)
あれだけのロボット操作技術を持つ操縦士だ。てっきり魔力容量の多い亜人だとトーヤは考えていたのだ。
トーヤはナガトに狼型のロボットの操縦士の前に降ろすよう命じる。
「貴様を拘束する」
毅然とした態度で狼型のロボットの操縦士に告げた。
すると狼型のロボットの操縦士がイタズラがバレた子どものようにニヤリッと笑った。かと思うと目を細め、小馬鹿にしたようにクックッと鼻で笑う。
「いやぁ、お噂はかねがね伺っておりますよ。随分と丁重に扱って頂けるようで、恐悦至極にございますねぇ。さすがは噂に名高いゴウトの騎士様だ」
トーヤは眉間に皺を寄せ、相手を見据える。
「ーーどんな噂なのかは知らないが、ゴウトは捕虜を丁重に扱うのは本当だ。それに関しては信用してくれていい」
トーヤはそう告げるとポーチの中から農作業用のロープを取り出し、狼型のロボットの操縦士の手を後ろで縛った。
(畑の囲いを補修するために持ってきたロープがこんな時に役立つとは……。備えあれば憂いなしとはこの事だな。ーー唯)
ーー抵抗もせず、素直に縛られた狼型のロボットの操縦士に少し戸惑っていた。こういう奴は諦めが悪い。縛る為、背後に回った瞬間、めちゃくちゃに暴れるのだろうと思っていたのだ。まぁ、大人しくしてくれていた方が此方としても助かるのだが……。若干、引っかかりを覚えつつも、自分の思い過ごしだったのだろうと己れに言い聞かし、ポーチの中から小型の銃を取り出す。
手の平にすっぽりと収まるくらいの拳銃だ。その銃口を上空に向け、引き金を引く。銃口から一直線に赤色の煙が放たれ、空に赤い花煙が咲いた。
「これはこれは。さすがは勇敢だと名高いゴウトの騎士様。このような小汚いネズミ一匹にお仲間を呼んで頂けるとは、有り難くって、有り難くって涙がでますわぁ。お坊っちゃまの号令とあらば、さぞかしお仲間がワラワラと寄って来るんでしょうなぁ」
狼型のロボットの操縦士がおどける。挑発しているのは丸分かりだが、誇り高きゴウトの騎士はこの程度で憤慨などしない。
「聞いてんのか?おい!」
トーヤは無視した。気高き騎士は一々、相手になどしないのだ。
「この腰抜け!出来損ない!」
今のはかなりカチンときたが、ここはぐっと堪えた。そう高潔な騎士とは冷静沈着でなければならない。
「テメーの主人もかなりの間抜けなんだろなぁ」
そう聞くや否や、ナガトの背中に棚引く紐状のものが瞬く間に槍状に形状を変わる。空を切り、狼型のロボットの操縦士の喉元に刺さる寸前のところでピタリと止まった。
「ーーおい、コソ泥。いい事、教えてやる。俺のお仕えするお方は誰に対しても大変お優しくてな。捕虜や罪人にすら例外じゃない。家臣にもそんな奴らすら丁重に扱うようにと命じている。俺も主人の意志を尊重したいと常々思っているのだが……」
トーヤは狼型のロボットの操縦士の頭を鷲掴みすると、ぐっと前に押し出した。
鋭利な先端が喉元に浅く刺さり、血が一筋、首を伝い落ちる。
「時に主人の意に反するのも致しかたない場合もあると。そう思わないか、コソ泥君」
狼型のロボットの操縦士の血の気が引く。この騎士は主人の命令が無ければ間違えなく自分を殺す気だと。やはりゴウトの騎士は鬼畜だという噂は嘘ではなかったのだ。狼型のロボットの操縦士は怯えていると。
「ーー冗談だ。捕虜は丁重に扱う。それが我が主の意志だから……な」
トーヤがそう言うと、喉元を刺していた槍状のものが抜けた。スルスルと解け、背中へと戻る。
ひとまず安心したのか、狼型のロボットの操縦士の力が抜ける。
「だがな。次に主を侮辱するならば、次は命は無いと思え」
トーヤは冷たい声で告げると、背を向けた。
狼型のロボットが言うように仲間を呼んだのは本当だ。
もう少しすれば、ルク達かスプライト家の精鋭部隊が到着するだろう。
そうしたら操縦士はスプライト家に連行し、狼型のロボットはルク達に頼んで運んでもらおうとトーヤは考えていた。
その時、視界が青紫色のオーラの瞬きを捕らえた。トーヤは咄嗟に狼型のロボットの操縦士を思いっきり蹴り飛ばす。
狼型のロボットの操縦士は地面に落下した。「ぐえっ」という短い悲鳴がトーヤの耳に届く。
「ふざけんなよ!テメー!なにがゴウトは捕虜を丁重に扱うだ!クソが!噂通りだ!ゴウトの連中は他国民をクソ扱いするクソ以下のカス野郎だってのはよぉ!聞いたぜ!ゴウトの騎士は捕虜の切り落とした頭を蹴り飛ばして獣の巣穴に投げ入れて死体を弄ぶっていうのをよ!さてはテメー!あれか!胴体がくっついてても関係ない!人間を蹴りたくってウズウズしちゃうっていう変態野郎か!なんちゅー野郎だ!カスが!ゴミが!異常者が!」
地面に横たわる狼型のロボットの操縦士が芋虫のように体をくねらせながら喚いた。
「ッんなことするか!馬鹿!」
そう言い、後ろに飛び退いたトーヤをナガトが素早く受け止め、操縦席に乗せる。
操縦席の扉が閉まると、周りの壁が透明に変わり、外の景色が広がる。
と、同時に キーンというガラスのコップの淵を爪で弾いたような澄んだ音が辺りに響き、次の瞬間、青紫色に光る円形の魔法陣が狼型のロボットの真上に現れた。
魔法陣からベールのような青紫色の光が放たれ、狼型のロボットの機体を覆うと、キーンという澄んだ音と共に消えた。
狼型のロボットの尻の辺りに転がっていた操縦士も今しがた起こった光景が信じられないと言わんばかりに目を見開き、機体があった一点を見つめている。
(転送魔法か!クソ!やられた!)
仲間はいるとは思っていたが、まさかこんなにも早く現れるとは!どこだ!どこにいる!
トーヤは周囲を見回す。
チカッ!っと、青紫色の光が瞬くのが目に入る。
「ナガト!」
背中の赤い紐状のものが、瞬時に絡み合い半球体の籠のような形状に形を変えると、すぐさま、横たわる狼型のロボットの操縦士を覆う。
直後、青紫色した豆粒ほどの大きさの丸い炎の塊が五、六個、狼型のロボットの操縦士を覆う籠状のものに着弾した瞬間、爆発した。
だが、ナガトの籠の壁は炎の塊が小さいせいなのか、威力が弱く、傷一つ、ついていない。
当然、中にいる操縦士も無事だ。
ナガトが背中から籠を作っている紐状のものを切り離す。すると切り離された紐状のものは自動で籠に織り込まれてゆき、あっという間に半月状の籠が完成した。
ナガトが紐状のものの先端を尖らせる。それを炎の塊が飛んで来た方向、目掛けて撃ち込む。このままいけば相手の機体の装甲を貫くはずだった。が、予想外の反応が返ってきた。
なんと相手はナガトの攻撃を叩き落としたのだ。
それが一本だけではなく、三本。最初に同時に放った二本は機体をかすめた感覚があった。次は貫くと放った三本目は完全に避けられ、四本目とまぐれだろうと、またも同時に放った五本目、六本目は見事に叩き落とされた。このままでは不味い。と、後ろに飛び退く。が、様子がおかしい。
目の前の風景がやけにゆっくり流れているように感じる。
錯覚か……いや、違う!確かに時間の流れに関しては錯覚だろうが、今、目の前で切り刻まれた木々とこっちに向かって来るロボットは錯覚じゃない!
背中から数本まとめて赤い紐状のものを引く抜き、瞬時に剣状に形成し、相手の剣撃を受け止める。
耳をつんざく大きな金属音が轟き、激しい衝撃が剣を通じて伝わる。
ーー重い。攻撃が重い。相当な力だ。どうにかこうにか凌いではいるが、少しでも気を抜けば押し負けてしまいそうだ。
しばらく競り合っていたが、徐々にナガトの踵が地面を抉りながらジリジリと後退し始めた。
ここのままでは本当に不味いと、負けじと押し返そうと剣に力を込めるが一向に止まらない。
ナガトはおそらく遠距離から中距離の戦闘を得意とするタイプのロボットだ。
機体が全体的に細っそりしているし、装甲も軽そうだ。何より決定的なのは剣や盾などの武器や防具を装備してはいない。接近戦を得意とするタイプは大抵の場合は装備しているのが普通だからだ。
相手のロボットは近接戦闘に特化した攻撃重量型だろう。理由は両手持ちの巨大な剣だ。鈍色の刀身はそれ自体でも相当な重さだと容易に想像出来る。盾は持っていない。
甲冑を纏った騎士のような姿をしたロボットだ。全身、銀色の装甲に覆われている。左の目の部分に三角形の切り込みが大きく入っており、鋭角な逆三角形の形をした白目に黒い瞳が覗く。
鋭い眼差しだ。忠義を誓う騎士の目だ。
ーーいや、そんなはずはない。ナガトの影響かもしれない。ロボットには感情が無いはずなのに。気のせいだろうと、トーヤはかぶりを振る。
まずは目の前の敵を倒すことに集中せねば。己れに喝を入れ、操縦桿を握る手に力を込める。
するとトーヤの思いが通じたのか否か、ナガトが押し止まった。
互いの刃を押し合う膠着状態が続く。
トーヤはなんとかこの状態から脱却しなければと、起死回生の策を練ろうとした時だった。魔力のオーラが視界に入る。
風魔法の色だ。ナガトが作った籠からオーラが煙のようにユラユラと揺れ立ち上る。
馬鹿な!とトーヤは己れの目を疑った。狼型のロボットの操縦士の魔力は尽きていたように感じた。魔法を使わなくても体から立ち上る微量な魔力のオーラをトーヤは感じ取ることができるのだが、使い果たすとそれらが一切感じられなくなるのだ。
両手は後ろで縛っているのでクリスタルでの魔力補充は不可能だろう。
では、どうやって……!
(キャパシティオーバーか!)
騎士型のロボットを援護するつもりなのだろう。おそらくアリサのように両手で塞がっていても魔法を発動出来るタイプだ。いい加減そうな奴だと思ったが、仲間との結束力はかなり強いようだ。いくら自分の安全を考慮せず攻撃したとはいえ、優先すべきは自分らのロボットが相手に奪われるのを阻止することであろうという考えは、この口の悪い狼型のロボットの操縦士にも分かっているはずだ。もしも立場が逆ならば、狼型のロボットの操縦士も同じ事をしたのであろうから、恨み辛みも無いのかもしれない。背中の紐を鞭状に変えて払い除けるか……イヤ、駄目だ。この状態では力の調整が難しそうだ。勢いあまって殺してしまうかもしれない。出来れば狼型のロボットの操縦士も騎士型のロボットの操縦士も生きたまま捕らえたい。
その為には一刻も早く離れなければならない。トーヤは自分の頭の中のイメージをナガトに伝える。
棚引く赤い紐状の束。それらが、ゆらりゆらりと漂いながら捻れ、先端が鋭く尖った槍状に形状を変える。五、六本、作り、放つ。騎士型のロボットの喉元と四肢の接続部に見事に突き刺さり、力が弛む。
しめた!と、トーヤはナガトにありったけの力を込めて押し切り、薙ぎ払う。
騎士型のロボットが衝撃で後方に弾き飛ばされる。
ナガトは接続部に刺した槍状のものを元の糸状の形状に戻す。接続部からスルリと抜け落ちた糸状のものを素早く背中に収納すると、地面を蹴り上げ、高く飛び上がった。
ーー刹那、世界が止まっているかのようにトーヤは感じた。
ーー空が近い。地上が遠い。深緑の森が広がっている。空中に浮かんでいるようだと。
ーーだが、不思議と恐怖は無かった。
それどころか、凪た海のように心は落ち着いていた。
トーヤはただ目の前に広がる故郷の風景に見惚れていたのだ。
ナガトは背中から赤い紐状の束が噴き出させ、鳥の翼のように広げた。
すると次の瞬間、糸が切れたかのように落下し始めた。
さっきまでの穏やかな気分が一瞬で吹き飛ぶ。
このまま地上まで一直線に急降下かとトーヤは身構えたが、すぐに降下は緩やかになる。
ーー風に乗っている。空を飛んでいる。
『ワシはもう一度、空飛ぶロボットをこの目で見たいんですじゃ』
ルクの言葉が頭によぎる。ルクの見た白銀に輝くロボットというのは、やはり八八艦隊機なのだろうかとトーヤは思った。
徐々に地面に近づいて行く。銀色に光る物体。騎士型のロボットだ。騎士型のロボットは両手で剣を構えており、どこだ!どこだ!と周囲を警戒しているようだ。
下降するナガトが剣を振り上げた。もう、すぐそこだ。騎士型のロボットの頭上、目掛けて振り下ろす。
ガンッ!という鈍い音が響き渡る。
その衝撃でナガトの重心がずれ、剣の軌道が左に逸れる。勢いを殺せず、刀身が騎士型のロボットの右肩へと落ち、そのまま右手が切り落とされ、吹き飛んだ。
ナガトの攻撃は外れたのだ。正確には外されたと言った方が正しい。
圧縮された風の塊によって。
まさか!と思い、振り向くと、そこにいたのは狼型のロボットの操縦士だった。
全身すり傷だらけで砂や土で薄汚れている。よく見ると指先は血で滲んでいる。
なんらかの方法で籠から脱出したようだ。
トーヤがそちらに気をとられている隙を騎士型のロボットは見逃さなかった。一本になった腕で剣を持ち直すとナガトの脇腹付近、目掛けて払い上げた。
巨大な鈍色の刃が迫る。
ーー回避は不可能。ならばと、ナガトは背中の赤い紐を幾重にも重ね即席の盾を形成し攻撃を受けた。刀身が激しくぶつかり合い、火花を散らす。
ナガトの背から盾に使っていない紐状のものが伸び、四本の帯状に形状を変えた。それを騎士型のロボットの刀身に巻きつけると、力一杯引っ張り、剣を取り上げた。
それを遠くにぶん投げる。回転しながら空中を舞い、地面に突き刺さった。
先にやるべきはと、背中の赤い紐を伸ばす。
狼型のロボットの操縦士をあっという間にすまきにした。
狼型のロボットの操縦士はそのまま倒れ、芋虫のように体をくねらせている。
モゴモゴと何か言っているが、口も塞がれているので何を言っているか分からない。
おそらく聞くに堪えない呪詛の類いだろう。目障りだが無視してその辺に転がしておく。
さてと、とナガトに命じる。剣を取り上げた騎士など恐れるに足らずだ。
とりあえず残りの手足を切り落として、操縦席があると思われる胴体部分を切り裂き、操縦士を引きずり出そう。そうトーヤはナガトに伝える。
ナガトは有無を言わず了承する。主人の命令だ。当然、断る道理はない。ナガトが早速、命令を実行しようと剣を形成し、振り上げる。
だが、二度ある事は三度ある。
ーー三度目の正直とはいかなかった。
ナガトの右肩と右肘に衝撃が走る。次に脇腹、腰のあたり、太ももと次から次へと衝撃が襲い、着弾した順に爆発し燃え上がる。
トーヤは辺りを見回す。
確かに騎士型のロボットは銃を持っていなかった。
引っかかってはいたが、騎士型のロボットを相手に手一杯だった為、対応策の考えていなかったのは失敗だったとトーヤは苦々しげに思い、悔いた。
だが後悔しても後の祭りだ。
とにかくその場から離れなければと、後ろに飛び退く。トーヤの目の前を小さな炎の丸い弾が流れ過ぎて過ぎてゆく。青紫色をした炎の弾丸だ。二弾目、三弾目と間髪いれず次々と撃ってくる。
弧を描き、地面を蹴って滑るようにして回避するナガトを炎の弾丸が追う。
森の中に隠れている敵を直ちに見つけ出して仕留めたいが、まるで自動的に追尾しているかのような炎の弾丸を避けながら相手の懐に入るなど、いくらナガトでも不可能だろう。どう考えても相手の射程の方が長い。おそらく遠距離型タイプのロボットだ。
だが、弾丸の威力と飛距離を考えば狙撃手の位置はそう遠くない。
甲斐甲斐しい事に仲間の危機を救おうと駆けつけて来たのであろう。
それが命取りだというのに。
トーヤは沸き立つ同情心を振り払い、改めて思案を巡らせる。
一番堅実なのは相手の魔力が切れるのを待ち、弾丸が止むと同時に一気にに距離を詰め、形成した背中の槍状のもので貫く。
ナガトのスピードならば不可能ではない。
万が一、キャパシティオーバーを起こしたとしても生命力を魔力に転換するまで若干の時間がかかるのが大半だ。
その僅か時間を狙う。ご丁寧にも相手は移動もせず、同じ位置から狙撃を繰り返している。仮に狙撃手が逃げ出したとしてもナガトのなら容易に捕らえられるであろう。
問題は騎士型のロボットだ。
きっと邪魔してくるだろう。
攻撃が止んだらすぐに騎士型のロボットをどうにかしなければな。
そんな風に考えを巡らせていると、銃撃が止む。
待ちに待った瞬間。
すぐさま、狙撃者がいるであろう方角に走り出す。
それに気がついた騎士型のロボットが駆け出す。しかし片手が無くなったせいでバランスを取るのが困難らしく足元がおぼつかない。
ナガトが背中から数本、紐状のものを引き抜き、一振りする。
すると絡み合った数本の紐状のものが一瞬でブーメランのような形に変わる。
それを片手で投げた。
弧を描き回転しながら描き宙を舞い、騎士型のロボットの背後でパッと形が崩れた。複数の帯状に形状が変わり、機体に纏わりつく。手脚は勿論、胴体や頭部もぐるぐる巻きになった騎士型のロボットは身動きが取れなくなり大きな音を立て転倒した。
煙幕かと思うほど大量の砂埃が舞う。
ひとまず邪魔者は捕らえた。後は狙撃手を捕らえるのみ。
いざ、狙撃手の元へ。ナガトが脚に力を込める。
一方、トーヤの方は地面に横たわる騎士型のロボットと狼型のロボットの操縦士を横目でチラリッと一瞥してから狙撃手が潜んでいるであろう方角に目をやった。
木々の間から青紫色が瞬く。
「ナガト!」
トーヤが叫ぶ。ナガトが背中の紐状のものを何重にも重ね盾を作り、左前方に構える。
直後、青紫色の炎の弾丸が着弾し、連続して衝撃が伝わる。
一弾目から小さな炎があがり、盾をバラして振り消す。
途端、操縦席の壁一枚隔てたトーヤ真ん前に砲口が現れた。
次の瞬間、青紫色の光が一面を覆う。
あまりの眩しさにトーヤは咄嗟に目をつぶり、顔を背けた。
轟音が鳴り響き、シートベルトをしている体が大きく揺さぶられ、強い力で後ろに引っ張られるような衝撃に襲われる。幾重にも重なる衝撃と轟音の末、ようやく止まった。
「申し訳ございません。トーヤ様。私が油断していたばかりに敵の砲撃を防げませんでした。全ては私の不徳、故の誤ち」
ナガトが声が悲しげに揺れる。
どうやら敵の攻撃を受け、ナガトの機体が吹き飛ばされたらしい。
仰向けに倒れているらしく木々の枝葉と空が視界に入る。
「気にするな。それより早く敵を打ちに行くぞ」
「了解、致しました」
ナガトが起き上がり、視界が揺れる。
地面を蹴り、駆ける。




