第119章:馬車の窓から見えた世界 - 二つの戦場が同じ空の下に
序章 - 同じ空の下
王が馬車に乗っている時。
王国は動き続ける。
王がいなくなったからといって。
太陽は止まらない。
商人は商売をやめない。
市民は眠ることをやめない。
王国とは。
王がいる場所ではない。
王国とは。
王がいなくても動き続ける場所だ。
だから私は出かけた。
三日間。
安心して。
第一章:緊急会議 - 出発の前に
宮殿の大会議室
集まっていた。
二十五以上の存在が。
朝の光の中で。
リスカレスが最前列にいた。
十二体の魔王が両脇に並んでいた。
九尾の狐の長クロガネが。
黄金の髪を後ろに束ねて。
真剣な顔で立っていた。
私は席に座らなかった。
立ったまま全員を見た。
「今日から数日間。」
私は言った。
「私はアクアとハナを連れて。」
「外へ出る。」
「最初の目的地はシルバームーン連邦だ。」
誰も声を上げなかった。
しかし空気が動いた。
同じ懸念が。
全員の中に生まれた。
「私が戻るまで。」
私は続けた。
「リスカレスの命令に従え。」
「全員。」
「例外なく。」
全員が頭を下げた。
一斉に。
「はい。」
と言う声が重なった。
第二章:クロガネの懸念
「待ってください、マスター。」
クロガネが一歩前に出た。
「一人では危ない。」
クロガネは言った。
「外には何があるかわかりません。」
「誰かを連れていくべきです。」
「そうだな。」
私は言った。
「では誰を連れていくか。」
「提案してくれ。」
「私が行きます。」
クロガネは即座に言った。
手を上げながら。
「お前はだめだ。」
私は言った。
クロガネは止まった。
予想していなかった返答だった。
「なぜですか。」
「九本の尾がある。」
私は言った。
「目立ちすぎる。」
「旅を楽しみに行くのに。」
「人に見られるだけでは意味がない。」
クロガネは。
言いかけた。
「尾を隠すことはできます—」
「完全には隠せない。」
私は言った。
「気配が残る。」
「わかる者にはわかる。」
クロガネは黙った。
納得していなかったが。
反論できなかった。
私はクロガネを見た。
「お前の仕事はここにある。」
私は言った。
「王国を守ることが。」
「旅の護衛より重要だ。」
クロガネは深く頭を下げた。
「...わかりました。」
その声に。
悔しさがあった。
しかし従う意志もあった。
それが忠誠というものだった。
第三章:護衛の選択
「私の配下に。」
リスカレスが言った。
「一人います。」
「誰だ。」
「上位悪魔の女性です。」
リスカレスは言った。
「人間の姿に完璧に化けられます。」
「気配を完全に抑えられます。」
「どんな者にも悪魔とわかりません。」
「強さは。」
「Sランクです。」
「ただし。」
「見かけは普通の人間の女性です。」
「それがいい。」
私は言った。
「呼んでくれ。」
リスカレスは影に向かって何かをした。
影が凝縮した。
実体になった。
セラフィーネが現れた。
外観:
黄金色の髪が肩まで流れていた。
青い目が穏やかに見えた。
メイド服を着ていた。
緑と黒の。
端正な服だった。
誰も見ただけでは。
悪魔とわからなかった。
普通の若い女性にしか見えなかった。
「リスカレス様。」
セラフィーネは頭を下げた。
「お呼びですか。」
「マスターの護衛を頼む。」
リスカレスは言った。
「旅の間ずっと。」
「片時も離れるな。」
「はい。」
セラフィーネは言った。
「必ず守ります。」
リスカレスはセラフィーネを見た。
その目が。
真剣を超えていた。
「もしマスターに何かあれば。」
リスカレスは言った。
「わかっているな。」
セラフィーネは頷いた。
「わかっています。」
「そうならないようにします。」
脅しと承諾が。
一秒の間に交わされた。
第四章:馬車の準備
「馬車を用意しろ。」
私は命令した。
三十分後。
宮殿の中庭に。
白と金の馬車が来た。
四頭の白い馬が引いていた。
魔法的に強化された馬だった。
長距離を速く走れた。
疲れにくかった。
馬車の外装は豪華だった。
しかし過度ではなかった。
金の飾りが所々についていた。
ランタンが二つ下がっていた。
「これが旅をする時の馬車か。」
アクアが言った。
初めて見るものを見る目で。
「そうだ。」
私は言った。
「大きい。」
アクアは言った。
「四人乗れる。」
「四人。」
アクアは繰り返した。
人数を数えた。
私。アクア。ハナ。セラフィーネ。
ちょうど四人だった。
ハナが馬車の周りを。
飛び回っていた。
翅を高速で動かしながら。
「かわいい!」
ハナは言った。
「金の模様が!」
御者が静かに待っていた。
経験豊富な老人だった。
何も言わずに。
ただ手綱を持って待っていた。
第五章:見送り
宮殿の中庭
見送りの者が集まっていた。
スタッフが並んでいた。
警備兵が整列していた。
何人かの市民が遠くから見ていた。
リスカレスが前に立っていた。
十二体の魔王がその後ろに。
クロガネがさらに後ろに。
まだ少し悔しそうな顔で。
全員が手を振っていた。
「行ってらっしゃい!」
という声が重なっていた。
アクアとハナが。
馬車の窓から。
力いっぱい手を振り返していた。
「バイバイ!」
ハナは叫んだ。
「皆さんバイバイ!」
アクアも手を振っていた。
最初は遠慮がちに。
しかし次第に。
力強く。
私は窓から。
一度だけ手を上げた。
全員に向かって。
リスカレスと目が合った。
何も言わなかった。
ただ頷いた。
リスカレスも頷いた。
それだけで十分だった。
馬車が動き始めた。
ゴロゴロと低い音を立てて。
中庭を横切った。
門をくぐった。
振り返れば。
まだ全員が手を振っていた。
アクアはそれを最後まで見ていた。
門が閉まるまで。
ずっと。
第六章:リスカレスの仕事
宮殿 - 作戦室
馬車が見えなくなった。
リスカレスは振り返った。
表情が変わった。
柔らかさがあった場所に。
硬さが戻った。
「配置につけ。」
リスカレスは言った。
全員に向かって。
全員が動いた。
十二体の魔王が。
それぞれの持ち場へ向かった。
イグニスは南の門へ。
アズラエルは北の門へ。
マルパスは影の中に溶けた。
全体を監視するために。
クロガネが言った。
「私はどこへ。」
「東の高台だ。」
リスカレスは答えた。
「見渡しが一番いい。」
「お前の眼が必要だ。」
クロガネは頷いた。
「わかりました。」
それだけで動いた。
不満は。
仕事に変えた。
リスカレスは一人になった。
作戦室で。
「今日の夜半。」
呟いた。
「聖軍が来るか来ないかが決まる。」
来るなら何が来るか。
女神か。
軍か。
使者か。
どれでも対応できる。
準備はしてある。
ただ。
最も望ましいのは。
女神が頭を下げて来ることだった。
マスターが戦争を望まないから。
そのために。
リスカレスは。
恐怖を植えに行った。
それが機能したかどうかが。
今日の夜半にわかる。
第七章:馬車の中 - 外の世界
王国から三十分後
窓の外が変わっていた。
王国の建物が消えた。
代わりに。
広い野原が広がっていた。
小麦が風で揺れていた。
黄金色の波が。
どこまでも続いていた。
アクアは窓に顔を近づけた。
ガラスに触れるほど。
「これが外の世界。」
アクアは言った。
独り言のように。
「どう思う。」
私は聞いた。
アクアはしばらく黙っていた。
「広い。」
最終的に言った。
「王国の外は感じていたが。」
アクアは続けた。
「見ていなかった。」
「どういう意味だ。」
「三万年。」
アクアは言った。
「存在していましたが。」
「封じられていてからは。」
「何も見えなかった。」
「ただ時間が流れるのを感じるだけでした。」
「それは辛かっただろう。」
アクアは少し考えた。
「辛いという感情があったかどうかも。」
アクアは言った。
「わかりません。」
「ただ。」
「今の方がいい。」
「それはわかります。」
「それで十分だ。」
私は言った。
ハナが窓から叫んだ。
「あ!鳥!群れてる!」
アクアが向いた。
白い鳥が。
数十羽。
空を旋回していた。
朝の光の中で。
翼が銀色に光っていた。
「きれい。」
ハナが言った。
「きれい。」
アクアが繰り返した。
同じ言葉を。
違う温度で。
セラフィーネは窓の外を見ていた。
美しさではなく。
脅威がないかを確認しながら。
しかしそれでも。
鳥の群れを見る時だけ。
一秒だけ。
その目が柔らかくなった。
第八章:道中の会話
一時間後
山の麓を通っていた。
木々が増えてきた。
緑が濃くなってきた。
ハナが私に聞いた。
「マスターはシルバームーン連邦に行ったことありますか?」
「ある。」
私は答えた。
「どんな場所でしたか?」
「静かだ。」
私は言った。
「エルフは急がない。」
「すべてに時間をかける。」
「それが最初は奇妙に思えるが。」
「慣れると心地いい。」
「木が光るんですよね。」
ハナが言った。
「夜になると。」
「そうだ。」
私は言った。
「シルバームーンの木は。」
「月の光を蓄えて。」
「夜に放つ。」
「青白く光る。」
「森全体が光源になる。」
アクアが聞いていた。
「なぜ光るのですか。」
「エルフが何千年もかけて。」
私は言った。
「木と話し合ったからだ。」
「話し合う?」
「エルフには木と話す力がある。」
私は言った。
「何世代もかけて。」
「木に光を宿すよう頼んだ。」
「木が了承した。」
「それが今の森になっている。」
「木が了承した。」
アクアは繰り返した。
「植物にも意志がある。」
「ある。」
私は言った。
「ただ人間には聞こえないだけだ。」
アクアは窓の外の木々を見た。
「...聞こえる。」
アクアは言った。
小さく。
「何と言っている。」
「今日は暖かいと。」
アクアは言った。
「それだけです。」
ハナが目を丸くした。
「アクア姉すごい!」
「三万年あれば聞こえるようになる。」
アクアは言った。
淡々と。
私は笑った。
第九章:夜半の王国 - リスカレスの待機
ドラゴンハート王国 - 夜
時計が夜半に近づいていた。
リスカレスは正門の前に立っていた。
一人で。
空の下で。
気配を感じた。
遠くから。
複数の気配が。
「来た。」
リスカレスは思った。
使者だった。
三人の使者が。
聖軍の紋章を持って来た。
門の前で止まった。
「ドラゴンハート王国に。」
使者が言った。
「女神様がお越しになる準備がととのった。」
「明朝に。」
「謝罪の意を持って。」
リスカレスは使者を見た。
長い間。
「わかった。」
リスカレスは言った。
「迎えの準備をする。」
使者は頭を下げた。
「よろしくお願いします。」
「一つだけ聞く。」
リスカレスは言った。
使者は待った。
「謝罪は本物か。」
使者は少し間を置いた。
「...本物です。」
最終的に言った。
「そうか。」
リスカレスは言った。
「では明朝。」
「正門で迎える。」
使者たちは去った。
リスカレスは空を見た。
星が出ていた。
「マスター。」
リスカレスは思った。
「こちらは大丈夫です。」
そして。
作戦室に戻った。
今夜はまだ仕事があった。
第十章:エルフの門 - 到着
シルバームーン連邦の境界
三時間が経った。
馬車が止まった。
「着いたか。」
私は言った。
窓の外を見た。
木が変わっていた。
突然。
別の種類の木になっていた。
幹が銀色だった。
葉が薄く。
光を通していた。
「あ。」
ハナが言った。
「あ。」
アクアが言った。
同時に。
同じ言葉で。
木が光っていた。
昼間なのに。
青白い光を。
薄く放っていた。
夜はもっと輝くだろうと。
想像できた。
門があった。
石でできた門だった。
しかし蔓が覆っていた。
その蔓にも。
小さな光の粒が散っていた。
門番のエルフが二人いた。
馬車を見た。
近づいてきた。
「お名前を。」
エルフが聞いた。
礼儀正しく。
私は窓から答えた。
「ドラゴンハート王国のヴィカースだ。」
「訪問の許可を得ているはずだ。」
エルフは少し確認した。
何かを読んだ。
「確認しました。」
エルフは言った。
「お待ちしておりました。」
「どうぞお入りください。」
門が開いた。
音がほとんどなかった。
エルフの門は。
錆びない。
きしまない。
ただ静かに開く。
馬車が進んだ。
境界を越えた瞬間に。
空気が変わった。
「あ。」
ハナが言った。
三度目の「あ」だった。
「何だ。」
私は笑いながら言った。
「空気が違う。」
ハナは言った。
「甘い。」
「花の成分が多い。」
アクアが言った。
「複数の種類の花の香りが混ざっています。」
「識別できます。」
「何種類。」
私は聞いた。
アクアは少し考えた。
「十七種類。」
「正確だな。」
「実際に数えました。」
私はアクアを見た。
三万年分の感覚が。
今この瞬間に。
使われていた。
「楽しいか。」
私は聞いた。
アクアは。
一秒だけ私を見た。
「...はい。」
言った。
短く。
しかし確かに。
エピローグ - 二つの夜が同時に
その夜。
二つのことが同時に起きた。
シルバームーン連邦では。
エルフの宿屋で。
アクアが窓の外を見ていた。
森が光っていた。
青白い光が。
すべての木から放たれていた。
ハナがベッドから叫んだ。
「見て見て!きれい!」
アクアは返事をしなかった。
ただ見ていた。
長い間。
三万年で。
初めて感じる種類の何かがあった。
美しいというより。
穏やかだった。
世界が優しく見えた。
私はその横で。
お茶を飲んでいた。
「アクア。」
私は言った。
「何ですか。」
「良かったか。」
アクアは少し間を置いた。
「来て良かったです。」
言った。
「そうか。」
私はお茶を一口飲んだ。
同じ時間に。
ドラゴンハート王国では。
夜明け前に。
リスカレスが正門の前に立っていた。
遠くに気配があった。
大きな気配が。
徐々に近づいていた。
「来た。」
リスカレスは思った。
門の向こうに。
光が見えた。
聖なる光が。
夜の闇の中を歩いてきた。
リスカレスは動かなかった。
ただ待った。
「主は平和を好む。」
リスカレスは思い出した。
バウンティタワーで言った言葉を。
「だから今日は礼儀正しく迎える。」
しかし。
腰の剣には手が触れていた。
いつでも抜けるように。
それが。
平和を望む者の。
正しい姿だった。
シルバームーンの森が光っていた。
ドラゴンハートの門が静かに立っていた。
同じ星の下で。
二つの夜が。
それぞれの形で。
動いていた。
【予告】1500話の旅路、そして5つの結末——ヴィッキーは"呪われた島"の賢者を見つける
皆さん、こんにちは!
「ダークコンチネント:生きる大陸と至高の支配者」の作者です。
今日は少しだけ——
先の未来について話そうと思います。
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◆ この物語は、1500話続きます
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長い旅になります。
海を越え、
島を越え、
時間さえも越えて——
この物語には——
「5つの結末」が用意されています。
そのうちの——
一つだけを、今日は話します。
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◆ 結末その一——賢者との邂逅
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海賊たちと共に
航海を続けるヴィッキー。
彼はやがて——
誰も辿り着けなかった場所——
「呪われた島」に足を踏み入れる。
その島は——
地図に存在しない。
ログポーズも通用しない。
永遠世界の導きすら届かない。
ただ一つの方法でしか——
辿り着けない場所。
そこにいるのは——
創造と流転を司る
至高竜シェンロンが生み出した
「至高の賢者」。
願いを叶える者。
運命を書き換える者。
存在そのものを超越した者。
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◆ ここで、疑問が生まれる
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なぜ——
ヴィッキーが選ばれたのか。
なぜ——
誰も見つけられなかった島が、
彼の前にだけ姿を現したのか。
賢者は、彼に何を語るのか。
何を与え、何を奪うのか。
そして——
この出会いが、
物語全体にどんな意味を
持つのか。
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◆ 残る、4つの結末
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今日話したのは——
5つのうちの、たった一つ。
残る4つの結末は——
まだ、誰も知りません。
「もう一つの結末は
もっと悲劇的なのでは?」
「ヴィッキーが
賢者にすら勝つ結末があるのでは?」
「もしかして——
彼自身が"島"になる結末も?」
皆さんの想像力を——
聞かせてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1500話の果てに——
何が待っているのか。
それを知るのは——
最後まで読んだ者だけです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
毎日19:00更新中。
「残りの4つの結末は何だと思う?」
コメントで予想を聞かせてください。
お楽しみに!
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