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最恐の弱点  作者: MANAM


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最恐の藤宮家

芦浦市には藤宮家と言う代々続く名家がある。


藤宮家令嬢、金髪ショートボブの中学二年生藤宮香凜(ふじみやかりん)は、同級生の黒髪三つ編みおさげの高木美柑(たかぎみかん)と一緒に藤宮家のお屋敷へと帰ってきた。


今日は香凜の部屋でテスト勉強をするために美柑も藤宮家へとやってきたのだ。


「もうすぐテストかぁ…自信ないなあ…」


スニーカーを脱ぎながら不安そうに言う香凜。


「だから勉強するんでしょ。わからない所はあたしが教えてあげる。お姉さんに任せなさい!」


香凜の隣に座り自信満々に自分の胸を叩きそしてスニーカーを脱ぐ美柑。


「お姉さんって! 生まれたの一日と八時間しか違わないじゃん!」


あはは、と二人で笑い合い、するっぽんと脱いだ二人のスニーカーからは見事に蒸れた裸足がお目見えした。


香凜は美柑の裸足を凝視して「おお!」と美柑に気付かれないよう小さく興奮し、気付かれないよう鼻をくんくんさせて裸足から放たれる健康的な芳香を摂取しようとする。


そう、香凜は何を隠そう変態である。


二人は小さい頃から山の中で駆け回り、木登りする時に靴も靴下も脱ぎ捨てていたため、


「あれ? 靴下いらなくない?」


と言う裸足でいいじゃん結論に小学四年生の時に至り、それ以来靴下を履くのをやめたのだった。


しかしそこで困ったのは二人の母親である藤宮ざくろと高木柚月だ。

娘二人の元気っ娘ぶりにほとほと困り果てていた所に、一生裸足宣言をしたものであの手この手で靴下を履かせようとしたのだが、


「ママ達もいつも裸足じゃない」


と言う香凜の反撃に負け、香凜と美柑は一生裸足を勝ち取ったのであった。


二人は裸足をペタペタと鳴らし香凜の部屋へと向かう。


途中座敷の前を通ると中で鎮座していた藤宮家現当主、見事な金髪ロングストレートヘアの母ざくろが、二人に気付きガラス障子を開けて座敷から出て二人の背中に声をかける。


「香凜ちゃん、美柑ちゃん、おかえりなさい」


柔和な笑顔で挨拶するざくろに頬を真っ赤にして見惚れ、深々とお辞儀して挨拶をする美柑。


「香凜ママ! ただいま帰りました! お邪魔致しております!」


ざくろはそんな美柑を愛おしそうに見つめ、香凜は呆れ顔でそれを見つめる。

美柑にとって香凜の母ざくろは憧れの存在であり、目指すべき人物として尊敬しているのだ。


「後で香凜ちゃんのお部屋にお菓子を持って行かせましょうね」


「ありがとうございます!」


ざくろの言葉に満面の笑みで答える美柑。


「じゃあ、美柑ちゃん。この靴下はあたしからのプレゼント…」


「あ、いらないです」


先程までの憧れの眼差しは一瞬でスン、と消えざくろに背を向けスタスタと香凜の方へ歩み出す美柑。

二人はそのまま部屋と向かい、廊下には両手に靴下を持ったざくろだけが残された。


「くつした…」


廊下とざくろの心に寒風が吹き抜けるのであった。


香凜の部屋へ入った二人はミニテーブルを取り出しノートを置き早速勉強を始めるかと思いきや、香凜は正座する美柑に膝枕をしてもらい、その顔を笑顔で見上げる。

美柑は少し厳しい表情を浮かべ香凜を見下ろし言う。


「べ・ん・きょ・う!」


「そ・の・う・ち!」


ため息を吐きながら呆れ顔の笑顔を浮かべ香凜のほっぺをムニムニする美柑。

そしてムニムニされながら香凜は何かを思いついた表情を浮かべ美柑に提案する。


「じゃあ、あたしが昨日の美柑の家の晩ごはんが何だったか当てたらもうちょっと膝枕して!」


「もう…! まあいいよ。当てられたらね!」


やった!と言うや香凜はうつ伏せになって美柑の膝に顔を埋め、合法的に健康的な芳香を摂取し始める。

美柑はその間にテーブルの上に二人分の筆記用具や教科書を揃え用意し、テスト勉強に備える。


「わかった! 昨日の晩ごはんは馬刺しだ!」


香凜は仰向けに向き直り自信満々に答える。美柑はすぐに正解を言わずしばらくためた後、


「ぶぶー! 残念! 昨日はカレーライスでしたー!」


「うわあ! おしい!」


どこが! と笑いながらムニムニし終わると香凜は飛び起きてテーブルの向こう側、美柑の対面に正座してペンを手に取った。


「しょうがない。始めますか!」


美柑の臭いが大好きな変態娘の香凜ではあるが、満足すればきちんと勉強もする真面目な性格でもあった。


しばらく部屋の中には静かにカリカリと言うノートを取る音だけが聞こえていた。時折わからない所を美柑に聞き、そしてまた教科書とノートに集中する。


すると外の廊下から部屋に近付いてくる足音が聞こえ、ガラリとガラス障子が開けられる。

茶髪ポニーテールでジト目の高校生くらいの割烹着を着たお手伝いさんバイトの女の子が、ざくろに言われお菓子と飲み物をお盆に乗せ運んできてくれた。


「どうもー…ジト目屋で〜す」


やる気無さそうにまるで何かのお店の配達のように言うと、まずお盆を部屋の中へ入れると、次いで自分も部屋へと入り正座してお菓子と飲み物をテーブルの上に置いてくれる。


「メイちゃん、ありがとう!」


香凜はお菓子をポイと口に入れながらメイちゃんと呼んだお手伝いさんにお礼を言う。


「あたしの名前は皐希(さつき)だと何度言えば…」


「だからメイちゃん!」


何が「だから」なのかとやる気無さそうにため息を吐くと、美柑がクスクス笑って皐希を労う。


「ありがとうございます、皐希さん。今日も相変わらずのやる気の無さで安心します」


「はあ…やる時なさとジト目は母からの遺伝なんで」


やる気無さそうに答え全てを置き終えると、皐希は次いでざくろに持たされたストッキングを手に持ち二人に見せた。

二人の表情はまるでゲテモノでも見るかのようにみるみる変わっていく。


「これ、履きます?」


『履かない!』


やる気無さそうに言う皐希に声を揃えて断固拒否する香凜と美柑。


「ですよねー」


そう言うと皐希はストッキングを伸ばして見せると、そのストッキングはすでに伝線しており履ける状態では無くなっていた。


「さすがメイちゃん! わかってる!」


「皐希さん! 素敵です!」


香凜と美柑は惜しみない賞賛を贈り、皐希もやる気無さそうに満更でもない表情を浮かべた。


「これだけ気配りできるんだから、メイちゃんって学校の男子からもモテモテじゃない?」


「ね! あたしが男の子だったら好きになっちゃう!」


ベタ褒めされてやる気のない皐希もさすがに頬を染めはにかむ様子を、香凜と美柑は嬉しそうに見つめる。


「男の子って言えば今日帰り道あたし達ナンパされちゃったね!」


「そうね。あたし達の足を見て目のやり場にこまってたわ。あれは隣中の制服だったわね」


呑気に言う二人の言葉に皐希の顔は赤から青に変わりそして真っ暗になると目から光が消え、やる気の無い表情は狂気を纏った無表情に変わる。


皐希は無言で立ち上がり部屋を出ると、静かにガラス障子を閉めて全速力でざくろの鎮座する座敷へと向かう。


「姐さん! 大変です! お嬢様方が…!」


「んだとぉ!? あたしの大事な香凜と美柑に悪い虫がくっつきやがっただと!? どこのどいつだ! そのフンコロガシは!」


皐希から二人のナンパ被害(?)情報を聞き激昂するざくろ。


「おう! 野郎ども! 道具だせ! 害虫狩りだ!」



『ははっ!』



ざくろの号令にどこからともなくサングラスに黒スーツの藤宮家の使用人であるイカツイお兄さん達が現れ、その手には凶器(射的銃、金魚すくいのポイ、生とうもろこし&トング)が握られすでに臨戦体制であった。


ざくろと皐希も駄菓子の『うまうまスティック』と『じゃがぽっきり』を手に出陣する。


「いくぞテメェら! 目指すは隣中! 奴らを血祭りにしてやんぞ!」


「祭りだ! 祭りの始まりだぁあああ!」


ざくろと皐希が鬨をあげ金髪ロングと茶髪ポニテを靡かせて黒スーツを率いて屋敷の長廊下を行進する。

ただただナンパされただけで大騒ぎの藤宮家。


騒ぎに気付いた香凜は、「ママ! やめて!」と必死にしがみつき、美柑はざくろを見て「かっこいぃい〜!」と目を輝かせる。


今日も今日とても藤宮家は狂気に満ち、最恐に平和(?)であった。

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