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収穫祭の魔女  作者: れいてんし
Episode 1. Halloween Witch Lavinia
16/251

Chapter 16 「盾」

 6人になってから半日ほど遺跡を歩いただろうか?


 例の低予算モンスターを倒してからは敵の出現はない。


 戦闘の痕跡自体は床や壁に残されているので、何者かが戦闘していたということはわかるが、敵の残骸もなければ味方に出会うことも出来ない。


「誰もいませんね」

「流石におかしくない? いくらなんでも人がいなさすぎるんだけど」


 それもそうだ。


 この遺跡の中には50人ほどの人間が歩き回っていないとおかしいはずだが、今のところはハセベさんチーム、ウィリーさんチーム、襲撃者達、俺達の12名しか確認できていない。


 襲撃者の会話内容からして、他に最低1チームが倒されている可能性はあるが、それを考慮しても15名。

 30人以上が行方不明である。


 恥ずかしい服チームや第4チームはどこに行ったというのだ?


 全員がモンスターに倒されたり殺し合ったりしたとしても、オウカちゃんのような戦闘の痕跡が残っているはずだろう。

 何もないのは流石におかしい。


 だが、今はそれを確認する手段がない。

 今は兎に角「ゴール」を目指して、この危険な領域から脱出するしかない。


「最後に部屋を出たのは君達のはずだが、何か気付いたことはなかったかね?」


 ハセベさんがモリ君に尋ねた。


「俺達の前は子供2人と中年男性のチームでした。最初のチームが出てから3時間くらい遅れていたので、その人達は近くにいるとは思っていたんですが」

「そう言えば小学生くらいの子供が2人いたな。何となく覚えている」

「2人ともずっと泣いていました。きっと助けが来るはずだと励ましてはいたんですけど」


 小学生までいたのか?

 もしかしたら俺と同じで外見と年齢が一致していないパターンなのかもしれないが、もし一致しているのならば、そんな年齢の子供までこんなところに召喚した超越者には吐き気がする。


「出来れば子供は助けてやりたいが」

「そう言ってもどこにいるのやら」


 下手をすると、その子供2人が「余り2」として最後まで残る可能性が有ったのか。

 もしかしたら、超越者は最初からそのつもりだったのかもしれない。


 足手まといとして分かっていて子供を連れて行く人間の善性を信じるか、それとも子供は足手まといとして切り捨てるか。

 実際にはほぼ最後まで子供が残ったということは後者だったのだろう。


 ただ仕方ないところもある。

 こんな状況であからさまな足手まといを連れて行くという選択肢を取れないのは仕方ない。


「もしかしてモリ君とエリちゃんが最後まで残ったのって……」

「だって、子供だけを残して俺達だけで出られないでしょう」

「ちょっとだけ……なんで子供が助かって私達は助からないんだろうって恨んだこともあるから、あまり大きなことは言えないけどね」


 俺はたまらずモリ君とエリちゃんを抱きしめた。

 本当にこの子達が俺の仲間で良かった。


 この優しい2人はなんとしても日本へ……元の生活へ帰してやりたい。


「子供達もそのうち居場所を見つけて日本へ連れて帰ろう。こんなろくでもない世界に取り残されて良い理由なんてない」

「そうですね。絶対助けましょう」

 

   ◆ ◆ ◆


 遺跡の細い通路を進むと、俺達の行く手を阻むように巨大な両開きの扉が姿を現した。

 引いて開けるタイプの扉だ。


「なんか急にもったいぶった演出で現れたな」

「通路もここで行き止まりで分岐はなし。これは明らかにボス部屋では?」

「その可能性は高いな」


 扉を開ける前にまずは作戦だ。


「もし中にボスがいる場合には俺の最大火力で勝負を仕掛けます」


 相手が何であれ、俺の「魔女の呪い」を初っ端に出すのが正解だろう。


 熱線は圧倒的な攻撃力があるが、発動前に無差別の生命体を黒い霧に変えて吸収する「収穫」に岩をも蒸発させる超高熱の熱線。どちらも味方を巻き込む可能性があるので乱戦では使えない。


 ただ、それが使えなければ俺は攻撃力も身体能力も低い、単なる役立たずだ。


「だから、扉を開けたら全員部屋の隅に散ってください。俺の攻撃で仕留めきれない場合には全員で仕掛けてください」

「では、ウィリーさんとガーネット君は中距離支援を。私とモーリス君で接近戦を仕掛けよう」


 ハセベさんがフォーメーションの確認を取る。


「私は?」

「エリス君の単体攻撃力は我々の中で最強だ。私とモーリス君で撹乱して隙を作るので、ヒット&アウェイで攻撃を加えて欲しい」

「りょうかい! そういうのは得意だから」


 作戦は決まった。

 モリ君とハセベさんが扉の取っ手をそれぞれ持って扉を開く。


 その間に俺は鳥を5羽喚び出し「魔女の呪い」の発射準備を始める。


「3、2、1の1で開くぞ」

「はい。ではカウントダウンどうぞ」

「3……2……1」


 2人が扉を開いたと同時に箒を構える。


「作戦開始!」


 俺の声を合図に全員が室内へ飛び込む。


 そこは巨大な礼拝堂のような形状になっていた。


 天井はかなり高く丸い形状になっている。

 部屋の中心部はかなり広い空間になっている。ホール全体で直径20mはあるだろう。


 壁から5mほどの距離には等間隔に直径2mほどの巨大な石の柱が何本もそびえている。


 そして部屋の中央には、まるでSF映画に登場するような銀色に鈍く輝く戦車のようなものが鎮座していた。

 戦車の中央にはまるでガトリングガンのような機関砲が取り付けられている。

 

 その上にはまるで運転席のような黒いキャノピーのようなものが取り付けられている。


 もちろん、こいつがただの置物でないことはわかる。

 俺達が扉に入ったと同時に、機械の手足を動かすモーターの回転音が聞こえ始めたからだ。


「なんだこいつは?」

「世界観どうなってんだよ!」


 何がなんだかわからない。

 この世界はファンタジー世界ではなかったのか?


 先程の低予算はまだギリギリファンタジーの代物だったが、このSFロボはもはやファンタジーではない。

 最終ファンタジーだ。

 ジャンルが迷子だ。


「敵の正体は不明だ。まずは慎重に敵の動きを探る」


 全員がそれぞれ部屋の隅に散っていく。

 これならば奴が動き出したところで一網打尽にされることはない。


 今朝の戦闘で浮かび上がった光る紋様は消えず、まだ全身に残ったままなのは気になるが、今はそんな細かいことを気にしていられる状況ではない。


「仕掛けるぞ! 全員射線上に並ぶなよ!」


 群鳥5羽を召喚。そして2羽を解放(リリース)


 光り輝く鳥の2羽が霧と化して宙に消える。

 残り3羽は頭上に移動させて旋回で待機させておく。


「いっけえぇぇ!」


 箒から放たれた虹色の光はそいつの表面に当たったが、表面を少し燻らせただけで消えた。


「あ、あれ? 黒い球体は? チャージは? 収穫は?」


 箒から発射されたのは単なる3番目のスキル「極光」である。


 魔女の呪いの発動させると出現するはずの黒い球体は結局現れず「収穫」も始まっていない。


 2羽消費だけだと発動にエネルギーが足りないのだろうか?


 それともこの魔女の呪いもチャージタイムが必要で、チャージ中を示すサインがこの身体の紋様なのか?


 理由は分からない。

 ただ、魔女の呪いの発動を完全に失敗したことだけは分かる。


 そして、失敗の原因を考察するような時間などない。


 銀色の戦車のようなものがモーター音を更に大きく鳴らし始めたからだ。


 戦車の側面に工事用重機のアーム部分を脚部として無理矢理取り付けたような歪な構造のそのロボは、油圧シリンダーを上下させながら二本の足で立ち上がった。

 

「二足歩行ロボ!?」


 そいつの前面に付いた機関砲と思しき部品がゆっくりと回転を始めた。

 銃口は箒を構えて正面に立っている俺に向いている。


 まずい。

 あの機関砲を発射されたらこっちは逃げ道がない。


 モリ君達はロボに近接戦を仕掛けるために四方へ散ったばかりだ。

 俺のフォローに入ってもらえるとは思えない。


 今の俺を助けられる者は誰もいない。

 ラヴィの足で逃げられるか?


 ――いや無理だ。ラヴィの脚力などたいしたことない。

 逃げるために走り出したところで機関砲の的にしかならない。


 このままだとあの弾丸の雨を食らって――死ぬ。


「ラビちゃん!」


 エリちゃんが脚力強化スキルを使って、攻撃を阻止スべくSFロボに突撃していったが、流石にヤツの初撃を防ぐには間に合わない。

 

 何か、何か手を考えろ――


 極光は使ったばかりで再始動には三分の待機が必要。


 クッキーはこの場合役に立たない。


 鳥も出したばかりであと十数秒は待機が必要……。


 頭上を改めて見上げる。

 そこには旋回させて待機させている鳥が3羽。


 今の俺に使えるカードはこれだけだ。


 3羽の鳥を俺とロボとの直線上の位置に移動させる。

 鳥を壁代わりにしたところで、どれほど機関砲による攻撃を防げるかは分からない。


 それでも何もしないよりはマシのはずだ。

 少しでも弾丸の直撃を防いでくれたら、即死は免れるかもしれない。

 3羽を盾に――


 《まだ力の使い方が分からないの?》

 《(シールド)


 誰かの声が聞こえた。だが、その声の主は分からない。


 ロボに装備された機関砲からタンタンタンと妙に軽い音と共に弾丸が発射された。

 無駄な抵抗と分かってはいたが、思わず両手で頭を覆ってうずくまる。


――いつまで経っても銃弾は来なかった。


 ロボに装備されている機関砲から発射された弾丸は、3羽の鳥の間に作られた正三角形の青白く光る「壁」に阻まれ「僕」にまでは届いていなかった。


 機関砲から発射された弾丸は光のバリアの手前で全て斜め方向に弾道を逸らされていた。

 まるで盾の手前に見えない何かが出現して、それに当たって弾かれているようだ。


(自分で出しておいて何だが、こんなことまで出来るのかよこの鳥は……超越者はマジで事前に説明しろ!)


 だが、その光のバリアは銃撃を弾く度に青く輝く粒子を散らしながら、どんどんと薄くなっている。

 今のペースで攻撃を受け続けると、直に破られるだろう。


 《僕》は箒に跨がる。

 この際、食い込んで痛いなどと言ってはいられない。


 幸いにもこのホールのような場所は意外と天井が高いので、箒で飛び回って逃げるのにはちょうど良い。


 僕が全力で飛翔したのと、バリアが消えたのはほぼ同時だった。


 離脱すると同時に今までいた場所に機関砲の弾丸が着弾した。

 煙をもうもうと上げながら石畳を削っていく。


 僕への追撃は……ない。


 箒を宙返りさせて真下にいるロボットを見下ろすと、機関砲は胴体に据え付けのために仰角を変更できないということに気付いた。


 ロボットは僕を攻撃したいのだろうが、空中にいる僕へ攻撃を当てる術を持ってはいない。

 これは欠陥品。

 まともに正面から相手をする方が無駄というもの。


「よくもラビちゃんを!」


 エリちゃんが勢い良く飛び上がり、流星のような速さの飛び蹴りをロボの側頭部へと直撃させた。

 ロボは大きく前方をつんのめったようにバランスを崩した。


 キャノピーの保護をしていた金属パーツが激しく歪んでいる。


 流石に転倒させるまではいかなかったが、大きな隙は出来た。


「全員、今のチャンスを逃すな!」

 

 注意が僕に向いている間に、ロボとの距離を詰めたハセベさんが刀に青白い光を纏わせ、右足のシリンダーに対して兜割りのように叩きつけるように切りつけた。

 刃はインナーシリンダーに深く食い込み、ミシミシと音を立てている。


 一刀両断とは行かなかったが、インナーシリンダーにあれだけ大きな傷が入れば、サスペンション機能は正常に動かなくなる。

 ロボのバランサー機能に大きな影響があるはずだ。


「モーリス君、まずは足を潰すぞ!」

「分かりました。(アクス)!」


 ハセベさんに続いてモリ君が青白く光る斧を右肩に構えて跳躍した。


 おそらく槍の穂先に斧の形をした「壁」を展開させたのだろう。


 ……またカズ君がおかしなプロテクションの活用をしてる。


 モリ君がロボの右足の付け根部分にあるシリンダーのアウター目掛けて斧を力任せに振り下ろした。

 やはり切断には至らなかったものの、衝撃によって金属が軋んだ音がした。


 モリ君の攻撃を受けた箇所が大きく凹み、オイルが流れ出していた。

 ロボが少し動くだけでギシギシと金属同士が擦れ合う酷い音が鳴っている。


 2人の攻撃により、サスペンションとしてはまともに機能していないのだろう。


 ロボはハセベさん達へ反撃しようとその巨体を動かすが、その速度は緩慢だ。

 目に見えて動きが鈍っている。

 

 ロボがステップを踏んで振り返った時には既に2人とも別の場所に移動している。

 まさに無駄足である。


「今度はこいつでどうだい! チャージショットだ!」

 

 ウィリーさんが構えたライフル銃から青白い炎が吹き出した。


 ウィリーさんのスキルなのだろう。

 銃弾の代わりにライフル銃から強力なエネルギー弾を発射するスキルのようだ。

 

 青白い炎はエリちゃんが先程蹴りを入れた側頭部に直撃した。

 キャノピー部分のヒビが広がり、またもロボが大きくバランスを崩す。


 ウィリーさんはライフル側部の排莢用のレバーを引くと、ロボの反撃を警戒しながら素早く退避していく。

 スキルの弾丸なので、何故排莢のためのレバーを引くのは分からないが、まあそういうものなのだろう。


「渦巻く旋風!」


 間髪入れずにガーネットちゃんの叫びが轟くと、ロボの真下から竜巻が起こった。

 ロボはなんとか体を捻って避けようとするが、モリ君達の攻撃で受けた足のダメージは大きいようで回避など出来ず、風に煽られて転倒しそうだ。


「逆の足も潰しておく?」


 エリちゃんが一足飛びでロボの間合いに入りつつ、左肘をロボが軸足にしている左足装甲へと打ち付けた。


 更にそこから肘を伸ばして手の甲を打ち付ける裏拳。

 伸ばした左手に擦るように右手をスライドさせての正拳打ち。


 まるで拳法の達人が披露する演舞を思い起こさせる、流れるような連続攻撃により、ロボの左足装甲は大きく凹んだ。

 先程モリ君とハセベさんの2人が与えた連携攻撃よりもダメージは大きいかもしれない。


 ランクアップの恩恵はやはり相当高い。


 エリちゃんの攻撃はまだ終わっていない。

 今の通常攻撃3連打はこれから始まる本命の攻撃への繋ぎでしかない。


 エリちゃんの右拳に青い光が灯った。

 その光は低く唸るような音と共にどんどん輝きを増している。

 攻撃用スキル2種の重ねがけによる威力の強化――


「これが私の――すごいパーンチ!」


 名前のセンスは最悪だったが、威力は圧倒的だった。


 技自体はあくまでただのストレートパンチである。

 体重を乗せて渾身の力で打つだけの、何の変哲もないただのストレートパンチ。


 ただ、スキルの効果が二重で掛かったことから、そんな平凡なストレートパンチは脅威の必殺技と化していた。


 打撃より後に風を切る音が来る……音速を越えたストレートパンチの直撃を受けたロボの左膝から下は、まるで砂で作った城が崩れるように金属の破片を撒き散らしながら崩壊した。


 竜巻と左足の破壊がまずかったのだろう。


 右足も、モリ君とハセベさんに受けて傷付いた箇所からメキメキと金属が潰れる不快な音を立てて崩れていく。


 両足を失ったことで、ついにロボの胴体はそのまま倒れこんで横向きに倒れ込んだ。


 だが、それでもロボは完全に機能停止をしたわけではないようだ。

 残された両足の付け根部分をバタバタをさせてなんとか立ち上がろうとしている。


 否、立ち上がるのではなく、反撃を行うために慣性を使って体を動かして機関砲の砲塔の向きを変えようとしているのかと気付く。


「させるか!」


 群鳥の再発動は既に可能になっている。


 僕は3羽の鳥をエリちゃんをカバー出来るように等間隔に配置し、(シールド)を形成した。

 ロボが発射した機関砲の弾丸はエリちゃんには一発も届かない。


「ラビちゃんありがと!」

「エリちゃんも気をつけて!」


 エリちゃんは盾が有効の間にロボの攻撃可能範囲から即時離脱していく。


 僕は続いて……うん?


 軽く頭を叩く。


 先程バリアを展開した時から何か思考が少しおかしい。


「俺」は一体何をしていた?


 新しい能力を発動させる度に魔女(ラヴィ)からの精神への干渉が酷くなっている気がする。

 今のところは俺の意思と変わらない行動を取ってくれており、仲間に対しても友好的でもあるので良いが、この問題は近いうちに何とか解決する必要があるだろう。


「ヤツの動きは遅い。一気に仕掛けるぞ!」

「応!」


 ウィリーさんはライフル銃を吊り紐で背中へ回すと腰から2丁拳銃を抜いて連射しながら刀を抜いたハセベさんと共にロボへと突撃していく。

 これはまさかガン=カタスタイルか?


 ロボは機関砲で反撃しようとするが、流石に両足を失ってまともに動くことが出来ない今の状態では、素早く走り回る2人に攻撃を当てることが出来ないようだ。

 

「足を破壊しても動きを止めないということは、どこを壊せば良いと思う? お侍さん!」

「もちろん頭部だろう!」


 ハセベさんが一度刀を納刀すると、鞘全体が青白く光り始めた。


「斬るぞ!」


 ハセベさんが高く跳躍。宙返りしながら回転エネルギーを加えた刀を振りかざし、ロボのキャノピーに深い縦線を刻み込む。


「こいつでこじ開ける!」


 続いてウィリーさんが2丁拳銃を連射。

 ハセベさんが刻み込んだ線へスキルによって生み出されたエネルギーの塊を次々と撃ち込んでいく。線が亀裂となってキャノピーを割り始めた。


「オレがヒーローになろうと思ったんだけど足りずか。任せたぜ若いヒーロー!」

「俺がヒーローかどうか知りませんけど!」


 ウィリーさんが退避した直後に今度はモリ君が巨大な斧を叩きつけた。亀裂に斧が食い込むが、まだ浅い!


「エリス! トドメは任せた!」

「任された!」


 エリちゃんが腰を大きく捻りつつ、ロボの頭部へと飛びかかる。


「これが私のすごーいパーンチ!」


 エリちゃんのパンチはモリ君が作り出した斧の上へと打ち込まれた。

 斧の刃はついにキャノピーを粉砕してロボの頭部へと深くめり込み……ついには頭部を真っ二つに割った。


 瞬間、ロボの全身が一瞬強い光を発したかと思うと、その残骸の前に銀色のメダルが現れた。


 俺達の勝利だ。


 箒の浮遊(フロート)を解除して地面に着陸する。


「全員無事か?」

「私は大丈夫です。擦り傷くらい」

「俺も大きな怪我はなしです。他に怪我している人がいたら言ってください。ヒールをかけるので」


 全員を見回すが、特に大きなダメージはないようだった。

 傷も自己申告の通り、飛び石や軽い打撲だけのようなので、すぐにモリ君の回復能力(ヒール)で回復できるだろう。


 これで一段落になるのか。

 ロボが落とした銀色のメダルを摘まみあげる。


 メダルの裏側はSR。

 あの戦士を倒した時に出現したメダルと同じものだ。


「ボスらしき存在を倒したのにメダルは銀止まりか。金かそれ以上のものが出てくれると思ったけど、思っている以上に渋いぞ」


 やはり人間同士で殺し合いをした方が効率は良いという仮説は本当のようだ。

 協力するよりも敵対する方が効率が良いという、人間同士の戦いを起こそうとしている超越者の悪辣さが感じられて不快な気持ちになる。


「何はともあれ、これでボス撃破だ!」


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