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お屋敷案内 3

今のところ、特に積極的に屋敷の外に出るつもりもなかったけれど、出るなと言われたらその理由が気になってしまう。

「どうしてですか? 危険な場所なんですか?」

「ええ」とベイリーが真面目な顔で頷いた。


「危険な場所って、なんですか。まさか、変なモンスターでもいるんですか? 実はこの屋敷があるのは森の奥深くで、迷ったら帰ってこられないとか?」

はてなマークをたくさん浮かべて尋ねていると、ずっと目を細めて微笑んでいたベイリーが瞳をしっかりと開いてわたしのことをジッと見つめているのに気がついた。その瞳の力強さに驚いて、わたしは思わず一歩後退りをしてしまう。


「あまりたくさん質問されても答えられないわよ。深く詮索したら、あなた自身の首を絞めてしまうことになるから」

その声の無機質さに硬直してしまった。

「……すいませんでした」

おそるおそる謝ると、ベイリーはまた目を細めて、穏やかに微笑んだ。


「良いのよ。まだここに来たばかりだものね。わたしも少し脅してしまったわ。この家の外は別に危ないところじゃないけど、メイドはお呼び出しを受けた時以外には、基本は室内待機をしなければならないのよ。アリシアお嬢様がお呼びになったときに、いつでも行けるようにしておかなければならないから。用事がある時に、外出中だったら困るでしょ?」

それだけの理由の割には、かなり圧の強い言い方だったようにも思えたけれど、怒られてしまったわけではなくてホッとした。


「もう後は奥にあるわたしの部屋だけだから、そこの紹介は割愛するわね。これで、この家の紹介は終わりよ」

ベイリーが、再びニコリと微笑んだ。

「さてと、それではわたしは部屋で用事がを済ませなければならないから、先に戻るわね。あとは適当にやっておいてちょうだい。晩御飯になったら、多分おさげ根暗が呼びにいくと思うから」

自然な調子で言われたけれど、おさげ根暗がソフィアのことであるということに慣れるまで、まだまだ時間がかかりそうだ。


「アリシアお嬢様という方はこのお屋敷内にはいないんですね」

「ええ。ここはお屋敷というよりも、ただのメイドたちの寝泊まりするところだから」

メイド専用の部屋が独立してあって、しかもそれ単体でお屋敷みたいに広いなんて、と感動してしまう。やっぱり凄いところでお仕事するようになったみたいだ。


緊張しながら2階に戻ろうとしていると、ちょうど部屋から出てきたソフィアと思われる女性にあった。おさげ髪を後ろに垂らした可愛らしいピンク色の髪をしている。そして、レンズがまん丸のメガネをかけている。俯いているから、表情はよく読み取れなかった。


「あ、すいません。わたし今日からお世話になるカロリーナと言いまして……」

「ふうん」と言ってから、ソフィアがわたしのことをジロリとみた。穴が開くほど見られていて、値踏みされているのがわかる。


「先ほどまでは腹黒……、ではなく、ベイリーさんに屋敷の案内をしてもらっていたのですか?」

はい、とわたしがにこやかに頷いたけれど、ソフィアはわたしのことを訝しげに見つめただけだった。


「歩き方が気になりますね。少し物音がうるさいように思います。これからはあなたもアリシアお嬢様のメイドとして働くのですから、はしたないことはしないように気をつけてください」

「はい……」

いきなり注意されてしまい萎縮してしまう。


「良いですか? わたしたちがはしたないことをしていると、アリシアお嬢様にも迷惑がかかってしまいますからね。今日は初対面だからあまりお小言は言いませんが、これからは気をつけるようにしてくださいよ」

「は、はい……」と弱々しく返事をしたら、ソフィアが最後に付け加えた。


「メイド仕事は初めてでしょうから、できないことが多いのは仕方ありませんが、お嬢様に迷惑がかかるようなことはやめてくださいね」

初対面の挨拶もろくにせずに、ひたすらお小言を言ってから、さっさとどこかへ行こうとする。みんながソフィアを苦手にしているけど、なんとなく理由がわかるような気はした。

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