頼もしい協力者 4
「ねえ、エミリア。わたくしお花を摘んで帰りたいですの。たくさん持って帰って、お部屋を飾りたいですわ」
ここまでレジーナお嬢様の部屋に行くために緊張した面持ちだったのに、突然お花を摘みたいなんて可愛らしいことを言い出したけれど、一体どうしたのだろうか。
黙って首を傾げたエミリアに続いて、わたしはアリシアお嬢様のことを不安いっぱいの表情で見上げた。
「あの、アリシアお嬢様……?」
"今はジッとしておいてほしいですの"
訳がわからず、思わず尋ねてしまったわたしの方を見て小声で囁いた後、今度はエミリアに向けて普通の声を出す。
「すぐ終わりますわ」
「あんまり摘みすぎないように気をつけてくださいね」
エミリアはあくまでも冷静に答えた。
これもアリシアお嬢様の作戦のうちなのだろうか。よくわからないけど、様子を見守ろうとしていると、突然どさどさと花が降ってきた。花自体はとても綺麗だけれど、ほとんどがラフレシアみたいに大きく見えるから、ちょっと怖い。しかも、どんどんわたしの上に降ってくるから、だんだんと重みで動きづらくなってくる。
「ア、アリシアお嬢様!? わたし潰れちゃいます!」
「少しうるさいですわ。わたくしの憩いの時間を邪魔しないでほしいですの。カロリーナよりも今はお花の方が大切ですの」
わたしのことなんて気にせず、自由に振る舞っているのがアリシアお嬢様らしくなくて、一体どうしてしまったのだろうかと不安になっていると、今度は吐息に混ぜて、わたしだけに聞こえる声で囁いた。
"ごめんですわ。もちろんカロリーナのことは大切ですのに、エミリアの気を逸らすために、意地悪な言い方をしてしまいましたの。袖の内側に入って、エミリアにバレないようにわたくしの服の中に入ってきてほしいですわ"
意図はわからなかったけれど、エミリアに聞こえないように伝えてきたということは、アリシアお嬢様に何か考えがあるということ。わたしは不安ながらも、とりあえず従うことにした。滑り落ちないように慎重にアリシアお嬢様の袖の中に入っていく。ひたすら花をバスケットの中に入れていくアリシアお嬢様の意図はわからないけれど、とりあえずわたしは無事に体をアリシアお嬢様の手首の辺りに潜り込ませることができた。
「バスケットいっぱいにお花を摘めたから満足ですわ。楽しかったですの」
"さて、これからが本番ですの。わたくしたちはレジーナお姉様のところに行きますわ"
エミリアに向けた声とわたしにだけ囁いた声を連続で出した。アリシアお嬢様は2種類の声量を器用に使い分けていく。
「エミリアも途中までついてきてほしいですの」
そう言って、アリシアお嬢様が動き出した後を、エミリアもついてくる。わたしは狭いアリシアお嬢様の袖の中で、体を押し付けられるような体勢で、アリシアお嬢様を信じてジッとしていた。