変化するスタートライン
その日は放課後までなんだかんだで忙しく、スマホを見る暇はなかった。
家に帰ってきたソウタは、机の上においてあるパソコンの電源を立ち上げると、いつものように小説投稿サイト『小説家になっちゃお』のページを開いた。
自分のIDでログインをする。
そこには見慣れないメッセージが表示されていた。
コメントが1件あります。
え?
ソウタは目の前にある画面が何を表示しているのか理解できなかった。
もう一度、画面をよく見る。
え?
ええ!?
手が震えていた。
そのため、画面上のマウスカーソルが小刻みに動いている。
なんとか手の震えを押さえて、そのメッセージをクリックする。
最新の小説にコメントが書かれていた。
『面白いですね。その発想はなかった』
短いコメントだったが、コメントをもらえたという事実だけがソウタにのしかかって来ていた。
コメントがもらえた。
コメントだぞ。
おれの書いた小説にコメントが書かれているんだ。
やった。やったぞ。これでおれも一人前のWEB小説家だ。
ソウタは泣きそうになりながら、コメントの返事を打った。
吾輩はWEB小説家である。
きょう、新たなるスタートラインを踏んだ。
スタートラインは常に変化する。
きょうはこのスタートラインを踏んだが、明日はまた別のスタートラインを踏むだろう。
部屋で小躍りをしていると、隣の部屋から壁を蹴りつけられた。
「うるせえぞ、小僧っ!」
しかし、そんなミズキの声もいまのソウタには聞こえなかった。
次のスタートラインに向けて、ソウタは走り出すのだった。
「第3話:吾輩はWEB小説家である」おしまい




