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WEB小説からデビューを目指す僕の心が折れそうなわけ  作者: 大隅スミヲ
第3話:吾輩はWEB小説家である

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10/11

夢幻のごとく

 吾輩はWEB小説家である。

 ようやく新作を一本書き上げた。

 紆余曲折、色々とあったが、なんとか話を終わりまで持ってこれたのだ。


 その日、椎名ソウタはドキドキしながら、自分の小説を小説投稿サイトである『小説家になっちゃお』へと投稿した。

 いつだって、この瞬間はドキドキする。


 新作小説の欄に自分の書いた小説のタイトルが表示される。

 読専さんの中には新作小説の欄から、何を読もうか決める人もいるという。一番新鮮でホットな作品を探すためだそうだ。

 ソウタは少しでも多くの時間、その新作小説の欄に自分の書いた小説のタイトルが表示されるように投稿時間も工夫した。

 昼の12時。この時間は一番投稿者が多い時間であるため、避ける必要がある。

 みんな昼休みに読んでくれるであろう人を狙って投稿するためだ。

 この時間の新作小説欄は、1分もしないうちに表示が変わってしまう。

 ここでは爪痕を残すことはできない。

 ソウタはそう考えていた。

 狙い目は深夜だろう。不思議なことに小説投稿サイトは深夜帯は妙なぐらいに静かなのだ。アップされる小説も少ないことから、長い場合は数時間新作小説の欄に作品が表示されることもある。

 ただ、この時間帯に読専の人がサイトを見てるかどうかは不明ではあるが。

 それでも自分の書いた小説のタイトルを少しでも長く表示させておきたい。ソウタはそう考えて、深夜に小説を投稿することにしたのだ。


 しばらくして、自分の投稿した小説のPV数を確認する。

 0。

 何度か見直してみたが、やはり0という数字は変わらない。

 やっぱり、この時間は読む人も寝ているか。

 ソウタは自分の見積もりが甘かったのだと反省し、その日はそのまま眠りについた。


 翌朝、起きてすぐにやったことはサイトの確認だった。

 もしかしたら、朝イチで読まれているかもしれない。そんな期待を胸に、サイトを確認した。


 PV数、0。

 何も変わらない朝。いつもと同じ朝をソウタは迎えた。


 朝食は目玉焼きとトーストだった。

 ソウタよりも先に家を出るミズキは、洗面所で身支度を整えると早足で家を出ていった。

 朝食を済ませたソウタは、朝の情報番組を見ながらのんびりと支度を行う。


『本日の占いランキングは――――』


 ソウタはそこでテレビを消した。一日を占いで台無しにされたくはないと思ったからだ。

 もしかしたら、良い運勢かもしれない。

 だけれども、悪い運勢だったときのダメージの方がでかい。

 それならば見ない方がいいに決まっている。

 出かける前に、もう一度だけスマートフォンで小説投稿サイトを開いたが、やはり『0』という数字は変わらなかった。


 学校の自転車置き場に自転車を停めたあと、ソウタはもう一度だけスマートフォンの画面を見た。何度見ても変わらぬ数字がそこには表示されている。

 これ、バグなんじゃないのか。

 そう疑いたくもなるのだが、他の小説はPV数が伸びているようなので、そんなことはないようだ。


「おはよう、椎名くん」


 不意に背後から声をかけられた。

 振り返ると、そこには三戸さんが立っていた。


「あ、お、おはよう」

「歩きスマホは危険だからダメだよ」


 そんなことを言いながら、三戸さんはソウタのスマホを覗き込んでくる。


「おっ『小説家になっちゃお』見てるじゃん。誰かお気に入りの作家さんいるの?」

「え、ああ、まあ」

「だれ、だれ?」

「えっと、実はおれ、読専さんじゃなくて書き手なんだ。ほら、この小説、おれが書いているん――――」

「ミトちゃん、おはよー」

「あ、おはよー」


 ソウタが自分の正体を告白している時に、三戸さんは他のクラスメイトに声をかけられて、ソウタの言葉は耳に届いてはいなかった。


「ごめんごめん、えっと、なんだっけ?」

「あ、いや、なんでもないよ」


 スマホをポケットにしまい、ソウタは早歩きで教室へと向かった。

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