第壱話 爆発
学校から帰ってくるなり、あたしは家中のありとあらゆる物を破壊した。
食器棚が倒れて中の食器の破片が飛び散る。
テーブルをひっくり返して飲みかけだったコーヒーがこぼれる。
コンセントを引きちぎってテレビを床に叩き付ける。
それから、その場にうずくまって大声で泣き叫んだ。
母は蒼ざめた表情で見ているだけだった。
その頃のあたしは、無理矢理入れられた有名進学校も、上辺だけの友達ごっこも、厳しい教師も、退屈な授業も、大嫌いだった。
どうせ自分が選んだ人生じゃないから。そう思うとどんどん卑屈になっていった。表情が死んでいくのが自分でも分かる。
そしてついに今日、鬱積したものが爆発したのだ。
高校に入学して二週間と三日。あたしの許容量は思ってたよりずっと少なかったみたい。
母は暴走するあたしが相当怖かったらしく、あれ以来話しかけようとするとかなり怯えられる。
その度にあたしは心の中でごめんねって謝る。別に母が嫌いなわけじゃないんだ。
少し、頭を冷やしたいと思った。
だから、夏休みはおばあちゃんの家で過ごしたいって言ってみた。
何度か泊まりに行った事はあったけど、一ヶ月も泊まるのは初めて。
ほぼ毎日学校の課外授業が入ってた気がするけど、そんなの知らない。
現実から、逃げたかっただけなのかもしれない。
母は「そうね、それがいいわ!」と必死に肯定した。泣きたくなった。




