第93話
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いろいろお待ちしております。
ちょっと短めですいません。
「私に貴族になれと?」
「うむ。
まあ貴族と言っても十級の准爵だがな。」
「しかしなぜ?」
「この移民がうまくいけば、わしは子爵に陞爵することになっていてな。
その後釜の後釜の後釜といった感じの玉つきで一つ席が空くのだ。
そこには差別主義者で無いものに座って欲しくてな。
あくまでも推薦できるというだけのはなしではあるのだが。」
「腕前の方は冒険者ランク不相応にあるし、思想的にも好感が持てる。
財力もあるようだし、文句はつかんだろう。」
「考えさせてもらってもよろしいでしょうか。
なにしろ突然のお話ですので。」
「うむ。時間はまだある。デルソル公国に付くまでに考えておいてもらえば良い。」
「はい。」
俺が貴族(=支配階級)になるなんて考えたこともなかった。
いろんなしがらみとかも生まれそうだし、なってしまえば今までのような自由な暮らしは、なんらかの制限を受けるのは間違いないだろうし、慎重に考えなきゃな。
「そういえば、もう一組の護衛のカスティーロ殿も准男爵の候補であがっておる。」
「元伯爵家の継承順位持ちならもっと上になるのでは?」
仮にも元は伯爵の継承権を持っていたのが3段階も下の序列。
なんとなく違和感があるのは貴族という物をよく知らないからだろうか。
「うむ。わしの後の男爵位という話もあったのだが、わしを含む何人かが反対して、一つ下の准男爵の、それも候補の一人となったのだ。」
それならカスティーロには男爵を殺そうとする動機はある。
もちろん男爵が反対したこと、それ以前に候補にあがっていたことを知っていればだけど。
貴族出身なら様々な伝手もあるだろうから「魔呼薬」も一般人よりは手に入りやすいだろう。
「カスティーロ殿についてはよからぬ噂が多くてな。
それに現デスタ伯も反対しておるのだ。」
「それはまさかカスティーロ殿はご存知ありませんよね?」
「人の口に鍵はかけられぬ。どこかから情報は伝わっているだろうよ。」
「下手をすれば彼に命を狙われかねませんよ?」
「わかっておる。
それも含めて今回は素行調査という面もあるのだ。」
「正直、先程の襲撃は彼の手引きを疑っています。」
今までの俺の考えを男爵に伝える。
「うむ。頭の回りも良いようだ。
こちらも油断はしておらんよ。
先程の件は前向きに考えておいてくれ。」
そういって男爵は自分の宿営場所に戻っていった。
それにしても、貴族か。
皆にも相談しなきゃな。