第79話
俺たちが一番乗りのようだ。
ウチの28人だけがウロウロしている。
冒険者ギルド前には、移民団や護衛の姿はまだない。
二台の馬車へのメンバーの割り振りをしていると、移民団の一行が姿を現す。
さすがに全員ではギルド前が混雑してしまうので、移民はすでに街をでる門のすぐ外で待機しているとのことだ。
ここに現れたのは、移民団長のドーロンズ・モンキーロック男爵一行だった。
団長(男爵)、男爵家の騎士4人、従者4人の合計9人で騎士が騎馬、団長と従者は馬車に乗るようだった。
しかし、旅する名前だよなぁ。
もう、●波少年を知らない人も多いだろうなぁ。なんて感想を抱く。
団長といろいろ打ち合わせをする。
隊列は、先頭は道を知っている団長家の馬車と騎士。
二番目に護衛の馬車、真ん中に護衛の馬車、最後尾に護衛の馬車で、その間に移民の乗った馬車や輜重馬車が続くらしい。
歩きでは遠すぎるようだ。
俺たちの馬車は9人乗りといっても乗車可能部分だけで、縦6m、横3mほどの大きさである。
あまり詰め込み過ぎてはエコノミークラス症候群になってしまうだろうが、一人当たり1m四方の場所を割り当てても18人乗れる。
9人というのは、その他に荷物を積んでの話だ。
当然ウチのパーティには『亜空倉庫』や「ストレージ」使いの俺がいるので、馬車内に荷物は、予備・保険としての水樽1つと保存食の入った小箱が一つだけである。
なので足を延ばして一人当たり2m×1mのスぺースで9人が横になれる。
日本で二人用テントを買ったことがある。
なんとサイズは2.2m×1.3mしかなかった。
なんでもその当時は横幅0.55mで一人と勘定するのが普通だったとのことだ。
そんな幅で彼女以外と寝れるかよっ。
それに比べればよっぽど広い。
普段は解放予定のアクトック組10人とイル組5人の15人で1台。市場組10人と俺組3人の13人で1台に乗ることにしよう。
野営は3交代制にすれば多くても10人が馬車に横になれれば良い。
それにウチの馬車には、見張り用として屋根部分に座椅子のようなものを4脚取り付けてある。
前方は馭者、その他に右前方、左前方、右後方、左後方を向いた座椅子。
雨が降ったり、猛スピードだったらつらいだろうが、すし詰めの馬車にスピードを合わせるのだから、大したことは無いだろう。
他の移民はどうするのか団長に聞いてみたら、移動はすし詰め、夜は狭いテントを張ればいい方で、そのまま地面にマントや毛布にくるまって横たわるらしい。
護衛する方がされる方より優雅な野営って、どうなんだろう?
打ち合わせをしていると、一緒に護衛をする3人組の冒険者が現れた。
なんていうパーティ名かは知らないが、デスタ家ゆかりのリーダー率いるパーティだ。
そのままリーダーだけ打ち合わせに参加してくる。
どうやら彼らのパーティは自前の移動手段が無いらしく(それが普通らしいが)、男爵家で用意した馬車と馭者の世話になるようだ。
そんなんで良かったなら馬車を買わなくても良かったかも、と少し思ったが、現地で解放する奴隷を俺の都合で連れていくんだから仕方がなかったんだと思いなおす。
男爵家はなるべく固まって行動したいとのことで、男爵家の馭者の世話になるデスタパーティが先頭の護衛になることが決まった。
真ん中を俺組、最後尾をイル組にすることにする。
そうすれば最先頭も最後尾も俺の魔法の射程距離に入るから、襲撃があってもすぐに対応できるからだ。
もちろん前から襲撃を受けても護衛が前に行って戦ったりしたら、伏兵がいたらえらいことになるため、移民はなるべく一塊になり、護衛は防御と排除に分かれるという個とも決める。
なので、デスタパーティと共闘する可能性が高い真ん中は、俺組の方が良いという判断だ。
食事は、朝夕の2回。移民の分は従者の支持で移民自身が輜重からの食料を食べる。
護衛達はそれぞれの判断でそれぞれの持ち物から食べる。
野営時の見張りは三交代で、各組に騎士と従者が一人ずつと移民から数人、先頭・真ん中・最後の組が組んで順番も先頭、真ん中、最後に決まった。
夜中の見張りは真ん中が体力的にキツイのだが、仕方がない。
それに俺達のメンバーは、各組十人以上だ。好きに交代できる。
もう一組の護衛パーティも全面的には信用できないため、当番以外の時も数人不寝番を残しておかなきゃな。
晩秋季の今はほとんど雨も降らないようなので、寒さ対策さえしておけばさほど野営もつらくないだろうとの団長からのお言葉であった。
幸い、寝るのは馬車内でオッケーだし、俺が火魔法レベル2の暖房が使える。




