第73話
俺のオススメどおり、移民団長は、俺たちの七人と、二組目の三人の二パーティを雇うことに決めた。
一組目は、散々悪態を尽いて出て行った。
「まぁ、実力どおりだな。」
追い討ちをかけるために聞こえるようにヘイト値を稼いでおいた。これで間違いなく俺を襲ってくるだろう。
事実でもある。
二組目を壽眼で確認したら、
リーダーがレベル九の火魔法使い。
陸人族の女奴隷がレベル八の火魔法使い。
獣人族(龍)の♀奴隷がレベル十五の盾3、格闘3、短剣3のスキル持ち。
ちょっと偏ってはいるが、人数が揃えばうちのパーティとも結構やりあえるんじゃないだろうか。
しかしこのレベルの奴隷を買えるってことは、金持ちか実力者、貴族であることは間違いない。
ただ、このリーダーの名前だけが引っかかる。
カスティーロ・ド・デスタ
領主の一族なんだろう。
厄介ごとのフラグ立ちました~。
ハァ。
雇うパーティが決まったので、移民団長が詳しく依頼内容について話してくる。
報酬は、ギルドでの話しどおり、拘束期間が三十日位で船代を抜いて一人あたり五万五千ゴル。
目的地は、デルソル公国の公都トキーヨで、公都の門をくぐったところまでの護衛。
俺の提案した、現地解放予定の俺の奴隷にも護衛させる案は、喜んで認可された。
団長には告げ口ならぬ進言をしておく。
断られた一組目がもしかしたら襲撃してくる可能性も有ると。
団長は中々信じてくれなかったが、うちのサミーのことを説明すると納得してくれた。
団長もそういうことを考えてデルソル公国へ亜人を移民として送ろうと考えた人らしい。
詳しく話しを聞くと、団長も法衣貴族七級の男爵位を持っているらしい。
この国の貴族ってのは、一級から十級まであり、
一級:王位継承権所持者(王太子、王子など)
二級:王族(現王から二親等以内)、大公(旧王族の一部)
三級:公爵
四級:侯爵、辺境伯爵
五級:伯爵
六級:子爵
七級:男爵、女爵
八級:準爵
九級:士爵(いわゆる騎士爵)
十級:名誉爵(商人や職人で功績著しい者)
で、領地をもっている拝地貴族と、領地を持たずに宮廷や高位貴族の元で働く法衣貴族に分かれるらしい。
そして、八級以下は一代限りで王様の認可があったときのみ代継が可能。
五級以上は基本的に男子のみ世襲だが王様の認可が必要とのことだ。
ってことは、このデスタを収めるババアこと伯爵夫人は、後継ぎとなる男子がいないはずなので、お家断絶になるということになるのか。
というか女なのに伯爵になれている理由があるんだろう。
後は継げないはずなのだから。
あの馬鹿たれオバハン(某探索者ギルド長)はそれでグレたのかな?
移民団長の男爵は、先々代の当主が獣人に命を救われたらしい。
それで、この国の亜人差別の現状に不満を抱いており、そのような差別の無い国にすることはできなくても、差別の無い場所に送り込むという形で亜人を救おうとしているとのことであった。
明日の朝に冒険者ギルド前に集合ということで解散となった。
ウチのパーティは七人の契約ということだったので、俺、イル、サミーヒルダ、ルドの他に、護衛役に二人、現地で解放するのに数人の奴隷を奴隷市で探すことにする。
もし、護衛役にできるような奴隷が見つからなければ、若くて力のありそうな奴隷を選ぼう。
ウチとしては利益が出る転売。
買われる奴隷側としても解放される。
WIN・WINの関係だ。
ノーラ、ターナ、コリンの三人は、契約外の護衛として、目立たないように付いて来てもらうか斥候部隊になってもらおうか。
壽眼を発動させながら奴隷市を見て回る。
「スキルが有って若いか……。なかなかいないな。」
思わず呟いてしまう。
スキルが有れば年配になってしまうか、高価になる。
なかなか掘り出し物ってのが見つからないのは、フリマと一緒だ。
数少ないスキル持ちの売られている奴隷には、デルソル大公国での解放についての意見を聞きつつ、唾をつけていく。
どうやら、解放してもらえるならどこの国でも良いってのが普通のようだ。
言葉もこの辺の国では、どこでも通じるらしくとくに問題はないらしい。
移住に問題が無く、スキル的にも目についたところでは、
弓1持ちの獣人族(馬)、29才の♀
罠設置1持ちの獣人族(狸)、29才の♀
盾1持ちの獣人族、35才の♂
槌1持ちの地人族、38才の♂
料理1持ちの獣人族(猫)、31才の女
鍛冶1持ちの地人族、30才の♂
裁縫1持ちの地人族、33才の女
メイド1持ちの地人族、29才の女
馭者1持ちの地人族、40才の男
大工1持ちの地人族、45才の男
の十人。
合計で十五万ゴル。
奴隷たちの年齢が比較的高いせいなのか、商館の高い奴隷を見たことがあるせいかすごく安く感じる。
商人ギルドで聞いた話では、現地での解放価格は、おそらく三倍位にはなりそうだ。
戦闘系のスキルも三人が持っているので、護衛兼業も大丈夫だろう。
最悪自分たちだけを守れればそれでいい。
馭者スキル持ちもいるので、教わりながら行けるし問題はないどころか儲けものだ。
年齢層が若干高いので、うちの専属にはキツイけれど、新天地で頑張る分にはなんとかなるだろう。
全員と契約し、先輩三人組に装備や服等の準備をさせることにする。
金貨十枚の百万ゴルを渡して、
「この十人の服を二着ずつと主武器と革鎧位の防具を買って配備したあとで風呂に入れて。
集合は宿にするから。まだあと十人は買うつもりだから部屋だけは全部で二十人分よろしく。」
と送り出す。
残されたルドと俺は、懐かしのアクトック商会の商館へ向かう。




