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第71話

先輩三人組と新人三人組、それにルドを7人パーティにして、出発まではダンジョンの低層階でレベル上げをしてもらうことにする。


夕方にはいつもの通り居酒屋に集合することにしてある。


先輩組と俺が護衛の任務に出た後では、後輩組だけでのレベル上げには少し不安があったからだ。


屍骸は放置、魔魂石のみ回収で安全最重視でやってもらうことにする。


皆をダンジョンの五階層に送って一人になると、色々な考えがわいてくる。


ちょっと今の俺はこの街で有名になりすぎた。


だからダミーの存在が必要だと思ったのだ。


年長の姿の俺の姿で別人として他のギルドに登録して、オレこと別人がバラエティを雇用して使ってる的な感じに持っていきたい。


さいわいにも、身分証明が無くても金で解決できるのはわかっている。


付け髭なんかと現代日本のメイク術で老け顔を作ろう。


綿やなんかでふくよかな体付きにして、日本から持ってきた金髪のヅラを被る。


保証人には居酒屋バラエティのオーナーに頼んで既に保証状を貰っている。


この書状を持っている者を保証するという文言にしてもらっている。



一度街の外に出て変装をする。


どんな感じになったのか確かめるため、ストレージから日本の百均で買った鏡で確認してみる。


確かに俺だが、補正七割増しって感じの中年ちょっと前のチョイ悪おやじって感じのオッサンがそこにはいた。


なんか納得がいかない部分があるが、しかたない。


街の入口で、


「商人として登録するために来たのですが、魔物に襲われてお金以外の全てを失ってしまいまして。」


平気な顔で嘘をつく。


もちろん格好は普通の服に普通のフードマント、短剣にリュックといったごく普通な格好にしていた。


「仮の身分証には金が掛かるが良いか?」


門番のオッサンが聞いてくる。


「はい。幸いにも財布は持っておりますので。」


「では、詰め所に来い。」


門番のオッサンは詰め所に入るなり、


「仮身分証の発行には一日当たり大銅貨五枚必要だ。最低五日からになる。

 他に手数料として、俺に同額が必要だ。」


うん、明らかにぼったくってる。お上の権力をかさに来たカツアゲだ。


「では五日で大銅貨五十枚ですね。」


とりあえずここでもめるのは得策じゃないので、払えといわれる分だけ払うことにする。


あとで何日か監視して、報復することを心に決める。


街に入るだけで五万円だと?


門番は、「秋の十三日から五日間」と名刺くらいの紙にペンで書き込むと、紙に蝋燭をたらし、左手の指輪で焼印みたいに印をつけていた。


中世ヨーロッパで封印として使われていた手段なはずだから、こんなことをした門番は、ある程度の地位にある奴なんだろう。


壽眼で確かめてみると、


「オズホーン・ド・デスタ 男・陸人族・30歳」


だった。


あの領主と同じ、この街の名前と同じ姓なのは、領主の血縁なんだろう。


息子だったらあまりにも扱いがひどいが。


門番って。


しかし領主の一族に碌な奴がいないな。


ボッタクったことをあとで後悔させてやろう。


ただ、金額的にはそれほどでもないから命にかかわらない程度のキツイ嫌がらせ決定だ。


「コレは返す必要は無いが、五日を過ぎて他の身分証が無い場合には、罰として奴隷になることを覚悟しておけ。」


仮身分証を俺に手渡しながら、言ってくる。


コイツは馬鹿認定で問題ないな。


もし、ここを出た後で襲ってきたら強制排除は間違いないが、とりあえず今はここを凌ごう。




「こちらで行商を行いたいと思いまして登録をお願いいたします。」


バラエティ居酒屋のオーナーの保証書を出して、商人ギルドへの加入を申し込んでみる。


「商人ギルドへの登録には、登録の他にお金が必要となりますけれどもご存知でしょうか?」


商人ギルドへの登録には、数種類あって、


  商業認証:商売をするため全ての商人が支払う 年銀貨1枚

  露店認証:街の中で露天の店を開店するため 年銀貨1枚

  小店認証:街の中で固定の店を開店するため 年金貨1枚

  中店認証:問屋業及び他領との交易をするため 年金貨5枚

  大店認証:問屋業及び他の国と交易をするため 年金貨10枚


で、中店認証以上には、誰かからの紹介状が必要となるらしい。


地産地消が基本なので、周辺の村とかから買ったり売りに行ったりする分には問題ないが、他の領主の領地との交易になると中店認証が必要となるらしい。


理屈はわかるような気がするが面倒だな。


あとは、商業ギルドは国単位なので、他の国では別に登録する必要があるのかもしれないとのことだ。


俺が商売をするとすれば、遠くで仕入れてストレージや[亜空倉庫]に入れて[転移]で持ってきて売ることになるだろうから、少なくとも中店認証以上が必要だ。


特にこれからデルソル公国へ行こうとしているので国際貿易は絶対にすることになる。


ストレージに入れておけば出入りの時にはバレないだろうけど、売るときにバレる可能性は少なくない。


ストレージから金貨を十枚と銀貨を一枚取り出す。


「これからデルソル公国へ行こうと思っていますので、大店認証でお願いできますでしょうか。」


「いきなりっ??」


驚かせてしまったようだ。


なにか目立たないようにフォローを入れておかないといけない。


「この歳ですし、他の方と同じことをしていては成り上がれませんので、一か八かで勝負をと思いまして。」


と説明しておく。


なんとか納得してもらえた。


そりゃそうだ。


普通は十歳位から丁稚とかで働き始めて、運が良くて才覚のある奴が三十代で店を持つのが普通らしい。


見た目三十五歳の俺が初登録となれば、半分博打的な方法でなければ成功は難しいのは当然だ。


「それではこちらの登録用紙に記入をお願いします。」


やはりここでも自己申告だけで登録できるようだ。


登録内容は、登録のランクによって違うようだが、大店認証では、


「名前・年齢・出身地・商会名・主に扱う商品・主な従業員の名前・本店の住所」


だとのこと。


思いっきり困ってしまった。


他はナントカなるけど、本店の住所ってのが問題だ。


どこにすればいいのか・・・・


「いま建築中の建物でもよろしいのでしょうか?ちょっと遠いんですが。」


チョーシ村に建築中のはずの家しか拠点にできるところはない。


「べつに国内であればどこでも構いませんし、新築とは豪勢ですので歓迎したいくらいです。」


少し考えたすえ、


名前を「シンジ・カキ・ブレイド」


年齢を「35歳」


出身地を「チョーシ村」


商会名を「ハンムラビ商会」


主商品を「食品等」


主な従業員を「ジェシカ」


本店住所を「チョーシ村」


で登録する。


商会名を「バラエティ」にしなかったのは、あえて関係性を持たせないためと、意味合い的にハンムラビ法典の「眼には眼を、歯には歯を」の意味を込めた。


恩には恩で、敵意には敵意で返す。


名前を少しだけ変えたのは、知らない遠縁の親戚でも通じるようにするためだ。


「商会のお名前の意味を教えていただけますか?」


聞き覚えのない名称にギルド職員が食いついてきた。


「私の田舎の暗黙のルールの名称です。同等の礼を返すか、同等の復讐をするかといったルールでして。」


「それはすばらしいルールですね。」


商人的にもアリなルールなんだろう。


搾取のしすぎや自分だけの儲けでは短期的には良くても長期的には回りまわって自分の首を絞めるってことはよくあることだし。


中店認証以上の登録があれば、官報公告みたいな感じで王国中に公開されるらしい。


ライバル店登場に戦々恐々とする同業者もいるんだろうが、今のところ店を出す予定はない。


まぁ、忘れられた頃に小規模にやっていこうと思う。


少し時間が掛かったが、無事登録は終わった。


あとは、護衛業務に役に立ちそうなものをそろえることにする。


ストレージに入れれば時間経過がないので、熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいまま保存できるので、汁物、串焼きなどを鍋ごと買って収納していく。


今日の夜にはバラエティ居酒屋でも同じように護衛の日数プラスアルファ分を仕入れる予定だ。


あとは、武器屋で矢を補給し、薬草等も補給する。


そして、最も重要と思われる馬車と馬も購入する。


馬車は最も大型の馭者を含めて九人乗りの2頭立て。


それを2台。


馬車部分だけで、縦六メートル、横三メートルほどの大きさなので、荷物を積んでも数人が足を伸ばして横になれる大きさだ。


夜の見張りを交代ですることを考えれば、睡眠は馬車の中でとれるだろう。


さすがに馬も含めての購入金額はお高めになったが、飼い葉、水用の樽、矢や薬草などを含めても金貨十枚の百万ゴルで納まった。


報酬だけでは足がでるが、もともと観光目的で行く予定だった場所だ。


多少の持ち出し分は旅費として出す分にはしょうがない。


あとは、こちらの産品をデルソル公国に持って行って売り払って賄うしかない。


商人ギルドから売れ筋の商品を聞いてみよう。


幸いにもストレージの収納力は今のところ底が見えないので、その他の物も大量に向こうに持っていくことができる。


帰り道は[移転]で馬車ごと戻ってこれるので、収支はトントンかそれ以上にはできるだろう。


デルソル公国の名産もこちらに持ち込んで売り払うこともできるのだ。


たしか鍛冶が有名だったはずだから、それを中心にすれば儲けも出るだろう。


こっちからもなにか向こうで売れるものを持っていけば往復ビンタで儲けられるだろう。


「日持ちのする物でデルソル公国でも売れそうなものって、どのようなものがありますかね?」


商業ギルドであればその手の情報くらいはあるだろうと思って聞いてみた。


最高の儲け話は自分達で独占するにしても、ある程度の情報くらいはくれるだろう。


「彼の国は建国間もないので人口が余りありません。

 故に奴隷でも解放して領民に欲しいとのことです。

 奴隷を連れて行かれてはいかがかと。」


「なるほど。ありがとうございます。」


ふむ。


移民の護衛と言う話しだったのはそういうことか。


奴隷の立場にしてみても悪くない話しだろう。


もともとこの国の王族が建てた国らしいから、文化もさほど違わないだろうし。


「特に亜人の奴隷が良いとか。

 まったく理解に苦しみます。」


ギルド員が心底嫌そうにいう。


こいつは陸人族至上主義者のようだ。


どうやら数代前のデルソル公国の建国公は、この国の亜人差別が嫌で、というか亜人が好きな人で、自分の趣味嗜好が異端視されないように国を作ったようだ。


尊敬に値するね。


http://19143.mitemin.net/i210236/

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