第55話
全員を一度に壽眼で見る。
スキルの有無(二つ以上)と年齢(三十歳未満)で一度振るいにかける。
残ったのは、
陸人族・男 二十歳の剣1・ギャンブラー1持ちのレベル2
女 十九歳の弓1・料理1・詐術1持ちのレベル2
十七歳の短剣1・裁縫1持ちのレベル1
森人族・♂ 二十九歳の弓2・風魔法1・狩人1・野営1持ちのレベル2
♀ 十七歳の弓1・水魔法2・料理1持ちのレベル2
十七歳の弓1・風魔法1・召喚魔法1・テイマー1持ちのレベル2、右手欠損
地人族・♂ 二十九歳の槌1・斧1・鍛冶2持ちのレベル3
♀ 十三歳の槌1・斧1・鍛冶1・農夫1持ちのレベル2、左手欠損
十五歳の槌1・盾1・大工1・気配察知1持ちのレベル2、右手欠損
二十三歳の槌2・細工1・鑑定1持ちのレベル3
獣人族・♂ 二十二歳の格闘2・夜目1・嗅覚拡大持ちの柴犬のレベル3
♀ 十一歳の短剣1・メイド1・聴覚拡大・嗅覚拡大持ちの白兎のレベル2
十二歳の格闘1・夜目1・メイド1・嗅覚拡大持ちの黒猫のレベル2
十三歳の短剣1・暗器1・回避1・隠密1・嗅覚拡大持ちの銀狐のレベル3、右手欠損
みんなレベル3以下だ。
しかし、比べてみると陸人族はスキル少ないし、能力が低くないだろうか。
女が多いからか後ろの三人から威圧感がある。
「地人族の若い娘二人と、狐の獣人族の娘にします。」
「亜人がお好きなのですかな?」
社長が聞いてくる。
「差別対象らしいので保護したいだけです。」
「超上級者という噂も聞いておりますが。」
うるさい。へたれで悪かったな。
「ほっといてください。」
「♀ばかりでそれとは、まさか神を目指しておられるのではないですか。」
勘弁してくれ。ここらあたりでそう呼ぶのは初体験を男とする奴のことだろ。
さっさと契約してくれよ。
ピンク色の小さなビー玉を三つストレージから取り出す。
「地人族は左耳たぶ、獣人族は口角の下でお願いします。」
「契約内容は一番ゆるいやつでお願いします。」
みんなに聞こえるように言う。
「一番ゆるくといいますと、主人の命令は絶対。
主人への攻撃禁止。
主人の財産に手を出さない。
逃亡の禁止。
自殺の禁止。
だけになりますが、よろしいでしょうか?」
「はい。あとサミュエルを奴隷に戻すのを含めて、この三人の契約変更をお願いします。」
「ほう。どのようにいたしましょう。」
「この三人は、主人の言うことは絶対。
だけでお願いします。
あと、みんな主人の死後は解放の遺言もお願いします。」
聞いていた新人奴隷や商館の社員も眼を丸くしている。
そんな甘い主人は居ないのだとか。
契約も無事に終わり、大量のコスチュームと三百万ゴルを受け取り商館を後にする。
俺の後をぞろぞろと六人の女奴隷と一人の男奴隷がついてくるのだ。
なんか恥ずかしい。
もう陽は沈んでいるし、今日はメシを食って寝たい。
いろいろ気を使って疲れたし。
装備品を買ったりもしなきゃいけないけど、それは明日でいいだろう。
とりあえず今夜の宿を確保しなくちゃいけないな。
新人は勝手がわからないだろうし、
「イル、宿の確保を頼む。男部屋一つと、女部屋二つでいいかな。」
イルに銀貨を十枚程渡して送り出す。
「サミー、女物の下着と寝巻きと着替えを人数分買ってきてくれ。今夜分だけでいい。」
サミーに銀貨を十枚程渡して送り出す。
「ヒルダ、バラエティ一号店に行ってみんなで入れる個室の確保と注文もしててくれ。」
ヒルダを送り出す。
残った奴隷はあっけに取られたようにこっちを見てくる。
なにかおかしかっただろうか?
「コマガさん。どうしました?」
「いや、もう奴隷なのだから呼び捨てにしてください。」
「じゃあコマガは俺のことを会長と呼ぶように。」
コマガにご主人様と呼ばれるなんて気色悪い。
「で、なんか変なことでもあった?」
コマガに聞いてみる。
「奴隷に手厚いなと思いまして。」
聞くところによると、冒険者が買った奴隷だと、
奴隷だけ野営
着替えは擦り切れてから
食事は主人とは別な粗末なものが日に一度か二度
というのが過半数らしい。
奴隷を宿のベッドで寝かせて、即日着替えさせて、一緒に食事を取る。
というのは、異例中の異例なのだとか。
他の連中のことなんて聞ける相手は今まで居なかったからな。
コマガからは常識を色々教えてもらえそうで助かった。
「まあ、ウチはそんなもんだし。
あっ、女の子はご主人様って呼んでね~。」
「「「はい、ご主人様」」」
ハモられると響くな。
店に入る前にみんなの体と服に[リフレッシュ]を掛ける。
店に入ると皆を個室に促し、オーナーの所に顔を出す。
「経理担当者一人と修行メンバーを三人仕入れてきたんだけど。」
「とりあえず数日後から経理担当者は住み込みでずっと。
修行メンバーはローテーションを組んでダンジョンにも連れて行きたいんだけど。」
「ちょうど十日後に四号店を出す予定だからありがたいですね。ローテーションはどうします?」
「常時一人ダンジョンに潜るように、スライド登板で。
一人当たり二日連続で店、翌日ダンジョンになる感じかな。」
「それなら仕事を覚えるのも問題ないし、いいでしょうね。」
「できれば調理と接客両方仕込んでもらえるとありがたいんですけど。」
「わかりました。みっちり行きますよ。」
とりあえず、十日間でコマガには簿記を仕込むとして、あとの三人は一人ずつパーティに入れてダンジョンで修行かな。
レベルが上がったらスキル付与すれば多少は戦えるようになるだろう。
コマガにはキス無しで、算術スキルとか付与しようかな。
あっレベル1だ。
ちっ 使えねぇ。