第23話
朝目覚めて確かめてみると本当に5Pと詐術スキル1、スケコマシ1、絶倫1が付いていた。
何があのオタク女神の琴線に触れるのか分からないから、狙っては獲得できないだろうが、ポイントはうれしいプレゼントだ。
絶倫は、発揮できる場が無ければただの拷問だ。
早速、魔法の威力強化のために精神力強化をレベル2までで3P、おいしく使わせてもらいました。
2Pは壽眼を取るために取っておくことにした。
デスタの町の近くにあるので、デスタのダンジョンと呼ばれているらしいダンジョンの前にたたずむ俺達。
ダンジョン用に皆が夜目使えるようにしたし、薄暗いくらいの灯りで何とかなるだろう。
前衛のサミュエルの左手にある盾とヒルダの左手にある鉈、後衛のイルの槍の穂先に[ライト]をかけて、同じく後衛の俺が松明を持てば十分だろう。
胸当てにつけることも考えた。前方を照らすし、武器のように振り回したときに光源がゆれて、見づらくなることも少ないはずだ。
でも却下となった。
攻撃目標として相手に目立ってしまうのが一点。
それと、「胸が光るのなんかヤダ」という三人、特にヒルダの強い要望によってだ。
ごもっともで。
松明に火をつけ、[ライト]を三人にかける。
継続時間をそれぞれ一時間ずらして、一時間、二時間、三時間にする。
一斉に消えて混乱することを防ぐためと、MPを少しずつでも回復させて、継続して[ライト]を維持させるためだ。
潜った時間の目安にもなる。
ダンジョンに潜るにあたっては、森や草原とは違った準備が必要になる。
灯りももちろんだし、隊列やマッピング、マーキングに酸素濃度のチェックなどだ。
皆夜目のスキルがあるのに[ライト]をかけたうえ、松明を一本持ったのもその一貫だ。
[ライト]が切れたら、その時間が経過したことが分かる。
獣人の二人は臭いで来た方向が分かるからとりあえず帰路については、マッピングしなくてもなんとかなる。
だが、森や草原と違って、やはり圧迫感がある。
四方を囲む岩肌、ゆれる灯りと曲がり角の先にわだかまる闇。
気配察知3も直線の平坦地なら五百メートルほどの範囲で分かるが、ダンジョンでは、数十メートルも怪しい。
曲がりくねっていては気配より、獣人の二人の嗅覚拡大のスキルの方が頼りになる。
幅四メートル、高さ四メートルほどの通路なので、さほど大型の魔物がいないであろうことだけは、救いだ。
もっとも蛇やモグラのように、通路の幅イコール身体の太さみたいなものもいるかもしれない。
油断は禁物だ。
臆病な俺の性格を反映したように、慎重に慎重を重ねた俺達のパーティは、順調に魔物を討伐し、魔物の死体をストレージに納め、先へ先へと進む。
分岐はあちこちにあったので、先に潜った他のパーティに出会う可能性は低いんじゃないかと思う。
「この迷宮は洞窟型ですけど、建物型や内臓型もあるんですよ。」
何度目かの休憩の時にイルが博識なところを見せる。
「建物型は、塔や宮殿、地下都市を模したもの、内臓型はそのまんま巨大な動物の口の中に入っていく感じのヌメヌメのです。
建物型は足元が平らなんで探索者に人気らしいですね。
逆に内臓型は、みんな入るのを嫌がるのでほとんど攻略されないらしいです。」
どこで仕入れた情報なんだろう。この際、ためになるいろんな知識を披露してもらうべきだろう。
「すごいなイルは。他にも何でもいいからダンジョンについて知っていることを教えてくれないか。」
話しを引き出すコツは、とりあえず感謝するか褒める。
すると話した相手は気分が良くなり、舌が滑らかになる。
酒や利益もそれに拍車をかけるが、今はそこまでは無理だ。
他の二人も真剣な顔で聞いている。
「ダンジョンで危険なのは、一に魔物、二に迷子、三に準備不足で、四に探索者と言われています。
一から三までは言うまでもありませんが、四の探索者というのは。」
ちらりとサミュエルに視線を走らせていた。
弱冠「しまった」という顔だ。
「同じ探索者だと思って油断したり、探索済みで獲得物を持っていたりで襲われることも、度々ある。
とのことです。それ以外にも、[なすりつけ]という行為があるということです。」
あぁ、サミュエルの怪我の理由が、陸人族の探索者に襲われたからだったな。
しかし、[なすりつけ]ってどういうことだろう?
「自分達がとてもかなわない魔物に会ったときに、他のパーティが居そうな方向に逃げて行き、他の
パーティとすれ違う。
魔物にしてみれば、逃げたパーティなのかそうじゃないのかは関係なく、そこにいるパーティに襲い掛かってくるというのです。」
怖い話しだ。
たとえば一般的な六人組のパーティが敵わない魔物から逃げてきて、いきなり後ろから追い抜いていったら、追い抜かれたパーティは混乱するし、それより少人数だったりレベルが低かったりしたら、大変なことになるだろう。
「なすりつけ」なのか襲撃なのかも分からないし、ゆっくりすれ違ったときに友好的でも後ろからバッサリ、とかの可能性もあるのか。
なるほど、同種族に会ったからといって安心はできないな。疑心難儀になりそうだ。
「それに、私達のパーティには関係ありませんが。」
まだあるのかよ。鬱になりそうな話ばっかりなんですが。
「奴隷と主人でないパーティは、価値のありすぎる宝を入手すると、仲間割れを起こすことが多いそ
うです。
宝を囲んで全滅してるパーティの残した宝で、豪邸を建てたソロ探索者の話は有名です。」
漁夫の利が有名な話しになるんだ。
たしかに夫婦や親族でも遺産で揉めるのはよくあることだ。
まして赤の他人同士のパーティだ。
独り占めすれば街中で豪邸、皆で分ければ精々田舎の家となれば、頭の片隅に浮かばないほうが少数だろう。
そして一回考えてしまえば、頭から消えることは無いだろうし、思いつくのが自分だけでないことも分かるだろう。
うん。もし、奴隷以外のメンバーができたら、実力の全てを見せないようにしよう。
たとえば、水魔法は普段使わないで隠しておくとか。
今でも、風魔法と光魔法以外は使ったの見せたこと無いし、使えるとも言ってないけど。
いや、別に隠してるわけじゃなくて、使い勝手の問題なんだけどさ。
火魔法は可燃物の傍や、や森の中では使いづらい。
水魔法は室内で使いづらいし、足元が悪くなる可能性がある。
土魔法は野外でしか使いづらいうえに、そのまま残骸が残る。
その点、風魔法は便利だ。どこでも使えてあとに残らない。
「あとは、ダンジョン探索するにあたっての明文化されていないルールがいくつかあるのですが、
ご主人様はご存知ですか?」
聞いたことは無いな。低レベルの一人は禁止とか、十八禁とかあるんだろうか?
「いや、森をメインにしてたから知らないな。教えてくれる?」
「そうでしたか。」
うん。冒険者登録してるから、おかしくはないよな。
「ダンジョンでは、違うパーティがすれ違うときには、敵意の無い証拠に先頭の人は、武器を逆手に
構えて、盾か灯りで円を描くのです。」
そんなんがあったんだ。でも騙そうとしてくる相手だったら、無意味になるな。
「そして、自分達のパーティ名を名乗るのです。
パーティを組むとそのパーティのリーダーがパーティ名を決定できます。
そして、リーダーのステータスには表示されるそうですし、ギルドに登録もできます。
パーティの名がしれると、名指しで指名依頼があったりするそうです。」
知り合いのパーティとかであれば、まあ多少安心はできるのか。
「ところで、私達のパーティ名はお決めになられましたか?」
「いや、知らなかったからまだ決めてないな。どんなのが良いか皆アイデアある?」
みんなの意見も聞いてみよう。
「手当たり次第とか酒池肉林とか。」
「死ね死ね団か、見敵必殺。」
「ご主人様と私達か、ミスリルメイデンでは?」
センスのかけらも見当たらない。
つか、恥ずかしくないのか?
「他には?」
「ハーレムナイツとか、ただれた英雄とかが私達にはふさわしいのでは?」
「殲滅の死神や、目撃者無しなどはいかがでしょう。」
「上級者と御馳走か、エス&エムズとか。」
どれも絶対に嫌だ。こいつらに意見を聞いたのが間違っていたのか。
「知ってるパーティのを教えてくれるか。」
他がどんなのか参考にしないと、厨二病どころか、名乗れない名前になりそうだ。
「私が知っているのは、紅い刃とか、風の騎士団とか、暁けの明星とかですかね。」
「私が所属していたのは、鋭牙の群れでした。」
「ご本で、ミッドナイトエンジェルってのを読んだことがあります。」
あぁそういう感じでいいのね。分かった。
「じゃあ俺達のパーティ名は、バラエティだ。」
「「「バラエティですか?」」」
名づけた理由を聞きたいらしい。
「そうだ。俺達は種族が一緒でもないし、性別も、使ってる武器も出身地も立場も色々違うだろう?
いろんな個性が集まってるってことで、バラエティだ。ダメか?」
あとでメンバーを増やすときに、ドワーフや翼人を入れるってのが理想だな。(ハーレムメンバーとしても)
「「「良い名前だと思います。」」」
なし崩し的にパーティ名も決まった。