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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第31話 よっ友の数とSNSのフォロワー数は比例する

 プライスレスなスマイルをいただいた後、休憩のお(ドリンク)はないが、二人で近くの段差に腰かけて休憩することにした。

 

「ここ、人通り全然ないから、もう誰も通らないかもしれないんだよね~」

 

「そうなんだ。まぁ物乞いするつもりないから、ここで座って休憩できればいいよ、"俺は"ね」

 

「ちょっと、それじゃあ私が誰かにジュースをたかるためにここで待ってたみたいじゃん」

 

 ……さっき自分でそう言ってたじゃん。


「あっ、ところで松村くん、10番だったりする?」


 宇月さんは自分が持っていた指令書をひらりと掲げて見せた。


「いや、俺は13番だったよ」

 

「そっかぁ、残念。……宝箱にこの地図も一緒に入ってたんだけどさ、私よく分からなくて。どういうことなのかな?」

 

 宇月さんが見せてくれた地図は、やはりこの公園の一部を示したものだったが、見たところ俺とは少し違う場所が拡大されているようだ。


「んー、俺の持ってる地図とは違うんだね。さっぱり分からない」

 

「そうだよねぇ。ここはもう、足で探すしかないよね」

 

「うん。あいにくスマホも荷物置き場にあって、誰かに連絡取ったりできないし。仕方ないか」

 

「あはは、真っ先にラクしようって考えるの、松村くんらしいよ」

 

「それほどでも?」

 

「いや褒めてはないよ」


 二人で談笑している間も誰かが来る様子はなく、本当にここは人通りが少ないらしい。

 宇月さんは周りを見渡して誰もいないことを確認すると、俺の顔を見つめながら話しかけてきた。

 

「ねぇ松村くん。さっき、何か考え事してた?」

 

「え?うん、まぁ」

 

「やっぱりそうだったんだね。……もしかして、委員長のこと?」

 

「うん。中学の時色々あった事、聞いたから」

 

「そっか、松村くんも知っちゃったんだね」

  

 宇月さんは俺から目線を外すと、自分の足元を見ながら落ち着いたトーンで話を続けた。


  

「……方角が一緒だったから、さっきまで委員長と二人だったんだけど……。私さ、委員長が顔を隠してる理由、ストレートに聞いてみたの。そしたら、少しだけ中学の時の話をしてくれて」

 

「うん」

 

「委員長、今でも後悔してた。自分がでしゃばったから友達の恋を邪魔しちゃったって。誰も悪くないのにね」

 

「そうだね。俺もそう思う」

 

 彼女は顔を上げ、遠くの方を見ながら穏やかな表情を見せる。

  

「……私はね、誰かを応援するのが間違ってるなんてこと、絶対にないと思う。頑張ってる人に声をかけることも、つまずいてる人の手を引いてあげることも、見返りを求めてるわけじゃないんだから、どんな形だって、それはその人の優しさだよ。……委員長の件みたいに、良かれと思って起こした行動が、誰かの迷惑になっちゃったり、空回りしちゃう事もあるかもしれないけど、それはたまたま、方法が合わなかっただけなんだよ。だから押し付けでも、余計なお世話でも、誰かを思いやる気持ちだけは、絶対に間違ってないよ。人に押し付けられる程の優しさを持ってるなんて、本当に素敵な事だもん。……だから、誰かを応援する誰かを、私は応援したいな」


 そう言ってこちらを向くと、彼女は優しく微笑んだ。


「なんか、上手くまとまらかったかな」

 

「いや、そんなことないよ……宇月さん、ありがとう」

 

「へっ?」

 

「ううん、なんでもないよ」

 

 彼女なりに背中を押してくれたのか。もしかしたら、そんなつもりで話しているのではないのかもしれない。

 でも、委員長に対してはこちらから踏み出さないといけない。その勇気を持つことはできた。


「……委員長への気遣いも必要だし、とりあえず、ISM作戦は変更しよっか」

 

「そうだね。何か、別の形を考える?」

 

「いや、作戦名はそのままでいこう。(i)員長、(so)の可愛いお顔を (mi)せてちょうだい作戦。……俺たちが見たいのは、メガネを外した委員長の素顔じゃない。委員長の本当の顔、つまり本音を言ってくれるような関係になる……って事でどう?」


 宇月さんはほんの少し驚いた様子を見せたが、すぐにいつも通りの笑顔で笑って見せた。

 

「ふふっ。いい作戦だね。……それと、もしかして作戦の名前、気に入ってた?」

 

「……そんなんじゃないよ。ただ、新しい作戦名が浮かばなかっただけ」

 

「そう?」


  

 ヨシと腰を上げると、宇月さんも続いてヒョイっと立ち上がる。


「まずは、自分たちが楽しまないとだねっ」


 彼女は手に持っていた地図を再び掲げた。

 

「そうだね。俺はとりあえずこのまま進んでみるよ」

 

「そっか、じゃあ別方向だ。どっちが先に終わるか、勝負だねっ」

 

「受けて立とう」

 

「へへっ。それでこそ松村くんだ」


 彼女は「じゃあ急がなきゃ」と爽やかな笑顔で言い残すと、地図を片手に小走りで去っていった。


 

 結局、宇月さんに励まされてしまったな……。

 俺は彼女と反対方向に向かって歩き出した。


 勝負になったからには、この課題、どうにかしてクリアしないといけない。

 改めて確認してもやはりよく分からない地図と指令書を眺ながら、とりあえず歩き続ける。


  

 一度戻って先生にヒントを聞くのもありだな。……いや、でも酸っぱいグミを持ってないし、どうしたものか。

 

 考えながら進んでいると、一人の生徒がこちらに向かって歩いてきていることに気が付いた。

 と言ってもここは一本道なので、誰かとすれ違う事はある。あの人もおそらく、俺に向かって来ているわけではない。


 気にせずに歩いていくと、すれ違う少し前にその正体が分かった。……委員長だ。


「あ、委員長」

 

「あっ、ど、こ、こんにちは……」

 

 委員長は若干よそよそしい様子で挨拶してきた。

 ……ん?あれ?お昼まで一応一緒に行動してたんだけどな。なんか距離感リセットされてない?


 よくよく考えると、委員長と二人きりで話すのは初めてだ。

 これまではグループで行動していて、常に誰かと一緒な状況だったから、いざ二人になるとどうしていいのか分からない。けど、さすがに無視するわけにはいかないから、ちゃんと挨拶はしておく。

 

 …………そうか。これは、"よっ"と挨拶するだけの友達。‘’よっ友‘’というやつなんだ。


 って、いやいや。本音を言ってくれるような関係を目指しているところ、このような距離感のままではいけない。

 ここは積極的に話しかけていこう。


「ねぇ委員長、酸っぱいグミ持ってない?」

 

「……え?も、持ってないです。すみません……。グミのカツアゲは、想定していなかったので……」 

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