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ヒロインが勝負をしかけてきた!  作者: ポット


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第27話 あつまれ しゅうじんの檻

「え?松村くんって明澄ちゃんといることが多いから、てっきりそういう関係なのかと思ってたよ」

 

「いや……そういう関係ではないよ」


 昨日まで敵同士だったらしいし。


「んー、そう?……じゃあ友梨乃ちゃんは?小柄で可愛いし、抱きしめたくなっちゃうでしょ?」

 

「天羽さんもたまたま仲良くなっただけだよ。……セクハラの誘導尋問はやめてもらえますか?」

 

 江口さんは納得していない顔をしているが、なんでも恋愛に結びつけるのは女子高生の悪いところだ。とにかく俺の話は置いておいてほしい。


「江口さんの恋愛事情はどうなの?」


「えぇ?……それを聞くならもっと"興味あります"って感じの顔で聞いてよね〜」


 ……寄り添った質問をしたつもりだったのに。また眠そうな顔してました?


「松村君、そんなんだと、あす………………」


 急に江口さんが口をつぐんだ。

 少しの沈黙の間で、彼女の視線が自分の後ろへ向いていることに気が付く。そして彼女の固まった表情と言葉が出ないこの状況から、俺は自分たちが詰んでいるということを察した。

 無言で振り返る。目の前で、先程まで追いかけてきていたサングラスの女子生徒がニヤリと笑った…………。



 

「あっ、蒼汰くん、江口さん!いらっしゃい!」


 俺と江口さんが牢屋に投獄されると、ようこそマイホームへと言わんばかりの勢いで歓迎してくる天羽さんが待っていた。


「ごめん天羽さん、本当は助けに来る予定だったんだけど」

 

「全然気にしないで。でも、ここでずっと待ってるのも退屈だったからさ、二人が来てくれて嬉しいよ」


 牢屋には既に多くの生徒が閉じ込められていた。しかしその中に誠一郎と宇月さん、そして委員長の姿は無いようだ。


「そういえば捕まったのは二人だけなの?」

 

「うん。皆とはいろいろあって逸れちゃって、江口さんと一緒に逃げる事になってね。休憩がてら二人で恋バナしてたら捕まっちゃったんだよ」

 

「松村君、あれは恋バナとは言わないよ」


 すかさず江口さんがこちらに手のひらを向けて制止してきた。


「え、そうなの?」

 

「あはっ、たしかに蒼汰くんが恋バナなんて想像できないかも」


「でしょ?……という事だから、次はちゃんとした恋のお話、しようねっ」

 

「えぇ……うん……」


 あれ以上話すことはないけどねっ。


 それから三人で話が盛り上がり?そこそこの時間が経った。

 牢屋の近くで逃げ惑う生徒や、捕まった仲間を助けに来ようとして自分も捕まってしまう生徒。ここからは安心して眺めていられる。

 牢屋には必ず一人の警察が見張りについており、数分おきに交代しているようだ。そのせいで脱獄の手助けも簡単にはいかない。

 それにいつの間にか囚人の数も増え、見たところ逃げている人数をとうに追い越してしまっている。


「んー、明澄たち、まだ捕まらないね〜」

 

「あ、天羽さん、一応、助けに来てくれるって可能性もあるんだからね……」

 

「あぁ、そうだったね。……私はもうここの暮らしが長いせいで、実家のような安心感だよ」


 天羽さんは穏やかな顔で空を見上げた。

 

「…………ねぇ江口さん、この子、牢屋に馴染みすぎて、もう逃げるという思考が無いんですけど」

 

「なるほど、郷に入っては郷に従えってやつだよ。この適応力、いい嫁になるよ松村君」

 

「……誰か助けに来てほしい、ほんとに」

  

 宇月さん、委員長、誠一郎の三人はどうしているだろうか。

 牢屋の中はどこか緊張感がなくなり、天羽さんと江口さんが二人ともくつろぎ始めた頃、俺は遠くからサングラスの女子がこちらに歩いてくるのを発見した。

 今も牢屋の前では見張りの警察の男子が一人待機している。そろそろ交代の時間ということか?


 誰もそのサングラスの女子には注目していない。だが、どうしても俺だけは目を離さなかった。

 彼女は正面から牢屋の方に歩いて来る。そして見張りの男子の前に着くと、背筋を伸ばしてビシッと敬礼した。

 そして見張りを交代する事もなく、そのまま堂々と俺たちの方に向かってきた。


「……松村くん、友梨乃、助けに来たよ……!」


 牢屋ギリギリの所まで来た彼女は、小さな声で嬉しそうに囁いた。


「……いい作戦って、こういう事?」

 

「えへっ、ナイスアイデアでしょ?……………………あっ」


 変装した宇月さんが俺たちに親指を立てたところで、彼女の肩に、そっと警察の手が置かれた。




 

「絶対上手くいくと思ったのに……!」

 

 牢屋の中、悔しがる宇月さん。

 天羽さんはいつものように呆れた顔をしており、江口さんは涙目で笑いを堪えている。


「明澄、まさか正面から助けに来るとは思わなかったよ」

 

「あははははっ、だよねっ。明澄ちゃんだって気づいてから、笑いを堪えるの大変だったよ」

 

「んんん……悔しいっ……!」

 

「宇月さん、さすがだよ」

 

「でもさぁ、この柔軟な考え方……きっといい嫁になるよ松村くん」

 

「そ、そうかもね」

 

 江口さん、フォローが斜め上すぎる。


「宇月さん一人みたいだけど、委員長はどうしたの?」

 

「委員長なら近くで待機してるよ。私はチームメイトの友梨乃と松村くんしか助けられないでしょ?だから私が成功したらサングラスを渡して、次は委員長が江口さんたちを助けに行くっていう完璧な計画だったの」

 

「なるほど、それはたしかに完璧な計画だ」

 

「……蒼汰くん、あんまり明澄を甘やかしちゃだめだよ。本気にしちゃうから」


 宇月さんは天羽さんの発言に目を丸くしている。

 

 委員長が一人になったのなら、もうISM作戦は続けられていない。江口さんに聞かせるわけには行かないので、俺は小声でこっそりと宇月さんに問いかけてみた。

 

「……そういえば、委員長走らせられた?汗かいてた?」

 

「……そ、それがねぇ……」


 そよそよしいリアクションの宇月さんを見て、少なくとも成功はしていないことを察する。


「二人きりになってから、何を話せばいいかなって事で頭がいっぱいになっちゃって……。ほ、ほら、私ってまだ委員長と二人で話したことないでしょ?とりあえずお天気の話からかな〜とか、そこからどうやって会話を広げようかな〜とか考えてて……。……だから、走らせる余裕とかなかった……!」

 

「……ごめん。人選ミス、俺の責任だね……」

 

「ちょ、ちょっと、謝らないでよぉ。逆に傷つくんだけどぉ……」

 

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