03 紅之蘭 著 『天才紅教授の魔法講義 其の十一』
黄戸島村立大学魔法学科の紅教授には研究の資金援助をしてくれる企業がある。大昭和証券というのだが、眼鏡をかけた美人秘書を伴った白髭のCEOが自家用ヘリでやって来て、数年前に、南米の密林に埋もれていた遺跡から出土したという遺物を教授の研究室に持ち込んだ。
椰子の木を植えた中庭を囲んで、数棟からなる白亜の校舎が回廊状に連結されている。ヘリが留まったのは、そんな校舎屋上の一角だった。
助手である私・縫目フラ子は、美人秘書が手渡したスーツケースを受け取り、応接テーブルの上で拡げた。
紅教授が首を傾げて、
「これを鑑定しろと?」
時代や場所に合わない古代の遺物をオーパーツという。
金属箱であるそれには蓋がついており、明けると中には、おびただしい数の魔法陣が描かれた歯車が、びっしりと詰め込まれている。
――機械というか、魔道具のようだ。
早速紅教授は鑑定魔法をかけた。
するとだ。魔法陣の歯車がカタカタ動き始める。
おおっ!
CEOと秘書さんが感嘆の声を上げる。
魔道具は光を放ち、画像を映していった。
「CEO、幻灯機の一種みたいですよ」
「幻灯機というと、スライド映写機の一種だな。私の骨董品コレクションにもある」
幻灯機が壁に映し出した映像は紙芝居風で、一つの物語をなしていた。
とある里に麗しの乙女がいて、彼女を見初めた若者二人がそれぞれ求婚する。若者二人は親友らしく、恋歌で勝負を競った。歌唱力はどちらもすばらしく、甲乙つけがたい。二人の若者は連日連夜、不眠不休でなされ、ついに息絶えてしまった。
――悲しいというよりか、こいつら間抜けだ!
「ストーリーはくだらないが、素晴らしい魔道具だ! 紅教授、鑑定料は後ほど口座に振り込んでおきますよ」
CEOと秘書さんは、満足して、校舎屋上に停めていたヘリに戻って行った。
*
翌日の紅教授魔法講義――
講堂は、すり鉢状というか古代劇場にも似ている。教壇に立った紅教授が、術式を板書して、幻影魔法を実演して見せ、学生達に試させた。
講義が終わり、紅教授が講堂を出て行った。
私が跡片付けをして、教授室に向かおうとすると、メガネ君を始めとした男子学生達数名に囲まれた。
愛しの愛しの麗しき乙女・縫目ちゃーん、L・O・V・E、すきすきすき、大好きーっ♪
黄戸島では妙齢女性が少ない。私の親衛隊を自称する彼らが、セレナーデ攻めをしてくる。超うぜえ。
――おまえらも歌い終わったら死んでみろよ。
了




