14話 罰
「鬼畜外道をおこなった罰を与える。これを持って自身の行いを悔いろ……スキル『スキル剥奪』!」
床に押さえつけたシローネ親子に対して、スキル『スキル剥奪』をおこなう。
『スキル剥奪』――自身のステータス、LV以下の相手が所持するスキルを『スキルオーブ』の形で剥奪することが出来る。
『鑑定LV9』で確認する限り、アビスはスキル10個、ネークアは9個所持している。
その全てのスキルを剥奪するが、流石に19個も手には持てず、また両手は2人の頭を抑えているため床にスキルオーブが散らばる。
「はぁ?」
「えっ?」
シローネ親子は最初、何が起きたのか理解できないと言いたげな表情で床に転がるスキルオーブに視線を向けた。
オレは2人の頭から手を離すと、床に散らばるスキルオーブを一つ手に取る。
「今回の件についてオレは本気で怒っている。戦争をふっかけられたからじゃない。大人から子供まで魔物と融合させて、兵器として投入しやがって……」
戦った異形兵士や子供達だけではなく、先程地下で確認した実験室の姿も思い出し、顔を顰める。
「だから本気で手を抜かず、オマエ達親子は確実に潰す。絶対にだ」
その意思を有言実行で示すため、手の中にあるスキルオーブを破壊する。
『スキルオーブ破壊』だ。
名前の通り、スキルオーブを破壊することが出来る。
無差別に選び掴んだアビスの『身体強化LV7』のスキルオーブに罅が入り、亀裂が広がり、最終的に粉々に砕ける。
ようやく事態を飲み込めたシローネ親子が堰を切ったように騒ぎ出す。
「や、止めろ! それは僕ちゃんのスキルだろ!? 巫山戯るなよ! いくらなんでもやりすぎだろうが!」
「そうよ! アビスちゃんの言う通りだわ! わたくし達はスキルを奪われるほどのことはしていないわよ! こ、こんな極悪非道な行為は神様だって許さないわよ!」
火がついたように騒ぐ親子を無視して、淡々と床に散らばったスキルオーブを破壊していく。
「神様も許さない? だったらオマエ達がやった行為こそ許されないだろう」
「実験や兵士に改造したのは重犯罪者、奴隷達よ! そんな奴らがどうなろうと責められるいわれはないわ!」
「重犯罪者はともかく、奴隷だからと言って子供にあんな外道なマネしている時点でありえないだろうが!」
オレは怒りに任せてスキルオーブを握り潰す。
そのたびに『アアッァァアアァァァァッァァッ!』と2人が絶望的な声音で泣いた。
人生を懸けて育ててきたスキルを強制的に奪われ、目の前で粉々に破壊されたのだ。
ただ奪われただけなら、再び奪い返すなり、取り戻す可能性があっただろう。
しかし、そのスキルオーブを目の前で二度と使えないように粉々に砕いて破壊しているのだ。
2人の狂気じみた悲鳴は当然である。
しかし、本番はここからだ。
最後に残った二個を両手で握り締める。
もちろん狙って最後にとっておいたスキル『剣聖』と『大魔術師』だ。
2人もそのことに気付き、今まで以上に顔色を悪くする。
「や、止めろ! シュート! スキル『剣聖』がどれだけ貴重か、わ、分かっているのか!? 凡人共を多少殺したり、実験動物にしただけでこれほどの罰を与えるとか頭おかしいだろ!」
「アビスちゃんの言う通りよ! スキル『剣聖』と『大魔術師』は神様が与えてくださった伝説のスキルなのよ! 他のスキルとは格が違うの! だから止めて壊さないで! 止めなさいよ!」
オレは彼らの血を吐きそうなほどの訴えを冷たく見下ろし、手のひらに力を込めていく。
今までとは違ってゆっくりと、見せつけるようにスキル『剣聖』と『大魔術師』のオーブを破壊する。
スキルオーブに罅が入るたびに2人が絶叫の声音を高くしていく。
「止めろ! 止めろっていっているだろ! あぁぁぁあっ!」
「止めて! 止めなさいよ、いやぁぁぁぁあぁぁッ!」
オレはそんな2人に向かって吐き捨てた。
「止めるわけがないだろう。なぜオレがオマエ達の指示に従わないといけない? それにオマエ達のような外道にスキル『剣聖』、『大魔術師』はもったいなさ過ぎる。むしろ害悪だと断言できるほどだ。何よりこれがオマエ達に対する罰だ。甘んじて受けろ」
台詞を言い切るタイミングでスキル『剣聖』、『大魔術師』を握り潰す。
「アァァァアアァアァァァアァ!」
「キャアァァアァァアッ!!!」
2人は心臓をナイフで突き刺されたかのように今まで一番の悲鳴を上げた。
一度では収まらず、まるで狂ったように叫び続ける。
オレはそんな2人を侮蔑の視線を向けて、置き去りにして外へと出た。
とりあえずシローネ親子はこのまま暫く放置する。
放置すると言っても、身柄を拘束してアイスバーグ帝国へ移送。そこで今回の件をつまびらかにする予定だ。
絞れるだけ情報を搾り取ったら、そのまま放逐するだろう。
スキルを全部失い、ほぼ一般人と変わらない状態になったシローネ親子がそのまままともに生活など出来るはずがない。
彼らはスキル『剣聖』、『大魔術師』を傘に着せて好き勝手やり過ぎた。
2人に怨みを抱くモノは数百人単位でいるだろう。
その者達が、スキルを全て失いほぼ一般人と変わらなくなった2人を見過ごすか?
断言する。
絶対にありえないと。
つまり、彼らの地獄はこれから始まったばかりなのだ。
『風魔法LV8』で本来塔から響き、聞こえてくるシローネ親子の悲鳴をシャットアウト。
太陽の下で、楽しげに食事を摂る老若男女を前に、軽く肩を回す。
「さて……それじゃ今の内にまだ気絶しているだろう魔物達の処分でもしておきますか」
森の戦闘に特化した特別製の魔物が、塔を護るように配置されていたのは事前偵察の際、『気配察知LV8』等で把握していた。
現在は14本の準亜神剣『クリムゾン・ブルート』の一斉砲撃によって気絶している。
今後の安全を考えて今の内に手を打っておくべきだろう。
オレは目の前の光景にホッと胸を撫で下ろしつつ、次の仕事に向かうのだった。
スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!
ようやくシローネ親子に罰を与え、決着をつけることが出来ました!
次話以降は、まとめ、事後処理に入る予定です。
では是非お楽しみに!
また先日『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』をアップさせて頂きました!
本日も2話連続でアップする予定です。
詳しくは作者欄をクリックして飛べる作品一覧にある『【連載版】信じていた仲間達~』をチェックして頂ければと思います。
これからも頑張って書いていきたいと思いますので、是非チェックして頂けると嬉しいです!
では最後に――【明鏡からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




