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6話 徹底抗戦

 幌馬車の中身確認などで予定より遅くなってしまったが、偵察を終え、無事にオレはアリス達が居る『ノーゼル』へと帰還することが出来た。

 門で警備兵士に確認を取り中へと入る際、兵士の1人が駆け出す姿を見た。

 オレが帰還したことをいち早く知らせる先触れだろう。


『ノーゼル』内部に入ると、馬車を使わず徒歩で領主館を目指す。

 フードを頭から被り、ゆっくりと歩いて移動する。

 まだ体に溜まっている怒りを沈めるための時間が欲しかったからだ。

 お陰でアリス達の前に顔を出せるぐらいには気持ちを落ち着かせることに成功する。


 領主館に辿り着き顔を出すと、『待ってました』とばかりにアリス達が集まってくる。


「ぱぱ、おそい」

「ごめん、ごめん、ちょっと色々確認したいことがあってさ」


 トテトテと駆け寄りレムが足に抱きつく。

 グリグリと額を押しつけつつ、不満を口にした。

 オレは彼女を抱き上げ、言い訳を口にしつつレムが頬を擦りつけ愛情表現してくるのを止めなかった。


「……とりあえず賢者シュート様に怪我もなく無事でよかった」

「ですね。でもレム様ではありませんが随分遅かったですね? それほど詳細に調べなければならないほど危険な相手だったのですか?」

「危険な相手というか……あぁ~」

「? なんだ賢者殿、キリリの言う通り、そんな危険な相手でも居たのか? まさか凶化暴走水精霊(ウンディーネ)クラスが居たとか言わないよな……」


 すぐに返答しなかったオレを訝し、ミーリスが苦虫を噛みつぶしたような顔で尋ねてくる。


「……とりあえず偵察の情報も共有したいし、座って話そう」


 オレの提案に皆が納得し、私室に使っている客室リビングへと向かう。

 客室リビングなら人目も気にせずキリリを座らせることが出来るからだ。

 胸くそ悪い内容も含まれているためレムを別室に引き離そうとしたが、


「や~(いいえ)」


 嫌がってしまう。


 どうもオレと離れている時間が長くて、不安を抱いたようだ。

 首にギュッと手を回し、離れようとしない。

 レムが我が儘を言うのも珍しいため、今回は抱っこしたまま席に着く。


 胸くそ悪い部分になったら耳を塞げばいいのだ。


 ソファーにオレとアリスが座り、テーブルを挟んだ反対側にミーリス、お茶を準備し終えたキリリが腰を下ろす。


「それじゃ早速、偵察の情報を共有しよう。まず――」


『オリーム王国軍+α』の戦力、異形兵士達の数、全体の士気など……オレは確認した限りの情報を皆に伝えていく。

 話している間もレムはギュッと抱きつき離れない。


 そんなレムの耳を両手で押さえる。

 これから話す内容は本当に気分が悪くなる内容だからだ。


「オリーム王国軍に関しては本当に士気が低い。『勝てない』と分かったらすぐに降伏するレベルで酷い。異形兵士も見た目に威圧感があってそこそこ程度には強いが、オレ達の敵ではなかったよ。問題は幌馬車に居た子供達だ」


 隠密系スキルを駆使して幌馬車に接近。

 鉄格子内部に10人前後の子供達が押し込められていた。

 最初、慰安用か、異形兵士の食料扱いなのかと戦々恐々と『鑑定』した結果――それ以上に胸くそ悪い扱いを子供達は受けていたのだ。


「大人の異形兵士とは違い、完全に姿を変態させて戦う兵器として改造されていたんだ。恐らくまだ幼い子供だから、体が出来上がっている大人よりいじりやすかったせいで完成度が高くなってしまったんだろうな……」

「……酷い、子供をそんな風に兵器に作り替えるなんて」


 アリスが耳を押さえられているレムに視線を向けてしまう。

 彼女ぐらいの年齢の子供が兵器として改造され、戦争に投入されている事実に胸を締め付けられているようだ。

 だが話はまだ終わらない。


「しかもその子供達の体の中に、『ドラゴンの牙』がストリートチルドレンに持たせた自爆用爆石以上の爆発力を持つのが埋め込まれていたんだ」

「……可笑しい話ではないだろ。その子供達は言い方は悪いが兵器なんだろ。なら暴走を防ぐための抑止力で自爆魔石を埋め込んだのか?」


 研究畑のミーリスとしては完成度の高い兵器である子供の内側に自爆魔石を埋め込む意味が分かっていないようだ。

 彼女は研究者らしい回答を告げる。


 一方、戦闘経験の豊富なアリス、キリリは敵側の凄惨な意図に気付き顔を歪めた。


「うぷぅ……」

「ちょっ!? 大丈夫か、キリリ?」


 キリリなど想像して吐き気を催し口元を抑える。

 ミーリスは妹達の変化に驚き、隣に座るキリリの背中を撫でる。

 オレはそんなミーリスを見つめつつ、レムの耳をさらに強く押しながら告げた。


「もちろん暴走した際、殺害するための抑止力という面もあります。ですが本命は……オレを確実に殺すため、失敗しても自爆特攻させるために高性能な自爆魔石を内側に埋め込んで居るんですよ」


 もっと正確に言うなら――仮にオレ自身の命を奪えなくても、目の前で戦っていた子供が自爆する。

 その凄惨な光景、状況を見せて精神的に攻撃し、オレの心を殺しに来ているのだ。


 前世日本時代、本か、ネットだかは忘れたが――内戦でゲリラが少年兵士をよく参戦させる理由を読んだ記憶がある。

 銃器を持たせれば1兵士として使えるというのもあるが、敵兵士に少年・子供を殺させる。結果、敵兵士の心に傷を負わせて、心的外傷後ストレス障(PTSD)害、士気低下を狙っているのだ。


 前世日本云々は誤魔化し、精神・心を殺しに来ていることも説明した。

 この説明にミーリスは心底ドン引きした表情を浮かべる。


「け、賢者殿、その話は本当か? そこまでやるのか?」

「オレ自身が直接、子供達を鑑定しました。高性能自爆魔石が体内に埋め込まれているのは確定です。そこから敵の狙いを考えるとほぼ間違いないかと」

「く、狂っている……大魔術師は絶対に狂人だ! こんなことが許されるはずがない!」


 激昂したミーリスがソファーから立ち上がり叫ぶ。

 オレは彼女の言葉に全面的に同意する。


「同感です。相手は狂人です。だからこれ以上の被害者を出さないため、今回オレは絶対に大魔術師達を潰します。そのために、敵本拠地の通称『魔女の森』も偵察してきたんです」


 だから遅くなってしまったのだ。

 確実に逃がさず、大魔術師達を徹底的に潰すため情報収集に向かっていたのだ。


 オレは激昂し立ち上がったミーリスへ向けて笑う。

 大魔術師達に対して絶対の殺意を抱きながら。

『ドラゴンの牙』以上にオレを怒らせるとは、ある意味で快挙と言えるだろう。


「オレは今までずっと自重してきました。ですが今回に限り自分の全能力を持って、自重を捨て去り叩き潰します」


 激昂し真っ赤になっていたミーリスが、オレの宣言を聞くと息を呑み顔色を青くする。

 彼女だけではないアリス、キリリも同じように顔色を悪くしていた。

 よほどオレの『自重を捨て去る』という言葉が効いたのだろう。


 だがオレは意見を変えるつもりはさらさらない。


 お望み通り全面戦争で叩き潰してやる!

スキルマスターを読んでくださってありがとうございます!

自重を捨てたシュート。

次話で新しいスキルも開発するので是非お楽しみに!

また明日も引き続きアップするのでチェックして頂けると嬉しいです。


また『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』をアップさせて頂きました!


本日も2話連続でアップする予定です。

詳しくは作者欄をクリックして飛べる作品一覧にある『【連載版】信じていた仲間達~』をチェックして頂ければと思います。

これからも頑張って書いていきたいと思いますので、是非チェックして頂けると嬉しいです!


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] あー…自爆特攻機能付きの少年兵ですかー… あかんやつやー…(汗) ボクちゃん&ママン完全終了のお知らせ(-人-)
[気になる点] さっさと勇者共の真実を暴露すればいいのに。 いざって時聖戦の効力が無くなる? いや発動しても元から無意味ですから! 勇者が役立たずなのは勿論、そんな勇者以下なんですよね? 聖戦で集まる…
[一言] オレは自重を辞めるぞJ○joォ! な案件ですなwktk 件の魔女には不死の恐怖を教えてあげてもいいかも。 某受付嬢さんのお怒りに触れたかのごとく、死ぬより酷い目に遭わせてあげましょう!
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